レゾンデートル
存在意義を指すフランス語。パーパスと近く、「なぜこの会社が在るのか」への答えとして用いられる。
意味
レゾンデートルとは、存在意義・存在理由を指すフランス語である。ブランドや企業の文脈では、「なぜこの会社が在るのか」という問いへの答えとして用いられる。
ブランドパーパスと近い概念で、利益や事業内容といった手段の次元ではなく、その組織が社会に対して在ること自体の意味を問う。何をするかではなく、何のために在るかを言い表す言葉である。
存在意義を明確にすることは、日々の判断に一本の芯を通す働きを持つ。迷いが生じたとき、目先の損得ではなく、この根本の答えに照らして選ぶための拠り所となる。
成り立ち
「レゾンデートル(raison d'être)」は、フランス語で「理由」を意味するraisonと、「存在する」を意味するd'être(être=在る)が結びついた成句で、字義どおり「存在する理由」を表す。哲学や日常の語彙として用いられてきた言葉が、経営やブランドの理念を語る文脈にも取り入れられた。
レゾンデートルとブランドパーパスの違い
両者はほぼ同じ問いに答えるが、語の置かれる場所が違う。レゾンデートルは在ることの意味を問う一般的な言葉で、パーパスは社会に対する役割として言語化し、施策や発信にまで結びつけていく実務の語として使われることが多い。
使い分けの目安は、外に向けて掲げる前提があるかどうかにある。レゾンデートルは自問の言葉として社内に留まることもあるが、パーパスは顧客や求職者へ示され、行動と照らして検証される。掲げた後にどう扱われるかで差が出る語だといえる。
ブランドパーパスの項へ →レゾンデートルとミッションの違い
ミッションは果たすべき使命であり、誰に対して何をするかという行いの側に寄る。レゾンデートルは、その行いの手前にある、在ること自体の意味を問う。することを語るのか、在ることを語るのかという違いで分けると迷いにくい。
実務では混ざりやすいが、事業を組み替える判断のときに差が出る。使命は事業内容が変われば書き換えの対象になるが、存在意義は事業が変わっても残ることを前提に置かれる。書き換える頻度の違いが、そのまま層の違いを示している。
ミッションの項へ →使いどころ
「わが社のレゾンデートルは何か」といった形で、存在意義を根本から問い直す場面で用いられる。ミッションやパーパスと重ねて、組織が在ることの意味を言葉にする際に参照される。
実務でのチェックポイント
- 掲げた一文から自社名を外し、同業の他社が掲げていても違和感がないか確かめる。ないなら固有の答えになっていない。
- 儲かるとわかっていて断った仕事を一つ思い出し、断った理由を存在意義の一文から導き直す。途中で別の理屈に乗り換えるなら、その一文はまだ現場の判断とつながっていない。
- 創業の経緯を知る人に、なぜこの事業を始めたのかを聞き取り、いま掲げている言葉と重なるところがあるかを見る。
- 事業の内容が変わってもその一文が残るかを想像する。残らないなら、それは使命の層の記述として書かれている。
よくある誤解
存在理由を問う言葉であるだけに、崇高な一文を用意すれば足りると錯覚されやすい。社名を伏せて同業に配っても違和感なく通る文章は、この会社が無くなったら何が失われるのかに触れていない。答えになっているかは、他社に置き換えて成立するかを試せば、その場で見分けがつく。
理念を語る言葉は日々の業務と関係がないものとして扱われることもある。実際に効くのは、収益にはなるが引き受けるべきか迷う仕事を前にした場面になる。そうした割に合わない判断の場で参照されていないなら、書かれてはいても働いていないのと変わらない。
よくある質問
レゾンデートルとパーパスは使い分けるべきですか?
同じ内容を二つの語で持つ必要はない。社内で使い慣れているほうを選び、もう一方は説明のための言い換えとして扱えば足りる。問題になるのは語の選択ではなく、似た抽象度の言葉が別々の文として並存し、参照先が定まらなくなる場合になる。
存在意義は誰が決めるものですか?
決裁できる立場の人が引き受けることになる。存在意義は、割に合わない判断を通すための根拠として使われるため、その判断を実際に下せない人が書いても運用されない。社員の言葉を集める過程は有効だが、最後に選ぶ責任は分散させにくい。
事業を変えたら書き直す必要がありますか?
書き直す必要があるなら、それは存在意義ではなく事業の説明だったことになる。在る理由は、何をするかが変わっても残る水準で書かれているのが本来の姿になる。事業の変更のたびに書き換えているなら、抽象度が一段低いところに置かれている。