た
戦略

ターゲティング

Targeting

分けた市場の中から狙う相手を定める判断。全員に向けるのをやめ、誰に深く刺すかを選ぶこと。

意味

ターゲティングは、分割した市場の中から実際に狙う相手を定める判断を指す。全員に等しく向き合うことをやめ、限られた資源をどの層に集中させるかを選ぶ、戦略の分岐点にあたる。

セグメンテーションで市場を意味ある固まりに分けた後、そのどれに深く刺すかを決めるのがこの段である。決めた相手の像が鮮明であるほど、後段のポジショニングや表現の判断もぶれにくくなる。

「誰に向けないか」を同時に決める行為でもある。狙いを絞ることは他を捨てることでもあり、その割り切りが、限られた予算のブランドにとってはとりわけ効き目を左右する。

成り立ち

ターゲティングは、市場を細分し(Segmentation)、狙いを定め(Targeting)、位置取りを描く(Positioning)という STP の枠組みの中段として整理されてきた。標的(target)に狙いを定める、という軍事・射撃由来の比喩が語の根にある。

市場を一枚岩とみなすのをやめ、層ごとに異なる価値を届けるという発想の広がりとともに、実務の基本手順として定着した。

ターゲティングとポジショニングの違い

ポジショニングは狙った相手の頭の中でどんな位置を取るかという話であり、ターゲティングはそもそも誰の頭の中を狙うかという話である。相手を決めなければ位置の議論は成立しないため、順序としてはターゲティングが手前にある。

議論がずれるのは、位置の話をしているつもりで相手が揃っていない場面である。誰を思い浮かべるかが人によって違えば、同じ位置の案でも評価が割れる。表現の良し悪しで揉め続けるときは、一段戻って相手の合意を取り直すほうが早い。

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ターゲティングとバイヤーペルソナの違い

バイヤーペルソナは、狙うと決めた相手を一人の人物として描いた記述であり、ターゲティングはその手前でどの層に資源を割くかを決める判断である。決定と、決定を共有するための描写の関係にあたる。

描写が精緻でも、それ自体は狙いが定まった証拠にはならない。人物像が用意されているのに、広告の配信先も営業の訪問先も以前のままなら、資源は絞られていない。狙いが定まったかどうかは、記述の量ではなく配分の変化に表れる。

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使いどころ

使いどころは、新規事業や商品の投入前、あるいはリブランディングで届け先を見直す局面である。市場規模・成長性・自社との相性・競合の手薄さなどを照らし合わせ、狙う層を選び取る。

留意すべきは、絞りすぎと広げすぎの両極である。狭めれば刺さるが市場が痩せ、広げれば届く裾野は増えるが像がぼやける。段の前後にあるセグメンテーションとポジショニングと往復しながら調整するのが実務的である。

実務でのチェックポイント

  • 狙う層を決めた前後で、広告の配信先や営業の訪問先が実際に変わったかを確かめる。変わっていないなら判断は紙の上にとどまっている。
  • 狙わない層から引き合いが来たとき、断るのか、条件を変えて受けるのか。この扱いを決めずにいると、営業の裁量で受注が積み上がり、絞ったはずの輪郭が実績のほうから崩れていく。
  • 直近の受注先を書き出してみると、狙いと重なる先が少ないことがある。訴求が届いていないだけなのか、それとも実際に売れる相手が別にいるのか。前者なら伝え方の問題、後者なら狙いそのものの引き直しになる。
  • 狙いを絞ったことで諦めた売上を具体的に挙げられるか試す。何も諦めていないなら、まだ選ぶ段に入っていない。

よくある誤解

絞ると売上が減る、という懸念から広く構えたまま進む判断が起きやすい。だが限られた予算では、広く配ることは一人あたりの接触が薄くなることを意味する。何度も届く相手が誰もいない状態と、狭い範囲で繰り返し届く状態のどちらが記憶に残るかを比べると、絞ることは機会を捨てる行為とは限らない。

決めた狙いが、資料の中だけで守られていることも多い。実際の配信先や訪問先が以前と変わっていなければ、狙いは決まっていないのと同じである。決めた直後に、どの活動をやめるかまで具体化されているかどうかで、その判断が実行に移ったかが分かる。

よくある質問

ターゲットは一つに絞らないといけませんか?

複数でも構わない。ただし上限は意欲ではなく、書き分けと運用に割ける手の数で決まる。層ごとに訴求を変えれば、原稿も出稿先も問い合わせ後の応対も枝分かれし、その分だけ抱える負荷が積み上がる。手が足りなくなれば、結局はどの層にも同じ一本を配ることになり、絞った意味が消える。数を決めるのは市場の側ではなく、自社が抱えられる分岐の数である。

狙っていない層から売れている場合はどうしますか?

まず、その層がなぜ選んでいるのかを確かめる。想定していなかった用途や事情が見つかることがあり、そこに事業の実態が表れている場合もある。偶然の一件なら扱いを変える必要はないが、繰り返し起きているなら狙いの側を見直す材料になる。

ターゲットはどのくらいの頻度で見直しますか?

期間で区切るより、前提が変わったときに見直すほうが実務に合う。扱う商品や価格帯が変われば、届く相手も変わる。逆に前提が変わっていないのに毎年見直すと、積み上げた接点が毎回リセットされ、どの層にも記憶が残らない。

この項目は、ブランディング支援会社 Highlite Inc. 編集部が執筆・監修しています。
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