両面提示
利点だけでなく欠点や制約もあわせて伝える訴求のしかた。長所のみを述べる片面提示と対をなす。
意味
両面提示とは、商品や主張の利点だけでなく、欠点や制約もあわせて伝える訴求のしかたを指す。良い面ばかりを並べる片面提示と対をなす考え方である。
あえて弱点にも触れることで、受け手に「隠していない」という印象を与え、かえって信頼を得られる場合があるとされる。とりわけ、相手が批判的な情報にすでに触れているときに有効とされることが多い。
ブランドの観点では、誠実な情報提供の姿勢そのものが人格の表現になる。都合の悪い点を認める語り口が、長期的な信頼の土台を築くことがある。
成り立ち
説得的コミュニケーションの研究において、長所のみを述べる片面提示と、短所も併せる両面提示を比較する枠組みとして整理されてきた。受け手や状況によって効果が変わる点が論じられている。
両面提示と透明性の違い
ブランドの透明性は、情報を開示する姿勢そのものを指す。両面提示は、一つのメッセージの組み立て方を指す技法にあたる。姿勢と手法という関係にあり、開示の姿勢がないまま技法だけを使えば、選び抜かれた短所だけを見せる形になる。
見分けの手がかりは、伝える短所を誰が選んだかにある。都合の悪い事実のうち影響の小さいものだけを差し出すのは技法の運用であって開示ではない。相手が知れば判断が変わる事実が含まれているかどうかが、姿勢の側に立つ問いになる。
透明性の項へ →両面提示とUSP(ユニークセリングプロポジション)の違い
USPは、他社にない一点を絞り込んで押し出す考え方である。両面提示は、押し出す内容に加えて欠点も並べる伝え方を指す。前者は何を言うかの選択、後者はどう組み立てるかの選択であり、片方を選んでももう片方は成り立つ。
混同が起きるのは、短所に触れることが訴求の弱さだと受け取られる場面である。強みを一点に絞ることと、その強みが効かない条件を明示することは矛盾しない。むしろ条件を示すほど、絞った一点がどこで効くのかは伝わりやすくなる。
USP(ユニークセリングプロポジション)の項へ →使いどころ
受け手が懐疑的な場面や、比較検討が進んでいる相手への訴求で選ばれることがある。長所だけを並べる片面提示との使い分けが判断の焦点になる。
実務でのチェックポイント
- 自社の説明資料に、向いていない条件や使えない場面の記述があるかを確かめる。一つもないなら片面だけの構成になっている。
- 商談で必ず出る不利な質問を三つ挙げ、そのうち何個を自分から先に伝えているかを数える。
- 挙げている短所が、相手の判断を実際に変える種類のものかを確かめる。影響しない短所は演出にしかならない。
- 契約の後に「聞いていない」と言われた事柄を集める。それが本来、先に伝えておくべきだった短所になる。
よくある誤解
短所を挙げれば信頼される、という単純な読み替えが起きやすい。並べる短所が相手の判断に関わらないものであれば、誠実さの演出として受け取られ、かえって身構えられる。効くのは、相手がすでに気にしている点や、後で必ず分かる点に先に触れた場合に限られる。
もう一つは、あらゆる場面で両面提示のほうが良いという扱いである。相手がまだ関心を持っていない段階で制約を並べれば、検討に入る前に候補から外れる。相手が比較の途中にいるのか、まだ知らない段階なのかによって、触れる順序も量も変わってくる。
よくある質問
短所を伝えると受注が減りませんか?
目先の件数は減ることがある。ただし減る分にはそもそも合っていない相手が含まれ、その相手は受注しても解約や不満として戻ってくる。件数だけでなく、受注した後に生じる負担まで含めて比べると、判断は変わることが多い。
どんな短所を伝えればよいですか?
相手が後で必ず気づく点を優先する。使い始めてから分かる制約や、他社と比べれば見えてしまう差は、先に触れておくほど信頼の材料になる。逆に、知られないまま終わる可能性が高い欠点をあえて並べても、相手の判断の助けにはならない。
広告でも両面提示は使えますか?
使えるが、短い接触では扱いにくい。制約を伝えるには前提の説明が要り、それを省くと欠点だけが印象に残る。短所に触れる形は、比較検討の段階で読まれる資料や、説明の時間が取れる場面のほうが機能しやすい。