USP(ユニークセリングプロポジション)
競合にはない自社独自の強み。価格・機能・体験・文脈の四層で分解すると、陳腐化しにくい強みが見える。
意味
USP(ユニークセリングプロポジション)とは、競合にはない自社独自の強みを、顧客に対する明確な提案として言い表したものである。「なぜ他ではなくこれを選ぶのか」への答えを、一点に絞って示す考え方といえる。
価格・機能・体験・文脈といった層に分解して捉えると、模倣されやすい強みと、そうでない強みが見分けやすくなる。機能や価格の優位は追随されやすいが、体験や文脈に根ざした独自性は陳腐化しにくいとされる。
ポジショニングと近い関係にあり、市場のなかで占める独自の席を、顧客への提案の言葉へと翻訳したものと捉えることもできる。
成り立ち
USPは、広告実務家のロッサー・リーブス(Rosser Reeves)が広告論のなかで提唱した概念である。広告は一つの明確な便益を、競合が言えない形で、繰り返し訴えるべきだ、という主張を核として定式化された。
USP(ユニークセリングプロポジション)とバリュープロポジションの違い
バリュープロポジションは、顧客が得る価値を顧客の側の言葉で表したものである。USP(ユニークセリングプロポジション)は、競合と比べて自社だけが言えることを指す。前者は相手にとっての意味から、後者は他社との差から出発しており、見ている方向が逆になる。
両方が揃わないと使えない点が実務の要点になる。独自ではあるが誰も欲しがらない特徴は、形は整っていても選ぶ理由にならず、欲しがられるが他社も言える価値は差にならない。どちらか一方だけで組んだ訴求は、片側の問いに答えていない状態になる。
バリュープロポジションの項へ →USP(ユニークセリングプロポジション)とポジショニングの違い
ポジショニングは、顧客の頭の中でどの席を占めるかという結果を指す。USPは、その席を取りにいくために掲げる提案の言葉にあたる。狙いを言葉にした側と、実際に成立した位置の側という違いで並べると整理しやすい。
順序では提案が先に立つが、掲げれば位置が取れるわけではない。同じ独自性を繰り返し、価格や売り場がその主張と噛み合って初めて席になる。提案の言い換えを続けているのに位置が動かない場合、争点は言葉ではなく周辺の条件の側にある。
ポジショニングの項へ →使いどころ
「わが社のUSPは何か」といった形で、差別化の核を一言に絞る場面で用いられる。あれもこれもと強みを並べるのをやめ、顧客にとって意味のある独自の一点へ収束させる際の問いとして機能する。
実務でのチェックポイント
- 掲げている一点を競合の説明文に置き換えて読み、そのまま通用しないかを試す。通用するなら独自性の記述になっていない。
- 受注できた理由を顧客の言葉のまま集め、掲げた一点が実際に挙がるかを見る。挙がらないなら選ばれた理由は別にある。
- その一点を価格・機能・体験・文脈のどの層に置いているかを確かめる。前の二層に偏っているなら模倣までの時間は短い。
- 独自性を成り立たせている社内の仕組みを一つ挙げてみる。挙げられないなら、主張を裏づける実体が伴っていない。
よくある誤解
競合サイトを並べて、どこにも書かれていない要素を拾う作業として進めると、独自ではあるが誰も気にしない一点に行き着く。まだ誰も言っていないのは、その要素が顧客の選択の場面で働かないからだ、という場合も少なくない。価格・機能・体験・文脈のどの層で見つけた差であれ、選ぶ理由として動かなければUSP(ユニークセリングプロポジション)とは呼べない。
一度定めれば長く使えるものと扱われがちだが、模倣されやすい層に置いた独自性は、競合が追いついた日から独自ではなくなる。価格や機能に依った一点はとくに入れ替わりが速い。掲げた内容がいまも成り立っているかを、定期的に確かめ直す対象として持ち続けることになる。
よくある質問
USPは一つに絞らないといけませんか?
掲げる場面では一つに絞るほうが働く。複数並べると、受け手はどれで覚えればよいのか決められず、結局どれも残らない。ただし社内で把握しておく強みは複数あってよく、相手や場面に応じて前へ出す一点を選び直す形になる。
大きな差がない商材ではどうすればよいですか?
提供物そのものの差が小さいなら、その周辺で差をつくる形になる。届け方、応対の速さ、購入後の関わり方は、商品が似ていても差がつく領域として残る。差を探す作業ではなく、どこに差をつくるかを決める作業として扱うと進めやすい。
USPとキャッチコピーは同じものですか?
別のものになる。USPは何を独自の強みとするかという中身の決定で、キャッチコピーはそれを覚えやすい言葉に仕立てた表現である。中身が定まらないままコピーだけを磨くと、耳に残るが何を約束しているのか分からない言葉ができあがる。