ドライバー
購買や選好といった行動を後押しする要因を指し、何が態度や決定を動かすのかを特定する視点。
意味
ドライバーとは、購買や好意といった特定の反応を引き起こす原動力となる要因を指す。価格・品質・信頼・使い勝手など、何が選択を最も強く後押ししているのかを見極める際に用いられる概念である。
多くの要因が絡む中で、どれが結果に効いているかを切り分ける点に意味がある。効いている要因に資源を集中させ、効いていない要因への過剰な投資を避ける判断につながる。
成り立ち
購買行動の分析実務の中で、結果を左右する主要因を特定する視点として用いられてきた。多変数の中から寄与の大きい要因を抽出する統計的な手法とともに語られることも多い。
ドライバーとインサイトの違い
ドライバーは、何が結果を動かしているかという要因の特定であり、多くは数量的に取り出される。インサイトは、なぜそう動くのかという理由の発見にあたり、言葉として取り出される。前者は効いている場所を指し、後者はそこで何が起きているかを説明する。
順序で言えば、要因が先に見つかり、理由が後から埋まる。ただし要因だけを握って施策に進むと、効いている項目を強めるだけの単調な打ち手になりやすい。なぜ効いているのかが分かって初めて、同じ効き目を別の形で生む案が出てくる。要因の一覧だけを眺めていても、新しい打ち手は出てこない。
インサイトの項へ →ドライバーと態度変容の違い
態度変容は、受け手の側で起きた変化そのものを指す。ドライバーは、その変化を引き起こした要因の側を指す。同じ現象を、結果として見るか原因として見るかの違いであり、原因と結果を同じ表に並べると因果の向きが分からなくなる。向きを確かめずに並べると、読み違えが生じる。
取り違えは、調査の解釈で表面化する。よく買う人ほど自社を好意的に評価するのは当然だが、それを好意が購買を生んだと読むか、購買が好意を育てたと読むかで打ち手は逆になる。効いている要因を語る前に、時間の前後関係が確かめられているかを問う必要がある。
態度変容の項へ →使いどころ
満足度や選好の調査で、どの要素が評価を最も動かしているかを見極める際に用いられる。相関を因果と取り違えないよう、要因の解釈には慎重さが求められる。
実務でのチェックポイント
- 自社が重要だと考えている要素と、顧客の評価を実際に動かしている要素を並べ、順位がどれだけ食い違っているかを確かめる。順位のずれが大きいほど、社内の思い込みが判断を歪めている。
- 評価を押し上げる要素と、欠けたときに一気に不満を生む要素を分けて書き出す。同じ扱いにすると、守りの投資が過小になる。両者は同じ表に並べない。
- 要因として挙がった項目のうち、自社が実際に動かせるものがどれかを仕分ける。動かせない条件が上位に並ぶなら、打ち手の議論には使えない。
- 選ばなかった相手に何が決め手だったかを尋ね、既存顧客から得た要因と一致するかを見る。買った人だけを見ると要因は偏る。失注の記録が同じ形式で残っているかも確かめる。
よくある誤解
評価との関係が強く出た項目を、そのまま伸ばすべき項目として受け取ってしまう例が多い。だが誰もが当然と考える条件は、満たされていても評価を押し上げないのに、欠けると一気に評価を落とす。関係の強さだけを見て順位をつけると、守るべき土台と、伸ばして差がつく要素が同じ棚に混ざる。守りの投資と、差をつける投資は別の棚に置くことになる。
本人が挙げる理由を要因そのものと見なす扱いも起きやすい。人は選んだ後に理由を組み立てるため、語られる理由は説明として整っている一方、実際に選択を分けた条件とはずれることがある。語られた理由と、行動の差から読み取れる要因は、別の欄に分けて突き合わせる対象になる。語られた理由は、突き合わせるための材料の一つとして扱う。
よくある質問
ドライバーは調査をしないと分かりませんか?
大規模な調査がなくても手がかりは取れる。商談で価格の話に移る前に何が決め手になったか、解約の連絡で最初に挙がる理由は何かといった記録を、同じ形式で溜めるだけでも偏りは見えてくる。精度は落ちるが、社内の思い込みを崩す用途には十分に働く。精度より、社内の偏りを崩す用途に向く。
要因が複数あるとき、どれから手をつけるべきですか?
効き目の大きさと、自社が動かせるかどうかの二つで絞ることになる。効いていても手が届かない条件は、当面は前提として扱うほかない。効き目が中程度でも自社の判断で変えられる要素のほうが、同じ期間で結果につながりやすい。手が届く範囲から順に着手すると、同じ期間でも結果につながりやすい。
顧客が挙げる理由はどこまで信じてよいですか?
何を気にしているかの手がかりとしては信じてよいが、選択を分けた条件としては裏づけが要る。語られる理由は本人にとって説明しやすい形に整っているため、実際の判断とずれる。行動の記録と突き合わせて、両方に現れる項目を優先して扱うと外しにくい。両方に現れない項目は、扱いを保留する。