ファネル
認知から購入へ絞り込まれる顧客の流れを漏斗で捉える枠組み。どの段でこぼれるかを見立てる道具。
意味
ファネルとは、認知から購入へと顧客が絞り込まれていく流れを、漏斗の形になぞらえて捉える枠組みのことである。上段ほど人数が多く、下段に進むほど数が減っていく様子を表す。
この見立ての利点は、顧客がどの段階でこぼれ落ちているかを可視化できる点にある。認知は十分でも検討に進まない、検討はされるが購入に至らない、といった詰まりを見つけやすくなる。
現実の顧客行動は必ずしも一方向に進むわけではないが、流れを段階に分けて捉えるための共通の物差しとして広く使われている。
成り立ち
funnel は「漏斗(じょうご)」を意味する英語で、口が広く先が細い器具の形が、多くの見込み客が少数の購入者へと絞られていく様子の比喩として用いられた。
顧客の購買に至る道のりを段階で捉える発想の中で、その形状のわかりやすさから、マーケティングの定番の図式として定着した。
ファネルとカスタマージャーニーの違い
ファネルは、人数がどこで減るかを段階で捉える見方である。カスタマージャーニーは、一人の相手が何を考え、どう動くかを時間に沿って辿る見方になる。前者は集計された全体を、後者は個別の経験を扱う。答えられる問いが違っている。
使い分けの目安は、詰まりの場所を知りたいのか、詰まる理由を知りたいのかにある。どの段で落ちているかは数で分かるが、なぜ落ちるのかは数からは出てこない。数で場所を絞り、経験の側で理由を探すという順序で組み合わせると、片方だけで判断するより外れにくい。
カスタマージャーニーの項へ →ファネルとセールスファネルの違い
セールスファネルは、商談として管理される案件がどう進むかを扱う。ここでの漏斗は、その手前にある認知や関心の広がりまで含める。同じ図でも、数える単位が案件か人かで意味が変わり、上流ほど誰を数えているのかが曖昧になりやすい点も異なる。
切れ目がどこにあるかは組織ごとに違う。同じ見込み客を、片方は有望な案件として数え、もう片方はまだ関心の段階として扱う、というずれは起きやすい。段の定義が部門で揃っているかを確かめないと、同じ漏斗を見ながら別の話をすることになる。
セールスファネルの項へ →使いどころ
ファネルは、どの段階に課題があるかを見立て、施策の重点を決める際に使われる。認知の拡大が要るのか、検討から購入への後押しが要るのかを切り分けるのに役立つ。
カスタマージャーニーやマーケティングの議論と併せると、顧客の流れと各接点の役割を対応づけて考えやすくなる。
実務でのチェックポイント
- 各段の定義を担当者ごとに書いてもらい、同じ意味で使われているかを確かめる。ずれていれば、集めた数字は比較にならない。
- 直近で失注した案件が、どの段で止まったかを分類する。分類できない案件が多いなら、段の切り方が実態と合っていない。
- 各段の人数を出す元の記録が、期をまたいで同じ方法で取られているかを見る。取り方が動けば増減の意味も動く。
- 一度落ちた相手が後から戻ってきた例を数える。数えていないなら、一方向の図が実態を覆い隠している。
よくある誤解
上から下へ一方向に進むという図の形を、そのまま現実だと受け取ると実際の動きを見落とす。人は検討を中断し、時間を置いて戻り、下の段から急に上へ戻ることもある。図は数を整理するための枠であって、行動の順序を規定するものではない。枠に収まらない動きのほうに、手がかりが残っていることは多い。
詰まっている段を見つけたら、そこを直せばよいという読み方も外れやすい。ある段で落ちる理由が、その段の作りではなく、もっと手前で誤った期待を与えたことにある場合は珍しくない。落ちた場所と原因のある場所は別のことがあるため、直す前に一つ手前の段を疑う手順が要る。
よくある質問
ファネルは今でも有効な考え方ですか?
詰まりの場所を絞る道具としては有効である。実際の行動が一方向でないのは確かだが、それは図の使い方の問題であって、段階に分けて数えること自体は判断を助ける。行動の順序を説明する図としてではなく、どこを厚くするかを決める枠として扱えば無理は生じない。
各段の数字はどう集めればよいですか?
完全な計測より、同じ方法で続けることが先に来る。取り方が期ごとに変われば、増減が実態の変化なのか測り方の変化なのか分からなくなる。粗くても定義を固定して並べ、変化の向きを見るほうが、精密だが比較できない数字より使える場面が多い。
上と下のどちらに力を入れるべきですか?
落ちている割合が最も大きい段から手を付けるのが基本になる。ただし下の段の効率が良いのは、上で絞り込まれた結果である場合が多く、上を広げると下の割合はいったん下がる。段ごとの割合だけでなく、最後に残る人数で見比べる必要がある。