— 01 —ニュースの概要
日経クロストレンドは「デザインの可能性を説くほど、経営者は遠ざかる」と題した記事を掲載した。デザインの価値を伝えようとする側の熱意が、かえって経営者との距離を広げてしまうという逆説を、見出しそのもので提示している。
見出しから読み取れる範囲では、デザインを経営にどう届けるかという、デザイン経営の文脈でたびたび語られてきた論点を扱う記事と位置づけられる。伝える中身より伝え方に焦点を当て、デザインの側が語り口を見直す必要を示唆する切り口だ。
正直、デザインの話をするときほど、つい熱くなって範囲を広げすぎてしまうんですよね。一つの判断に絞って話したほうが、相手の顔つきが変わる気がします。
— 02 —経営者はデザインに、可能性より判断材料を求めている
デザインの力を信じる人ほど、その広がりを語りたくなる。顧客体験も、組織文化も、事業の未来も変えられると。どれも本当のことだが、経営者の側から見ると、範囲が広いほど何を決めればいいのかが見えにくくなる。可能性の話は、意思決定の話に変換されないかぎり、経営の机の上には残りにくい。
この見出しが教えてくれるのは、デザインを経営に近づける鍵が、語る量ではなく翻訳の質にあるということだ。経営者が日々向き合っているのは、どこに投資し、何をやめ、誰に任せるかという判断である。デザインがその判断の基準になれると示せたとき、はじめて同じテーブルの話題になる。
ブランドも同じ構造を持っている。ブランドを「らしさ」や「世界観」として語るだけでは、経営の議論に入りにくい。迷ったときにどちらを選ぶかを決める基準として示せば、ブランドは見た目の話から判断の一貫性の話に変わる。
— 03 —と、いうことで。
まず、直近で経営判断が割れた案件を一つ選んでほしい。価格改定でも、新サービスの出し方でも、採用の打ち出し方でもいい。そのとき、デザインやブランドの観点から「こちらを選ぶ理由」を一文で言えたかを振り返る。
言えなかったなら、それが次の打ち手になる。デザインの可能性を資料に並べる代わりに、その案件で使えたはずの判断基準を一文で書き、次の経営会議で一つの論点として出してみる。可能性を十語るより、判断を一つ助けたほうが、経営者は近づいてくる。
- デザインやブランドの話を、具体的な経営判断に結びつけて語れているか確かめる
- 直近で判断が割れた案件に、ブランドの基準を当てはめて振り返る
- 経営会議には可能性の一覧より、判断基準の一文を持ち込む