カテゴリーエントリーポイント
顧客が特定カテゴリを想起する状況や手がかり。CEPを多く押さえるブランドが、選択肢として優先的に浮かぶ。
意味
カテゴリーエントリーポイント(CEP)は、顧客があるカテゴリの購入を考える「きっかけ」となる状況や手がかりを指す。喉が渇いた、来客がある、贈り物を選ぶ——こうした場面のひとつひとつが、特定の商品を思い出させる入口になる。
重要なのは、CEPが商品側の特徴ではなく、顧客の頭の中にある「文脈」だという点である。同じ飲料でも「朝の目覚めに」「運動のあとに」「仕事の合間に」では、想起される手がかりが異なる。ブランドはこれらの入口をどれだけ多く押さえているかで、選択肢に挙がる頻度が変わる。
多くのCEPと結びついたブランドほど、さまざまな場面で真っ先に思い出される。この「思い出されやすさ」は、メンタルアベイラビリティを支える中核の考え方として位置づけられる。
成り立ち
CEPは、マーケティング科学者 Byron Sharp と、その所属する Ehrenberg-Bass 研究所の一連の研究を通じて広く知られるようになった概念である。ブランド成長を「差別化」より「想起のされやすさ」と「買いやすさ」で説明する立場から、購買場面での手がかりを体系的に捉える枠組みとして提示された。
カテゴリーエントリーポイントとメンタルアベイラビリティの違い
メンタルアベイラビリティが指すのは、買う必要が生じた瞬間に名前が浮かび上がる状態そのものである。CEPが指すのは、その瞬間を呼び起こす個々の場面、たとえば来客の予定が入った、運動を終えた、といった手がかりの一つひとつにあたる。前者を溜まった水の量に見立てるなら、後者はそこへ水を注ぐ蛇口であり、蛇口の数が増えるほど水位も上がる関係にある。
作業の単位が違う点に、切り分ける実益がある。状態は測って現在地を知る対象で、CEPは一つずつ選んで手を打つ対象になる。想起されにくいという診断だけでは動けず、どの場面で思い出されていないかまで降りて初めて施策になる。
メンタルアベイラビリティの項へ →カテゴリーエントリーポイントとポジショニングの違い
ポジショニングは、競合と比べてどんな位置に覚えられるかという他社との相対の話である。CEPは、顧客がどんな場面でそのカテゴリを思い浮かべるかという文脈の話で、必ずしも他社との比較を含まない。
作業の向きも逆になりやすい。位置を定める作業は、覚えられ方を一つに絞る方向に働く。CEPを押さえる作業は、思い出される場面を増やす方向に働く。同時に扱うと、絞るのか広げるのかで議論が噛み合わなくなることがある。
ポジショニングの項へ →使いどころ
実務では、まず顧客がそのカテゴリを思い浮かべる状況を洗い出し、自社がどの入口を押さえられているかを点検する。空いている入口を見つけ、そこに結びつく連想を広告やコミュニケーションで育てるのが基本の流れになる。
注意したいのは、CEPを増やそうとして無関係な場面に手を広げると、かえって印象がぼやける点である。カテゴリの実態に即した、顧客が本当に想起する入口を選び取ることが求められる。
実務でのチェックポイント
- 顧客に、自社の商品を思い出した直前に何をしていたかを尋ねる。買った理由ではなく、その手前の場面を聞き出す。
- 自社の発信が、どの場面と結びつく描き方になっているかを一つずつ確かめる。場面が描かれていないものが多くないか。
- 競合が押さえている場面を書き出し、自社と重なっている入口と、まだ空いている入口を分ける。
- 自社が想定している入口が、実際に購買が起きている場面と一致しているかを受注の記録と突き合わせる。
よくある誤解
CEPを商品の使用シーンの一覧と同じものだと考える読み違えが起きやすい。飲む場面と、買おうと頭に浮かぶ場面は同じ地点にない。冷蔵庫が空だと気づいた瞬間や、人から名前を聞いた瞬間のように、手が伸びるより手前に入口は開いている。そこを飛ばして使用中の絵ばかり並べると、広告は届いても想起の引き金は増えない。
入口は多いほどよい、という単純な足し算で扱われることもある。関係の薄い場面まで広げると、どの場面でも中途半端にしか思い出されない状態になる。増やす前に、すでに押さえている入口で確実に思い出されているかを確かめる順序が要る。
よくある質問
CEPはいくつ押さえるべきですか?
数の目安より、押さえた入口で確実に思い出されているかが先に来る。多くの場面と結びつくほど想起の機会は増えるが、そのためには同じ結びつきを繰り返し伝える必要がある。手を広げる前に、繰り返しに耐えられる数まで絞る形になる。
BtoBでもCEPは使えますか?
使える。担当者が課題を意識する場面や、社内で検討が始まるきっかけが入口にあたる。個人の購買より検討の期間が長い分、思い浮かべられる瞬間と実際の発注が離れやすく、入口の時点で名前が挙がっているかが効いてくる。
どうやって入口を見つけますか?
既存顧客が最初に検討を始めた経緯を、時間をさかのぼって聞く形が基本になる。購入の理由を尋ねると整理された答えが返ってくるため、その手前で何が起きていたかを具体的に辿るほうが、実際の入口に近づける。