セグメンテーション
市場を意味のある固まりに分ける作業。誰に向けるかを決めるターゲティング・ポジショニングの前段になる。
意味
セグメンテーションは、市場を意味のある固まりに分ける作業を指す。全員を一様に扱うのではなく、ニーズや属性の近い集団へ切り分けることで、誰に向けるかを判断できる状態を用意する、戦略の前段にあたる。
分け方には、年齢や地域といった属性のほか、行動や求める価値による切り口がある。どの軸で分けるかによって見えてくる集団が変わるため、意味のある違いが浮かぶ軸を選ぶこと自体が判断の質を左右する。
分けること自体が目的ではなく、狙う相手を選ぶための下ごしらえである。切り出した固まりの中から誰に深く向き合うかを決める次の判断へ、意味のある単位を渡せてはじめて役目を果たす。
成り立ち
セグメンテーション(Segmentation)→ターゲティング(Targeting)→ポジショニング(Positioning)と続くSTPの枠組みの第一段として整理された。マーケティングの古典的な整理として教科書で一般化し、市場を捉える基本手順のひとつとして広く共有されている。
セグメンテーションとターゲティングの違い
セグメンテーションは市場を分ける作業であり、ターゲティングは分けたものから選ぶ判断である。前者は事実の整理に近く、複数の分け方が併存しうる。後者は資源の配分を伴う決定で、選ばなかった側を諦めることを含む。
議論が進まないときは、どちらの段で止まっているかを確かめるとよい。分け方の細かさを延々と議論している場合、選ぶ覚悟が定まっていないことが多い。分けるだけならいくらでも精緻にできるため、選ぶ期限を先に置くほうが前に進む。
ターゲティングの項へ →セグメンテーションとセグメントの違い
セグメントは分けた結果として得られる一つひとつの固まりを指し、セグメンテーションはその固まりを生む分け方の作業を指す。結果と作業の関係にあり、同じ市場でも軸を変えれば別のセグメントが現れる。
この違いは、議論の対象を定めるときに効いてくる。既存の区分を所与として扱うと、その軸で見えないニーズは最初から視野に入らない。目の前の固まりが妥当かを問うには、それを生んだ軸の側へ戻る必要がある。
セグメントの項へ →使いどころ
限られた資源をどこへ向けるかを決める前段として用いられる。全方位に働きかけるのをやめ、意味のある集団へ市場を分けることで、続くターゲティングとポジショニングの判断に足場を与える。
実務では、分けた集団のどれを狙うかというターゲティングと、その中でどう位置取るかというポジショニングまでを一続きで考える。分けること自体を目的にせず、選ぶための準備として扱うのが要点になる。
実務でのチェックポイント
- 分けた集団ごとに、実際に変えている施策があるかを確かめる。同じ内容を配っているなら、その区分は判断に効いていない。
- いま使っている切り口が、顧客が買うと決めた理由とつながっているかを問う。集計表を作りやすいから採っただけの軸なら、分けた先に別の打ち手は出てこない。
- 同じ市場を別の軸で分け直してみて、違う集団が現れるかを試す。現れないなら、その軸は市場の実態を十分に映していない。
- 分けた集団のうち、実際に何も働きかけていないものを挙げる。放置している区分が多いなら、分けすぎている可能性がある。
よくある誤解
属性で分けることが分割そのものだと考えられやすい。年齢や地域は集計しやすく扱いやすいが、その軸で分けた集団の中で買う理由が揃っていなければ、打ち手を変える根拠にはならない。分けた後に、それぞれへ別の働きかけができるかを確かめないと、集計の単位が増えるだけで終わる。
細かく分けるほど精度が上がるという前提も外れやすい。区分が増えれば、それぞれに用意する表現や商品の数も増え、実行できる範囲を超える。分ける細かさの上限は、分析の都合ではなく、別々の扱いを実際に用意できる数によって決まる。
よくある質問
セグメンテーションはどの軸で分けるのが正解ですか?
唯一の正解はなく、打ち手を変えられる軸かどうかで選ぶ。分けた結果それぞれに別の伝え方や商品を用意できるなら、その軸は働いている。用意できないなら、どれだけ理屈の通った分け方でも実務には効かない。実行できるかを基準に据える。
顧客数が少なくてもセグメンテーションは必要ですか?
必要になる場面はある。数が少なくても、買う理由が明らかに違う相手が混ざっていれば、同じ伝え方ではどちらにも届かない。統計として分けるのではなく、既存顧客を並べて買う理由の違うまとまりが見えるかを確かめる作業として扱えばよい。
既存の顧客層と狙う層がずれている場合はどうしますか?
どちらに合わせるかを決める前に、ずれの原因を確かめる。狙いが届いていないのか、届いた結果として別の層に選ばれているのかで意味が違う。後者なら、現に選ばれている理由のほうに事業の実態が表れているため、狙いの側を見直す判断もありうる。