知覚マップ
二つの評価軸上に競合やブランドを配置し、市場での位置関係を視覚化する分析図を指す。
意味
知覚マップとは、価格と品質、伝統と革新といった対になる評価軸を縦横にとり、そこに自社と競合を配置して、消費者の頭の中での相対的な位置を可視化する図である。ポジショニングの検討でよく用いられる。
重要なのは、軸が実際の性能ではなく受け手の知覚に基づく点にある。空白の領域が見つかれば差別化の余地を示唆し、密集した領域は競争の激しさを表す。軸の選び方そのものが分析の質を左右する。
成り立ち
ポジショニング論の広がりとともに、ブランド間の相対関係を平面上に整理する道具として定着した。調査データを基に軸を設定する定量的な作図も行われる。
知覚マップとポジショニングマップの違い
ポジショニングマップは、どの位置を狙うかを検討するために作り手が軸を選んで描く図である。知覚マップは、受け手が実際にどう捉えているかを軸に置く。呼び分けが厳密でない場面も多いが、軸の出どころが違う点を意識すると使い分けがはっきりする。
実務での違いは、軸を決める根拠に表れる。狙いを議論するための図なら軸は仮説でよいが、知覚を写し取るつもりなら、その軸で顧客が比べているという裏づけが要る。同じ形の図でも、根拠のない軸で描いた瞬間に写し取ったものではなくなる。
ポジショニングマップの項へ →知覚マップとポジショニングの違い
ポジショニングは顧客の頭の中に成立した位置そのもので、知覚マップはそれを見取り図にした道具である。図の上で空いた場所を見つけたことと、そこに席を得たことはまったく別の話になる。図は判断の材料であって結果ではない。
使うときの注意は、図が現在を写しているのか、これから狙う位置を描いているのかを区別することにある。現状の把握と目標を一枚に重ねてしまうと、どこまでが事実でどこからが願望なのかが読めなくなり、議論も噛み合わなくなる。
ポジショニングの項へ →使いどころ
新規参入や再定義の際に、競合がどこに位置し、どこが手薄かを見極める目的で作成される。軸の妥当性を吟味しないまま作図すると、都合のよい空白を見つけたつもりになりやすい点に注意したい。
実務でのチェックポイント
- 図に引いた二つの軸が、顧客が比較のときに実際に口にした言葉から取れているか確かめる。社内の用語だけで作られていないかを見る。
- 同じ顔ぶれで軸だけを差し替えた図をもう一枚描く。配置が大きく変わるなら、最初の図の結論は軸の選び方に依存している。
- 図に載せた競合が、顧客が実際に併せて検討している相手と一致しているかを商談の記録で確かめる。
- 空白の領域について、そこに誰も置かれていない理由を一つ挙げる。説明できないなら、機会ではなく需要のない場所である可能性が残る。
よくある誤解
二つの軸で描けたことを、市場が二つの軸で見られていることの証明と受け取ってしまう誤解がある。顧客が実際に比べる観点は二つに収まらず、平面へ落とした時点で多くが捨てられている。図が単純に見えるのは市場が単純だからではなく、切り落とした結果である。
軸を選ぶ手が自社の内側にある以上、自社が上位に来る図は意図せずとも描けてしまう。価格と品質のどちらを縦に取るかを変えるだけで、隣り合う競合の顔ぶれは入れ替わる。空白を見つけたときに問われるのは、そこに誰も来ていない理由を言葉にできるかである。需要がないから空いている領域と、まだ誰も気づいていない領域は、図の上では同じ余白に見える。
よくある質問
知覚マップの軸はどう選べばよいですか?
顧客が選ぶときに実際に迷う観点から取る。社内で強みだと考えている点を軸にすると、配置は自社に有利になるが判断には使えない。商談や口コミで比較の言葉として出てくる観点を集め、その中で自社と競合が分かれるものを選ぶ順序になる。
軸は必ず二つでなければいけませんか?
二つに限られないが、平面に描くなら二つになる。それ以上の観点を扱いたい場合は、複数の図に分けるか、どの二つが判断に効くのかを絞ることになる。無理に一枚へ詰め込むと、読み取れる情報はかえって減っていく。
競合はどこまで載せるべきですか?
自社が入っている比較の場に実際に出てくる相手までになる。同じ業種というだけで並べると、顧客が比べていない相手が図を埋め、空白の見え方まで変わってしまう。異業種でも同じ場面で検討されているなら、載せる理由がある。