タグライン
ブランドの姿勢や約束を一行で示す文。コピーとの違いは、キャンペーンではなく長期の顔として機能する点。
意味
タグラインは、ブランドの姿勢や約束をごく短い一行で示す言葉である。ロゴのそばに固定的に添えられ、名前だけでは伝わりきらない「何を大切にするブランドか」という方向を、繰り返し受け手に手渡す役割を担う。
個々のキャンペーンで入れ替わるスローガンやコピーとは、時間軸で区別される。タグラインは長期にわたってブランドの顔として据え置かれることを前提とし、数年から十数年の単位で使われ続けることが多い。
短さゆえに一語の選び方が重い。抽象に振れれば誰にでも言える言葉になり、具体に寄せれば事業の変化に耐えられなくなる。その中間で、ブランドの核を過不足なく言い当てる均衡が問われる。
成り立ち
「tagline」は、英語で文章や記事の末尾に添える一行(tag)に由来し、演劇や小説の締めの決め台詞を指す用法から広告表現へと広がった。名前や本文の後ろに「付け札」のように添える、という語感が根にある。
日本の実務では、企業ロゴと組み合わせて恒常的に用いる標語をタグラインと呼ぶ整理が定着し、期間限定のスローガンやキャンペーンコピーと使い分けられるようになった。
タグラインとスローガンの違い
スローガンは施策の期間に合わせて掲げられ、終われば下ろされる。タグラインは下ろす前提を持たず、掲げ続けることで意味が積み上がる。同じ短い一句でも、時間の扱いが正反対にある。
見分けの手がかりは、言葉の中に時期が入っているかにある。季節や旬の話題を含む一句は、そのぶん早く古びる。長く掲げる側の言葉が具体的な出来事に寄っている場合、数年後に外さざるを得なくなり、積み上げた記憶をそこで手放すことになる。
スローガンの項へ →タグラインとブランドプロミスの違い
ブランドプロミスは顧客に対して何を保証するかという中身であり、タグラインはその中身を含めた姿勢を一行で言い表した表現である。前者は守れているかを確かめられ、後者は覚えられているかを確かめられる。検証の仕方が違う。
取り違えると、確かめようのない一行が約束の位置に置かれてしまう。抽象的な言葉を掲げること自体は問題ないが、それを果たしたかどうかを社内で判定できないなら、約束としては機能しない。約束の中身は別に持ち、一行はその表れとして扱う。
ブランドプロミスの項へ →使いどころ
多くはロゴと一体の「シグネチャー」として仕様化され、配置・余白・使用可否まで規定される。使いどころは、ブランドの立ち位置を一言で想起させたい場面、すなわち名刺・広告・パッケージなど接点の要所である。
策定にあたっては、コンセプトやパーパスといった上流の定義と矛盾しないかを確かめる。長く掲げる前提のため、流行語や時事的な言い回しは避け、事業が広がっても破綻しない射程を確保しておくとよい。
実務でのチェックポイント
- 掲げている一行を社員に伏せて尋ね、正確に言えるかを確かめる。社内で言えない一行は、社外ではさらに覚えられていない。
- その一行が示す姿勢に反する自社の振る舞いがないかを、価格や納期の判断から探す。見つかるなら、掲げるより先に直す対象がある。
- 五年後に事業の範囲が広がった場合に、その一行がまだ成り立つかを想定する。成り立たないなら、書き直しの時期が早く来る。
- 同業他社の一行を集めて自社のものと混ぜ、社内で見分けられるか試す。判別できないなら、固有性はまだ言葉に入っていない。
よくある誤解
社内で決めた一行は、掲げれば伝わると考えられがちである。だが受け手にとっては数ある文字情報の一つでしかなく、目に触れても読み飛ばされる。意味が伝わるのは、その一行と実際の振る舞いが一致している場面に何度か出くわした後で、掲示の量ではなく一致の回数が効いてくる。
事業が広がったときに一行が合わなくなる、という事態も起きやすい。策定時の主力事業に寄せて書くと、扱う範囲が変わった時点で狭くなる。かといって何にでも当てはまる言葉にすれば固有性を失う。どこまでの広がりを想定するかを、書く前に決めておく作業が省かれていることが多い。
よくある質問
タグラインは日本語と英語のどちらがよいですか?
言語の選択より、狙う相手が意味を取れるかで決まる。英語の一句は見た目が整いやすい反面、正確な意味が伝わらないまま雰囲気だけが残ることがある。伝えたいのが姿勢の内容なのか、それとも佇まいなのかを先に決めると、選ぶ言語も定まってくる。
タグラインは必ず必要ですか?
必須ではない。名前そのものが何をする会社かを示している場合、一行を足しても情報が重なるだけになる。必要になるのは、名前だけでは引き受ける役割が伝わらないときや、事業の幅が広く要約が要るときで、その条件がないなら置かない判断もありうる。
タグラインを変更するときは何に気をつけますか?
変えると決めた理由を、社内で一文にできるかを先に確かめる。飽きたからという理由では、次も同じ年数で飽きる。掲げてきた一行がどの部分で実態と合わなくなったのかを特定できていれば、新しい一行が同じずれを繰り返さずに済む。