顧客関係管理(CRM)
顧客との関係を情報として把握し、継続的な関わりへと生かす考え方と仕組み。
意味
顧客関係管理(CRM)とは、顧客との関係を情報として把握し、継続的な関わりへと生かす考え方や仕組みを指す。誰が、いつ、どのように関わってきたかを蓄積し、次の対応に役立てる。
この考え方の要点は、顧客を一度きりの取引相手ではなく、続く関係の相手として捉えることにある。過去のやり取りを踏まえ、一人ひとりの状況に応じた関わりを目指す。
しばしば同名の仕組みやソフトウェアを指して使われるが、本来は関係を軸に発想する姿勢を意味する。道具を入れることと、関係を大切にすることは、必ずしも同じではない。
成り立ち
customer relationship management の頭字語で、顧客との関係を軸に据えた管理の考え方を指す概念として定着した。
既存顧客との関係を維持することの価値が意識される中で、関係を情報として捉え生かす発想として広まった。
顧客関係管理(CRM)とマーケティングオートメーション(MA)の違い
マーケティングオートメーションは、条件に応じて働きかけを自動で実行する仕組みであり、顧客関係管理は関係の履歴を蓄えて次の判断に生かす考え方にあたる。前者は送る側の作業を減らし、後者は判断の材料を増やす。目的が違うため、片方を入れても他方は埋まらない。
順序でも切り分けられる。履歴が整っていない状態で自動の働きかけだけを増やすと、同じ相手に前提の食い違う連絡が届く。何を知っているかが先にあり、どう働きかけるかが後に来る関係で、逆に置くと丁寧さが裏目に出る。
マーケティングオートメーション(MA)の項へ →顧客関係管理(CRM)とカスタマーサクセスの違い
カスタマーサクセスは顧客が成果を得られるよう能動的に関わる営みであり、顧客関係管理はその関わりを記録し次に生かす仕組みの側にある。前者は何をするかの話、後者は何を知っているかの話にあたり、担い手も評価のされ方も別になる。
取り違えは、道具を入れれば関わりが生まれると期待する場面で表れる。履歴が整っても、それを読んで誰かが動かなければ関係は変わらない。記録の精度を上げる作業と、記録を見て手を打つ作業は、別々に人を置いて初めて回ることになる。
カスタマーサクセスの項へ →使いどころ
顧客関係管理は、顧客との関係を把握し、継続的な関わりに生かす場面で用いられる。誰とどう関わってきたかを踏まえて次の対応を設計する。
顧客ロイヤルティやカスタマーサクセスの議論と結び付けると、関係を育て価値へつなぐ運用として捉えやすくなる。
実務でのチェックポイント
- 商談の前に過去の履歴を実際に開いた人がどれだけいるかを確かめる。参照されていないなら、記録は蓄積で止まっている。
- 入力項目のうち、直近半年で一度も検索や集計に使われていないものを洗い出す。使われない欄は負担だけを増やしている。
- 失注や解約の理由が記録に残っているかを見る。うまくいった経過だけが残るなら、次に効く材料が抜けている。
- 担当者が交代した案件で、引き継ぎに記録がどれだけ使われたかを確かめる。口頭に頼っているなら粒度が足りない。
よくある誤解
仕組みを導入することが取り組みそのものと見なされやすい。入力の項目が増えるほど記録は詳しくなるが、入力する側の負担も増え、埋まらない欄が残る。詳しさより、次の対応で実際に参照される項目に絞られているかのほうが、運用の続きやすさを決めることになる。
記録が営業の進捗管理の道具として扱われると、書かれる内容そのものが変わってしまう。進み具合を問われる前提で入力されれば、都合よく整えた経過が残り、失注の理由や相手の迷いといった次に効く情報が落ちる。何のための記録かが共有されないと、蓄積するほど実態から離れる。
よくある質問
CRMツールを入れれば顧客との関係は良くなりますか?
道具だけでは変わらない。記録が整うことと、それを読んで対応が変わることの間には、誰がいつ参照するかという運用の設計が挟まる。導入後に関係が変わったかは、機能の使用状況ではなく、過去の経緯を踏まえた対応が実際に増えたかで確かめることになる。
小規模でもCRMは必要ですか?
人数が少ないうちは記憶で回せるため、必要になるのは担当が交代する場面や、関わる人が増えた時点になる。導入の判断は規模ではなく、誰かが不在のときに過去の経緯をたどれるかで決まる。たどれないなら、規模にかかわらず記録の置き場が要る。
顧客の情報はどこまで細かく持つべきですか?
目安は、次の一手が変わる粒度までである。項目を足すほど判断が鋭くなるわけではなく、誰も開かない欄は入力する側の負担として残り、埋めた体裁だけが並ぶ。やがて参照される項目の中身まで疑わしくなる。新しい欄を設けるなら、そこが埋まった日に営業や窓口の動きがどう変わるのかを、先に言葉にしておきたい。