カスタマージャーニー
認知から購入・推奨までの顧客の道のりを時系列で描く地図。各接点で像がどう積み上がるかを可視化する。
意味
カスタマージャーニーは、顧客がブランドと出会い、検討し、購入し、やがて他者に推奨するまでの道のりを、時系列で描いた地図である。ひとつの購買を点ではなく、連なる体験の流れとして捉え直すための道具といえる。
この地図には、各段階で顧客が何を感じ、どの接点に触れ、どんな迷いや期待を抱くかが書き込まれる。認知の入口から購入後の関係まで、像がどう積み上がっていくのかを一望できるのが特徴である。
描く目的は、体験の途切れやつまずきを見つけることにある。どの接点で期待が裏切られ、どこで気持ちが離れるのかを可視化することで、改善すべき箇所が具体的に浮かび上がる。
成り立ち
顧客の購買を段階の連なりとして捉える発想は、古くからのファネルやAIDAといった消費行動モデルに連なる。近年は接点がオンラインとオフラインに広がったことで、直線的な段階よりも、行き来を含む「旅(ジャーニー)」として描く見方が定着した。特定の個人に帰されるより、実務の中で育った枠組みである。
カスタマージャーニーとファネルの違い
ファネルは、多くの見込み客が段階を経るごとに絞られていく量の変化を捉える見方である。ジャーニーは、一人の顧客が辿る経路と、その途中の感情まで含めて描く見方になる。集団の減り方を見るか、個人の道筋を見るかで分かれる。
答えられる問いも違う。ファネルはどの段階で人が落ちているかを示すが、なぜ落ちたかは示さない。ジャーニーはその理由の仮説を立てられるが、規模は分からない。片方だけで施策を決めると、量か理由のどちらかを欠いたまま進むことになる。
ファネルの項へ →カスタマージャーニーとタッチポイントの違い
タッチポイントは接触が起きる個々の場所を指し、ジャーニーはそれらが時間の順に並んだ全体を指す。点と線の関係にあたり、同じ接点でも、道のりのどこに置かれているかによって求められる役割が変わってくる。
取り違えると、接点ごとの改善が全体の改善につながらない。個々の質を上げても、前の段階で抱かせた期待と噛み合っていなければ、落差として受け取られる。点の良し悪しの前に、順番と繋がりを見る視点が要る。
タッチポイントの項へ →使いどころ
実務では、対象とする顧客像を定め、その人物が各段階で辿る接点と感情を一枚に並べていく。関係部署が同じ地図を見ることで、部門ごとにばらばらだった施策を、顧客の視点で束ね直せる。
ただし、描いた地図はあくまで仮説である。実際の顧客行動と照らして更新し続けなければ、机上の理想像に留まる点に注意したい。
実務でのチェックポイント
- 図に描いた段階のうち、実際の記録で人数を確認できるものがどれだけあるかを見る。確認できない段階は仮説のまま置かれている。
- 直近の顧客に、検討を始めてから決めるまでの経緯を辿ってもらう。図にない寄り道が出てくるはずで、そこを追記する。
- 各段階の担当部署を書き添え、担当が変わる継ぎ目がどこかを確かめる。落ちやすいのは段階の中よりも継ぎ目になる。
- 図が最後に更新された時期と、その後に商材や価格が変わっていないかを照合する。
よくある誤解
描いた図が精緻なほど良いと見なされやすい。だが段階を細かく割り、感情を書き込むほど、更新の手間が増えて放置されやすくなる。実務で使われるのは、どこで気持ちが離れるかという要所が数か所示された図で、網羅性より使われ続けることのほうが効く。
一本の直線として描かれることも多いが、実際の顧客は行き来する。調べては離れ、時間を置いて戻ってくる動きが図に入っていないと、離脱をすべて失敗として数えることになる。戻ってくる経路が描かれているかどうかで、施策の対象そのものが変わる。
よくある質問
カスタマージャーニーは誰がつくりますか?
関係する部署が同じ場で描くほうが機能する。一部署が作って配ると、他部署にとっては他人の資料になり参照されない。描く過程で認識の差が表に出ること自体に価値があるため、完成物より場を持つことが目的に近い。
BtoBでもジャーニーは描けますか?
描けるが、一本の線には収まらない。現場の担当者、予算を握る責任者、稟議に判を押す立場では、触れる接点も引っかかる論点も重ならないため、束ねた図は誰の道のりでもなくなる。役割ごとに線を引き直し、社内で検討が持ち上がってから決裁に至るまでの受け渡しまで図に入れると、実際の進み方に近づく。
購入後まで描く必要がありますか?
継続や紹介が事業に効くなら必要になる。購入で図が終わっていると、施策も購入までに偏り、その後の体験が誰の担当でもなくなる。解約や再購入が起きる場面まで描くと、放置されている接点が見つかりやすい。