コンセプト
ブランドの背骨となる一行の定義。誰の何を引き受けるかを凝縮し、他のすべての判断の起点になる。
意味
コンセプトは、ブランドの背骨となる一行の定義である。「誰の、何を、どう引き受けるのか」を凝縮した言葉で、そこから先のあらゆる判断が導かれる起点になる。
優れたコンセプトは、何をやり、何をやらないかを同時に指し示す。あれもこれもと欲張らず、引き受ける相手と役割を絞り込むからこそ、迷ったときの判断基準として機能する。
重要なのは、コンセプトが飾りの言葉ではなく、意思決定の道具だという点である。商品開発、コミュニケーション、採用まで、判断の場面でこの一行に立ち返れることに価値がある。
成り立ち
「コンセプト」は本来、概念・着想を意味する一般的な語である。それが企画やブランドの文脈で、施策全体を貫く中心思想を指す言葉として定着した。特定の理論家に帰されるものではなく、企画・制作の実務の中で育った用法である。
コンセプトとブランドエッセンスの違い
ブランドエッセンスが担うのは、そのブランドが何者であるかを煮詰めて留め置くことである。コンセプトはその核を、企画を通すか見送るかの判断に使える一行へ翻訳したものにあたる。エッセンスは年月を経ても書き換えないほど強く、コンセプトは事業や商品の局面が移れば言い直してよい。書き換えを許す幅の違いが、両者を隔てている。
迷ったときは、その一行がどちらを向いているかを問うとよい。エッセンスは、判断に詰まったときに何へ戻るかを示す帰り道であり、コンセプトは、これから何をつくるかを示す進む先である。同じ言い回しでも、戻る先として置かれているのか、生み出す起点として置かれているのかで役割は別になる。
ブランドエッセンスの項へ →コンセプトとタグラインの違い
タグラインは受け手に読ませるために外へ出す言葉であり、コンセプトは作り手が判断するために内側に置く言葉である。宛先が違うため、良し悪しの基準も違う。前者は覚えやすさと響きが問われ、後者は迷ったときに答えを一つに絞れるかが問われる。
そのまま流用すると噛み合わなくなる。判断に効く一行は説明的で長くなりがちで、外向けにはくどい。逆に外向けに整えた一行は角が取れていて、企画を止める力を失う。同じ内容でも、内側用と外向け用は別の言葉として書き分けることになる。
タグラインの項へ →使いどころ
実務では、ミッションやビジョンといった上流の理念と、日々の施策の間をつなぐ「翻訳された一行」として機能させる。抽象的すぎても、具体的すぎても、判断の基準にはなりにくい。
注意点として、耳ざわりの良い言葉に流れると、どのブランドにも当てはまる無難な一行になりがちである。他ではなくこのブランドだからこそ言える固有性を、どれだけ込められるかが問われる。
実務でのチェックポイント
- 見送った企画を持ち出し、なぜやらなかったかをコンセプトの一行だけで語ってみる。予算や人手を理由に挙げてしまうなら、その一行はまだ判断の道具になっていない。
- 一行から自社名を外し、同業他社に当てはめてみる。そのまま通用するなら、このブランドだからこそ言える部分がまだ入っていない。
- 商品開発の担当者と採用の担当者に、同じ一行を根拠に下した判断をそれぞれ挙げてもらう。片方でしか使われていないなら射程が偏っている。
- 一行の中に、引き受けない相手や領域が読み取れるかを確かめる。やることしか書かれていないなら、絞り込みの作業がまだ済んでいない。
よくある誤解
社外に見せる宣伝文句として捉えられると、耳あたりの整った一行に落ち着きやすい。だが実際に効くかどうかは、社外へ出ない場面で判断を止められるかで決まる。企画を通すときではなく、通さないときの根拠として引かれているかを見ると、飾りとして置かれているのか道具として働いているのかの差が表れる。
全社に一つあれば足りる、という扱われ方もある。上位の理念は一つでよいが、商品や事業ごとに引き受ける相手が違えば、翻訳された一行も対象の数だけ要る。一つの一行をすべての現場に配ると、どの現場でも半分しか当てはまらない言葉になり、参照する手間に見合わなくなって次第に読まれなくなる。
よくある質問
コンセプトはどのくらいの長さにまとめるべきですか?
文字数より、会議の場で口頭に乗るかどうかが目安になる。引用しようとして正確に思い出せない長さなら、判断の場には持ち込まれない。逆に短くしすぎて何を引き受けるかが抜け落ちれば、どうとでも読める言葉になる。覚えて言い直せる範囲で、対象と役割が残る長さに収める。
コンセプトは誰が決めるものですか?
最終的には、それを根拠に企画を止められる立場の人が引き受けることになる。言葉づくり自体は誰が担ってもよいが、決めた一行に反する案を通されたときに差し戻せなければ、基準としては働かない。書く人と守る人が別なら、守る側が納得しているかを先に確かめる。
一度決めたコンセプトはいつ見直せばよいですか?
判断の場で参照されなくなったときが見直しの合図になる。年数で区切るより、直近の意思決定でその一行が引かれたかを数えるほうが確かめやすい。引かれていないなら、内容が古いのか、そもそも判断に使える形になっていないのかを切り分けてから手を入れる。