ブランドプロミス
顧客に対して一貫して守ると約束する価値。守られると信頼が積み上がり、破られるとブランドが毀損する。
意味
ブランドプロミスとは、顧客に対して一貫して守ると約束する価値のことである。「このブランドなら、こうしてくれるはずだ」という期待の中身を、言葉として定めたものにあたる。
約束が守られるたびに信頼が積み上がり、破られれば一気にブランドが毀損する。プロミスは、期待と実際の体験を結ぶ契約のような役割を果たす。
掲げるだけでは意味をなさず、日々の接点で実際に果たされて初めて機能する。だからこそ、実現できる範囲を見極めて設計することが求められる。
成り立ち
promise は「約束」を意味する英語で、ラテン語 promittere(前もって差し出す・約束する)に由来する。あらかじめ差し出す言葉、という原義が、顧客への約束という用法に受け継がれている。
ブランドを「顧客との継続的な約束」として捉える考え方の中で、その約束の中身を指す語として実務に定着していった。
ブランドプロミスとバリュープロポジションの違い
バリュープロポジションは、他社ではなく自社を選ぶ理由を、提供する価値の側から説明したものである。ブランドプロミスは、その価値を毎回変わらず届けると約束する側にある。選ぶ理由と、選び続けられる根拠という位置の違いにあたる。
時間軸でも分かれる。価値の説明は、比較される場面で効く一度きりの説得に近い。約束は、購入の後に果たされたかどうかで確かめられ、破られれば次の選択に響く。売る前を支える言葉か、売った後に問われる言葉かで見分けられる。
バリュープロポジションの項へ →ブランドプロミスとタグラインの違い
タグラインは、約束を外へ向けて短く言い表した表現の一つである。プロミスは、その手前にある中身の取り決めにあたる。掲げる言葉が変わってもプロミスは動かないことが多く、逆にプロミスを変えれば、表現は必ず作り直しになる。
取り違えが起きるのは、対外的な言い回しを整えた時点で約束が決まったと見なす場面である。約束は社内で果たされる対象なので、現場が何をどこまで守るのかまで具体化されていないと、表現だけが独り歩きする。外向けの言葉と内向けの取り決めは、別々に書く必要がある。
タグラインの項へ →使いどころ
ブランドプロミスは、社内で「何を守るべきか」を共有し、施策や接客が約束に沿っているかを点検するための基準として使われる。
ブランドパーパスやポジショニングと結び付けると、なぜその約束をするのか、競合とどう違うのかまで含めて筋を通しやすくなる。
実務でのチェックポイント
- 掲げた約束が守られなかった場面を直近から挙げ、その後どう対応したかを確かめる。対応が定まっていないなら、約束は運用に落ちていない。
- 約束の内容を、現場の誰かが守れたかどうか判定できる形で説明できるか試す。判定できないなら、標語として置かれている。
- 価格や納期の交渉の場で、約束を根拠に断った例があるかを見る。一つも無いなら、約束は条件の圧力に押されている。
- 入って間もない社員に、この会社が何を必ず守るのかを自分の言葉で言ってもらう。返ってくるのが行動指針の丸暗記なら、約束はまだ紙の上にある。
よくある誤解
約束は高く掲げるほど良い、という考え方が入り込みやすい。だが果たせない水準の約束は、守れなかった一度が、守れた回数を上書きする形で記憶される。期待を上げる作業と、その期待を毎回満たす作業は別のものであり、後者の見通しが立たないうちに前者だけ進めると、失望の総量が増えていく。
約束が抽象のまま置かれる崩れ方もある。最高の体験を届ける、といった言い方は、守れたかを判定する人がどこにもいないため、破ることも果たすこともできない。判定できない約束は現場の優先順位を一つも変えず、顧客の側にも輪郭のある期待を結ばない。守れたと言い切れる形になって初めて、約束は約束になる。
よくある質問
ブランドプロミスは公表すべきですか?
必ずしも外に出す必要はない。社内の判断基準として働けば役目は果たす。外へ出すと期待が先に立ち上がるため、守れる仕組みが整う前の公表は、言葉と実態の差のほうを記憶させることになる。運用が安定してから表現として出す順序が扱いやすい。
約束はいくつまで持てますか?
現場が同時に守り切れる数が上限になる。複数あれば、手が回らない場面でどちらを先に取るかという問いが必ず生じ、その順位が共有されていなければ、守るものは人によって入れ替わる。数を増やすより先に、ぶつかったときどれを立てるかを決めておく。順位のない複数は、実質的にどれも約束していないのと変わらない。
約束を守れなかったときはどうすればよいですか?
起きた事実を先に認め、次に同じことが起きない条件を示す形が、像への損失を小さくする。受け手が失望するのは失敗そのものより、約束していたはずの態度がそこで消えることによる。回復の場面こそ、掲げた約束が実際に働いているかが見られる場面になる。