ファンマーケティング
熱量の高い支持者との関係を深め、継続的な購入や周囲への推奨につなげることを重視する手法。
意味
広く浅く集めるより、既存の支持者との結びつきを厚くする発想に立つ。
ファンによる推奨や共創が、新たな顧客獲得を後押しすると考える。
成り立ち
少数の熱心な顧客が売上や口コミに大きく寄与するという観察を背景に広まった。
コミュニティ運営やファン参加型の施策と結びついて用いられる。
ファンマーケティングとブランドロイヤルティの違い
ブランドロイヤルティは顧客の側に生じている愛着や継続の状態を指し、ファンマーケティングはその状態を厚くするために送り手が取る働きかけを指す。結果として現れているものと、働きかけの側という位置の違いになる。
切り分けると、評価の対象が変わる。施策を実施したかどうかは自社で数えられるが、愛着が厚くなったかは継続や推奨の動きにしか現れない。集まりを開いた回数を成果として置くと、状態の側の変化が見えなくなる。
ブランドロイヤルティの項へ →ファンマーケティングとコミュニティの違い
コミュニティは参加者同士の関係が生まれている場そのものを指し、ファンマーケティングは支持者との関係を事業の成果へつなげる取り組みを指す。場をつくることと、関係を活かすことは重なるが同じではない。
取り違えやすいのは、場を用意すれば関係が育つと考える場面である。参加者にとって、そこに集まる理由が自分の側にあるかどうかで場の持続は決まる。運営の都合でつくられた場は、告知の掲示板として使われて終わりやすい。
コミュニティの項へ →使いどころ
既存顧客の維持と推奨を軸にした施策の説明に用いられる。
ロイヤルティ強化の取り組みと関連づけて語られる。
実務でのチェックポイント
- 熱量の高い顧客を、購入の頻度だけでなく紹介や発信の有無まで含めて特定する。金額の大きさとは一致しないことがある。
- 支持者から寄せられた要望のうち、実際に反映した件数を数える。伝える場だけがあって反映がなければ、関係は薄れていく。
- 新規の顧客が既存の支持者を経由して来た割合を確かめる。推奨が働いているかは、この経路の太さに現れる。
- イベントの案内文を、参加者が持ち帰るものだけで書き直してみる。新商品の告知を抜いたとたん中身が空になるなら、その集まりは回を重ねるほど人が減る。
よくある誤解
熱心な顧客に手厚く応えるほど成果が増えると考えられやすいが、既に強く支持している相手への上積みは頭打ちになりやすい。同じ手間を、離れかけている層や関心を持ち始めた層へ向けたほうが動く場合もあり、どこへ配るかは分けて判断する対象になる。
もう一つは、支持者の声を市場全体の声として扱う点である。残っている人ほど今のあり方を肯定するため、そこから得られる助言は現状の延長に寄る。届いていない相手の不在は声として現れないという点を、意思決定の場へ持ち込む必要がある。
よくある質問
ファンマーケティングは新規獲得の代わりになりますか?
置き換えにはなりにくい。支持者を通じた広がりは信頼を伴う代わりに、届く範囲がその人の交友の内側に限られる。新しい層へ入るには別の手段が要るため、獲得の手前ではなく、獲得した後を厚くする役割として置くほうが噛み合う。
ファンの数はどう数えればよいですか?
登録者の数で数えると実態から離れやすい。継続して購入しているか、周囲へ伝えているか、要望を寄せているかといった行動の側で線を引くほうが、施策の判断には使える。数の大小より、行動を伴う人の割合を見る形になる。
規模の小さい事業でも成立しますか?
人数が少ないほど、一人ひとりの顔が見える分だけ成立しやすい。個別に応対できる範囲であれば、仕組みを整える前に関係が育つ。仕組みが必要になるのは、応対しきれなくなった時点からだと考えると順序を誤りにくい。