ブランドボイス
ブランドがあらゆる発信で一貫して用いる、語り口や言葉づかいに表れる固有の人格的な個性。
意味
何を言うかだけでなく、どう語るかの一貫した個性を指す。
文章やコピー全体を貫く人格的なトーンとして表れる。
成り立ち
ブランドパーソナリティを言語表現の面で具体化したものとして論じられる。
媒体ごとの調子の使い分けはトーン・オブ・ボイスと呼ばれる。
ブランドボイスとトーン&ボイスの違い
ブランドボイスは、どの場面でも変わらない人格そのものを指す。トーン&ボイスとして語られるうちのトーンは、相手や状況に応じて変わる調子にあたる。人格は一つで調子は複数あるという関係で、変えてよい層とそうでない層が分かれている。
判別の手がかりは、場面をまたいだときに何が残るかにある。祝いの告知と不具合の謝罪では調子が変わるのは当然だが、書き手の人格まで別人に見えるなら、変えてはいけない層まで動かしている。どちらを調整したのかを言い分けられる状態にしておく必要がある。
トーン&ボイスの項へ →ブランドボイスとブランドパーソナリティの違い
ブランドパーソナリティは、ブランドを人に見立てたときの性格の全体を指し、見た目や振る舞いも含む。ブランドボイスは、その性格が言葉づかいの上に現れた部分にあたる。上位の設定と、その言語面での具体化という関係で並んでいる。
実務では、上位が定まらないまま言葉の規則だけが先に作られる事態が起きやすい。使う語彙や語尾の一覧はできても、なぜその選択なのかを説明できないと、新しい場面に出くわしたときに判断できない。規則の背後にある性格まで遡れるかが、運用の分かれ目になる。
ブランドパーソナリティの項へ →使いどころ
発信の言葉づかいをそろえる指針として参照される。
コピーやSNS運用の一貫性を保つ際に用いられる。
実務でのチェックポイント
- 謝罪、断り、値上げの告知といった書きにくい場面の文章を集め、他の場面と同じ人格に読めるかを確かめる。差は不都合な場面に出る。
- 自社の文章から社名を伏せ、競合の文章と混ぜて社内で読み比べる。判別できないなら、まだ言葉の上での固有性は生まれていない。
- 使わない言葉の一覧が用意されているかを見る。使う言葉だけを決めた指針は、書かれていない場面での判断に効きにくい。
- 書き手が複数いる媒体で、担当者ごとに調子が変わっていないかを直近の投稿で確かめる。人が変われば人格も変わっていないかを見る。
よくある誤解
文体の統一と同じものとして扱われやすい。語尾や表記を揃えれば見た目の一貫性は出るが、それは表記の規則の領域で、人格の話ではない。同じ語尾で書かれていても、断りの場面で急に冷たくなったり、謝罪が他人事のように読めたりすれば、受け手には別の人格として届く。
個性を出すことと、目立つ言い回しを使うことが重なって理解される場合もある。特徴的な表現は覚えられやすいが、繰り返されるほど内容より言い方が前に出て、伝えるべきことが薄れる。個性が現れるのは語彙の珍しさよりも、何を言わないかの選び方であることが多い。
よくある質問
ブランドボイスは誰が決めるのですか?
実際に書く人だけでは決めきれない。何を言い、何を言わないかは掲げた約束に紐づくため、その約束を決められる立場が関わる必要がある。ただし決めた内容が書き手の手元で使える形になっていなければ運用されないため、書く側との往復で具体化していくことになる。
媒体ごとに変えてもよいのですか?
調子は変えてよいが、人格は変えない。文字数の制約や読まれ方が違えば、同じ内容でも書き方は変わる。判断の基準は、それぞれの媒体の文章を並べたときに、同じ書き手が状況に合わせて書き分けたと読めるかどうかにある。別人に見えるなら変えすぎている。
書き手が交代しても保つにはどうすればよいですか?
望ましい例と望ましくない例を、同じ場面について対で残しておくほうが効く。形容詞で性格を説明するより、実際の文章の差として示したほうが再現されやすい。加えて、使わない言葉と避ける言い回しを明示しておくと、逸脱の幅が狭まる。