バリュープロポジション
顧客が自社を選ぶ理由を、提供価値の中核として簡潔に言い表した宣言。価値提案とも訳す。
意味
顧客の課題に対し、自社が独自に届けられる便益の要約を指す。
「誰に・どんな価値を・なぜ自社が」を束ねた核となる主張である。
成り立ち
コンサルティングやマーケティング実務で広まった概念で、競合との差別化の起点として用いられる。
近年はキャンバス型のフレームで可視化されることも多い。
バリュープロポジションとUSP(ユニークセリングプロポジション)の違い
USP(ユニークセリングプロポジション)は他社にはない独自の売りを一点に絞って掲げる考え方であり、バリュープロポジションは顧客が求めるものと自社が提供できるものの重なる範囲を言い表す。独自性が起点か、重なりが起点かで分かれる。
取り違えると、誰も欲しがらない独自性を掲げてしまう。他社が言っていないという条件だけでは、その主張を求める相手がいるかまでは保証されない。独自かどうかの確認と、求められているかの確認は、別々に行う作業になる。
USP(ユニークセリングプロポジション)の項へ →バリュープロポジションとブランドプロミスの違い
ブランドプロミスは顧客に対して守り続けると約束する内容であり、バリュープロポジションは選ばれる理由の要約にあたる。前者は履行の対象で、破れば信頼を失う。後者は主張であり、伝わらなければ選ばれないという形で表れる。
切り分けの軸は、果たせなかったときに何が起きるかにある。約束が守られなければ既存の顧客が離れ、価値の主張が届かなければ新しい相手が候補に入れてくれない。手当てする相手が違うため、混ぜると打ち手がぼやける。
ブランドプロミスの項へ →使いどころ
ポジショニングやメッセージ設計の上位前提として参照される。
顧客便益と提供能力の重なりを見極める際に用いられる。
実務でのチェックポイント
- 掲げた一文から自社名を外し、競合の名を入れても成立するかを試す。成立するなら、それは業界の説明であって自社の主張ではない。
- 他社ではなく自社を選んだ理由を顧客の言葉のまま集め、掲げた一文と照らす。言葉が重ならなければ、想定と実態がずれている。
- 主張を支えている根拠を挙げ、その根拠が今の体制で維持できるかを確認する。一人の技量に依存しているなら、主張は脆い。
- 営業資料の冒頭と自社サイトのトップに置いた一文を並べて読む。宛先が違っても核となる価値は同じはずで、別々の話に読めるなら、どちらかが本来の主張から外れている。
よくある誤解
一文にまとめる作業であるがゆえに、社内の合意を取りやすい言葉へ寄りがちになる。誰も反対しない表現は、たいてい誰の心にも引っかからない。角の立たない言い回しに落ち着いた時点で、選ぶ理由としては働かなくなっている場合がある。
もう一つは、掲げた内容が提供体制と結びついていない状態である。主張は文言だけで作れるが、それを支えるのは人員や仕組みの側になる。今の体制で明日から履行できるかを問わずに書かれた宣言は、現場との間に絶えず摩擦を生む。
よくある質問
バリュープロポジションは短く言い切る必要がありますか?
短さ自体が目的ではないが、誰かが他の人へ伝える場面を通れる長さである必要はある。検討の場で自社を要約して説明するのは相手の社内にいる担当者であり、覚えられない長さの主張は途中で落ちる。伝言に耐えるかが実務上の目安になる。
複数の顧客層がある場合はどうすればよいですか?
層ごとに言い表し方を変えて構わないが、根にある提供価値は一つに保つ。表現を分けることと、別の価値を掲げることは違う。層ごとの文言を並べて、共通する部分が残っているかを確かめると判断しやすくなる。
顧客の課題が分からない場合はどう作ればよいですか?
仮に置いた上で、確かめる手順を先に決めるのが現実的になる。推測から書いた主張でも、社内の判断を揃える役には立つ。ただし裏づけのある部分とない部分を混ぜたまま使うと、推測のほうが既成事実として引用されていく。