ブランドエッセンス
ブランドの核を短い言葉で表した一行。本質を最も濃縮した表現として、他の資産の判断基準になる。
意味
ブランドエッセンスとは、ブランドの核を短い言葉で凝縮した一行を指す。長い理念や説明のすべてを煮詰め、最も本質的な一点だけを取り出した表現であり、ブランドが結局のところ何であるかを言い当てる。
エッセンスの役割は、日々の判断の拠りどころになることにある。新しい表現や施策が「これはうちの核から外れていないか」を照らす物差しとして働く。短いがゆえに記憶され、組織全体で共有しやすい点に強みがある。
経営者にとっては、増えていく制作物や意思決定を一つの軸に収めるための錨になる。エッセンスが明確なほど、判断は速く、ぶれにくくなる。
成り立ち
エッセンス(essence=本質・精髄)を借りた語で、ブランドの最も濃縮された中核を指すために用いられる。ブランドの構造を階層で捉える実務の中で、その頂点あるいは中心に置かれる要素として位置づけられてきた。特定の個人に帰属する概念ではなく、ブランドの核を一行に凝縮する発想の総称として定着している。
ブランドエッセンスとタグラインの違い
タグラインは外に向けて掲げる短い一文で、受け手に届くことを前提に磨かれる。エッセンスは内部の判断基準として置く一行で、外に出さないことも多い。文字数は近くても、宛先と、何のために磨くのかという目的が違っている。
取り違えると、どちらの役目も果たさない一行が残る。外向けの響きを求めると判断基準としては曖昧になり、判断基準としての厳密さを求めると外向けには硬くなる。二つを別の文として持つほうが、それぞれの役目を果たしやすい。
タグラインの項へ →ブランドエッセンスとブランドプロミスの違い
ブランドプロミスは、顧客に対して何を約束するかという相手のある宣言である。エッセンスは、自社が何であるかという自己規定で、必ずしも相手を名指ししない。約束は果たせたかを問えるが、自己規定は確かめ方そのものが変わる。
検証のしかたで切り分けられる。約束は接点ごとに守れたかを確かめられるのに対し、エッセンスは個別の判断がそこから説明できるかで確かめる。守れたかを問えない一行を約束として扱うと、誰も検証しない宣言だけが残ることになる。
ブランドプロミスの項へ →使いどころ
ブランドの構築や再定義の際、多くの要素を整理した末にたどり着く結論として言語化される。タグラインやコンセプトと混同されやすいが、エッセンスは対外的なコピーというより、内部の判断基準としての性格が強い。飾った美辞麗句ではなく、迷ったときに立ち返れる簡潔さが求められる。
実務でのチェックポイント
- 最近もめた判断を三つ書き出し、その一行だけを根拠に結論まで話してみる。話が途中で別の理屈に移るなら、核はまだ基準として働いていない。
- その一行の主語を同業他社の名前に差し替えて読んでみる。違和感なくそのまま通るようなら、煮詰めていく過程で自社だけの事情が抜け落ちている。
- その一行から導かれる、やらないことを一つ挙げる。何も除外できない一行は、判断を絞る力を持っていない。
- 社内の別部署の人に一行を見せ、自分の仕事で何が変わるかを言えるか尋ねる。言えないなら、届く言葉になっていない。
よくある誤解
短ければ短いほどよい、という方向に議論が進みやすい。だが削る過程で自社に固有の事情が落ち、どの会社でも成り立つ抽象語だけが残ることがある。短さは記憶のための条件であって、判断の材料としては、その一行から具体的な選択が導けるかのほうが先に来る。
美しい一行が出た時点で完成と見なされるのも起きやすい。実際に働いているかは、その後に迷った案件でその一行が持ち出されたかで分かる。議事録に一度も登場しないまま数年が経っているなら、掲げられてはいても、判断には使われていないということになる。
よくある質問
ブランドエッセンスは公開すべきですか?
公開しなくても機能する。内部の判断基準として働けば足りるため、外向けには別の言葉を用意するほうが自然な場合が多い。ただし社内には広く共有する必要があり、経営層だけが知っている状態では、判断を揃えるという役目を果たせない。
エッセンスとコンセプトはどう違いますか?
対象の範囲が違う。コンセプトは商品や施策など個別の対象ごとに立てられ、複数あってよい。エッセンスはブランド全体に一つ置かれ、個別のコンセプトが外れていないかを照らす側に立つ。数の扱いを見ると見分けやすい。
どうやって言葉を決めればよいですか?
新しく考え出すより、すでに社内で繰り返し語られている言い回しを集めるところから始まることが多い。創業の経緯や、顧客に選ばれた理由を語るときに何度も出てくる言葉には、自社固有の事情が残っている。そこから削っていく形になる。