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体験

エスノグラフィ

Ethnography

利用者の生活や現場に身を置いて観察し、言葉にされない行動や文脈を読み取る調査手法。

意味

エスノグラフィとは、対象となる人々の生活や仕事の現場に入り込み、その場の行動や慣習を観察して理解しようとする調査の方法を指す。アンケートや聞き取りでは掴みにくい、無意識の振る舞いや文脈を捉える点に特徴がある。

人は自分の行動を必ずしも正確に語れない。そこで、語りだけに頼らず現場を観ることで、言葉にならない不便や工夫を見つけ出す。デザイン思考では共感を深める入り口として位置づけられる。

成り立ち

もとは文化人類学で、民族や集団の文化を現地での参与観察により記述する研究手法を指した語で、後にデザインやマーケティングの利用者調査へ応用された。

エスノグラフィとデプスインタビューの違い

デプスインタビューは対象者に問いを重ねて語りを引き出す方法で、エスノグラフィは語りに頼らず、その場で起きている行動を観察する方法である。前者は本人が自覚していることに強く、後者は自覚されていない振る舞いに届く。

使い分けの目安は、知りたいことが言葉になるかどうかにある。選んだ理由や迷いは語りから拾えるが、無意識の手順や環境による制約は、聞いても本人が言及しない。両方を組むと、語りと行動の食い違いそのものが手がかりになる。

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エスノグラフィとユーザーリサーチの違い

ユーザーリサーチは利用者を理解するための調査全般を指す広い呼び方で、エスノグラフィはその中の一手法にあたる。前者は目的の側の名前、後者は方法の側の名前になるため、並列に置いて優劣を比べる対象ではない。

実務で混ざりやすいのは、手法の選定を目的の議論より先に始める場面である。何が分かっていないのかを決める前に観察を始めると、現場に入っても何を見るかが定まらない。目的の側から手法を選ぶ順序が保たれているかで判別できる。

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使いどころ

利用者の実態が数値や発言だけでは見えにくいときに、現場に赴いて観察する。得られた気づきをインサイトの深掘りや課題定義へつなげる。

実務でのチェックポイント

  • 観察に入る前に、何が分かっていないのかを書き出しているかを確かめる。書けないなら見る対象も定まらない。
  • 観察した事実と、そこから読み取った解釈を分けて記録しているかを見る。混ざると後から検証できない。
  • 実際の利用環境に立ち会ったのか、会議室で話を聞いただけかを確認する。後者なら得られるのは語りに限られる。
  • 印象に残った一場面だけを根拠にしていないかを振り返る。他の対象でも同じことが起きているかを確かめる。

よくある誤解

現場を見れば答えが得られる、と期待されやすい。だが観察で得られるのは事実の断片で、そこから何が言えるかは解釈の作業になる。見た内容をそのまま報告すると、印象的な場面だけが強調され、頻度も背景も分からないまま結論の根拠に使われてしまう。

もう一つは、対象者に見られている状態を勘定に入れない扱いである。観察されていると人は普段と違う振る舞いをするため、短時間だけ立ち会って得た様子を日常と見なすと誤る。時間をかける、繰り返す、残された痕跡から補うといった手当てが要る。

よくある質問

エスノグラフィは何人ぐらいを観察すればよいですか?

人数より、状況の幅を確保するほうが効く。同じ条件の人を多く見ても似た行動が並ぶが、環境や習熟度の違う数人を見れば、何が共通で何が条件によるものかが分かれてくる。数を先に決めるより、対象の選び方から組み立てる。

アンケートと併用したほうがよいですか?

併用すると互いを補い合う。観察は何が起きているかを深く捉えるが、それがどれだけ広く起きているかは分からない。観察で見つけた事象を後から量で確かめる順序にすると、印象の強い一場面に判断が引きずられにくくなる。

業務の現場でも観察は有効ですか?

有効になる。業務の手順は文書化されたものと実際が食い違いやすく、その差は聞き取りでは出てこない。手元の付箋や自作の一覧表といった工夫の痕跡は、現場に立ち会って初めて見える。困りごとは、そうした工夫の場所に集まる。

この項目は、ブランディング支援会社 Highlite Inc. 編集部が執筆・監修しています。
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