トレンド
一定期間に広く共有される嗜好や関心の流れを指し、ブランドが乗るか距離を置くかを問う対象。
意味
トレンドとは、ある期間に多くの人の間で共有される嗜好・話題・行動の流れを指す。ブランドにとっては、それに乗って注目を得る好機であると同時に、流行が過ぎれば古びる危うさもはらむ両義的な存在である。
重要なのは、一時の流行と、より長く続く価値観の変化を見分けることにある。短命の流行に軸足を移しすぎると、蓄積してきたブランドの像がぶれ、後に一貫性を損なうおそれがある。
成り立ち
消費や文化の動向を捉える議論の中で、短期の流行と長期の潮流を区別する視点として用いられてきた。ブランドの一貫性と、時代への適応をどう両立させるかという問いと結びつく。
トレンドとミームの違い
ミームは、模倣によって広がっていく個々の型そのものを指す。トレンドは、そうした型がいくつも重なって生じる、より大きな嗜好の流れを指す。目の前で拡散している一つの形を見ているのか、その背後にある向きを見ているのかという粒度の違いがある。
判断の場面でも分かれる。ミームに乗るかどうかは、その型が消えるまでの短い期間で決める話になるが、トレンドへの態度は、事業の方向をどこまで寄せるかという長い判断になる。前者を後者と同じ重さで扱うと、短命な形に合わせて根の部分まで動かすことになる。
ミームの項へ →トレンドとポジショニングの違い
ポジショニングは、自社が顧客の中でどの席に就くかという、こちら側が定めて動かさない軸である。トレンドは外側で勝手に移り変わる環境の側にある。片方は決める対象、片方は読む対象であり、混同すると環境の変化に合わせて席のほうを動かし続けることになる。
切り分けたいときは、変えた後に元へ戻せるかを問うとよい。表現や題材は流れに合わせて入れ替えられるが、席の取り方を動かせば顧客は覚え直すことになり、簡単には戻せない。流れに乗る範囲を、戻せる層に留めておけるかどうかが線引きになる。戻せる範囲に留めておけば、外れたときの損は小さくて済む。
ポジショニングの項へ →使いどころ
話題性を取りに行くか、あえて距離を置くかを判断する場面で用いられる。流行への追随がブランドの核と矛盾しないかを照らすことが、乗るべきかの見極めにつながる。
実務でのチェックポイント
- いま追いかけている流れについて、去った後に自社に何が残るかを一つ挙げる。残るものが答えられないなら、消費して終わる関わり方になっている。
- その流れに乗った施策が、自社が普段から言っていることと矛盾していないかを読み合わせる。矛盾があれば、注目より先に不信が生まれる。
- 流れに乗る判断を、誰がどの範囲まで決めてよいかを事前に決めておく。速さが要る場面ほど、決裁の所在が曖昧だと判断が遅れる。
- 過去に乗った流れを振り返り、当時つくった資料や表現がいまも使えるかを確かめる。使えないものが多いなら、その都度つくり直す費用を織り込む必要がある。
よくある誤解
流れに乗るか乗らないかの二択で語られやすいが、実際の判断は乗り方の深さのほうにある。題材として一度触れるのか、商品の設計まで合わせるのか、事業の柱として据えるのかでは、流れが去ったときに残る負担がまったく違う。深さを決めずに賛否だけを議論すると、決まったつもりで現場の判断がばらつく。
後から振り返って流れだったと分かることと、渦中で見分けられることを同じに扱う誤りもある。進行中は、短命な盛り上がりも長い変化も同じ形で目に映る。見分けがつかない前提に立てば、当てにいくのではなく、外れても損の小さい関わり方を選ぶという判断のほうが現実的になる。当てにいく前提を捨てるところから、判断は現実的になる。
よくある質問
トレンドに乗らないと時代遅れになりませんか?
乗らないことと、変化を読まないことは別になる。流れを把握したうえで距離を置く判断は、把握していないまま取り残されるのとは違う結果を生む。危ういのは、乗らない理由を説明できないまま何もしない状態であり、あえて外すと決めているのなら、その姿勢自体が持ち味になる。
一時の流行と長期の変化はどう見分けますか?
その動きが何かの不便を解消しているかを見ると手がかりになる。不便が解かれた状態は元に戻りにくいため、変化として残りやすい。一方、目新しさや話題そのものが動機になっているものは、飽きとともに引いていく。解決されているものがあるかを問うと輪郭が出る。
流行を追う担当と守る担当は分けるべきですか?
役割を分けても、判断の軸は一つに保つ必要がある。分けること自体は、速さと一貫性を両立させるうえで有効に働く。ただし乗ってよい範囲が共有されていなければ、片方が広げ、片方が押し戻す綱引きになり、外から見た像はかえって定まらなくなる。分けるなら、乗ってよい範囲の共有が前提になる。