— 01 —ニュースの概要
日経クロストレンドが、ちょうど1年前に読まれた記事の上位10本をまとめて公開した。そのなかで読者の注目を集めたのが、サントリーのRTDブランド「-196」を扱った1本だ。同社は2025年7月に「果物がおいしいチューハイ」と銘打った新シリーズを発売し、RTDカテゴリーとしては過去最大規模の宣伝費を投じている。
元記事が焦点を当てたのは、広告の中身よりも手前の部分だった。サントリーはグループインタビューやデプス調査を重ね、さらに家庭への参与観察まで踏み込んだうえで、消費者が理屈ではなく直感で商品を選んでいるという事実に行き着いた。そして製法やアルコール度数といった機能の説明を前に出さず、「おいしそう」と感じてもらうことに訴求を一点集中させた。記事はこれを、調査から見えた消費者の実像が競合の盲点を突く戦略につながった事例として位置づけている。
正直、訴求を減らす提案っていちばん通りにくいんですよね。増やす分には誰も困らないので、気づいたら箇条書きが七つ並んでいる。あれ、たぶん誰も読んでいないです。
— 02 —調査は、言うことを増やすためではなく、減らすために使える
調査と聞くと、言えることが増える作業を思い浮かべる。事実が集まれば、根拠のある訴求も増える。実際、そうやって出来上がった資料はよく見る。製法のこだわり、素材の産地、受賞歴、価格、環境への配慮。どれも本当のことで、どれも捨てがたい。結果として、伝えたいことが七つ並んだ広告になる。
「-196」の進め方はここが逆になっている。時間をかけて集めた材料は、言うことを増やすためではなく、六つ捨てて一つを残すために使われた。製法は長く育ててきた資産だし、度数や果実の情報も間違いなく強みだ。それでも前に出さないと決めるには、言わなくても選ばれるという確信が要る。その確信は会議室の議論からは出てこない。人が実際に選んでいる場面を見に行った結果として出てくる。
もう一つ見落としたくないのは、絞る判断がいちばん社内で通りにくいという点だ。訴求を足す提案に反対する人は少ない。減らす提案には、その訴求を担ってきた部署の顔が浮かぶ。だから削る側には、足す側の何倍もの材料が要る。調査は外の消費者を理解するためだけのものではなく、内側の合意をつくる装置でもある。感覚的に見える表現ほど、その見た目の手前は理屈で埋まっている。
— 03 —と、いうことで。
まず、直近に出した広告、サービスサイトのトップ、営業資料の一枚目を並べてみる。そこで伝えている訴求をそのまま数える。三つを超えているなら、絞る余地がある。
次が本題で、絞るための材料が手元にあるかを確認する。どの訴求を落としても選ばれ続けると、根拠を持って言えるか。言えないなら、まだ調べていないということだ。調べ方は難しくない。アンケートで聞くのではなく、顧客が実際に選ぶ場面を見せてもらう。棚の前でもいいし、比較検討をしている打ち合わせに同席するのでもいい。人は選んだ理由を後から作るので、聞くより見るほうが早い。数えて、見に行く。この二つから始まる。
- 広告・サイト・営業資料で伝えている訴求の数を実際に数える
- どの訴求を落としても選ばれるか、根拠を持って言えるか確認する
- 聞く調査より、顧客が実際に選んでいる場面を見に行く