リレーションシップマーケティング
個々の取引ではなく顧客との長期的な関係の構築に重きを置くマーケティングの考え方。
意味
リレーションシップマーケティングとは、一回ごとの取引の成立ではなく、顧客との長く続く関係の構築に重きを置く考え方を指す。売って終わりではなく、関係を深めながら価値を積み上げる姿勢である。
背景には、新規獲得を繰り返すより既存の関係を育てるほうが持続的だという見方がある。継続・維持・信頼といった要素が中心に据えられる。
ブランドの観点では、この発想はブランドロイヤルティの醸成と重なる。一貫した関わりの積み重ねが愛着を育て、選ばれ続ける基盤になる。
成り立ち
取引の一回性を重視する見方への対比として、関係の継続を軸に据える潮流のなかで論じられてきた。関係性を重視するマーケティングの総称として用いられる。
リレーションシップマーケティングとワントゥワンマーケティングの違い
ワントゥワンマーケティングは、一人ひとりに合わせて内容を変える手法を指す。リレーションシップマーケティングは、関係を長く続けること自体を目的に置く方針を指す。手法と方針という関係にあり、個別化しても関係が続かない運用はあり得る。
取り違えると、個別化の仕組みを入れた時点で関係を築いたと見なしてしまう。相手ごとに表示や文面を変えても、送っている中身が売り込みだけなら、関係は取引の連続にとどまる。何を個別化しているのかが、二つを分ける手がかりになる。
ワントゥワンマーケティングの項へ →リレーションシップマーケティングとダイレクトマーケティングの違い
ダイレクトマーケティングは、相手に直接働きかけて反応を得る手法で、成果はそのつどの反応で締められる。リレーションシップマーケティングは、反応の有無より関係が続いているかを見る。成果の締め方が、一回ごとか時間をまたぐかで違う。
同じ手紙やメールを使っていても、立っている側は分かれる。今回の反応率で良し悪しを決めるなら前者の運用にあり、この接触が次の取引までにどう効くかを問うなら後者になる。使う道具ではなく、何で成否を判定するかで区別される。
ダイレクトマーケティングの項へ →使いどころ
獲得偏重の施策への対比として、維持・育成を重視する方針を示すときに用いる。短期の取引最適化との立場の違いを踏まえて使われる。
実務でのチェックポイント
- 既存顧客へ送った連絡を古い順に並べ、販売や告知以外の用件で出したものに印をつける。印のない期間が長く続くなら、接点は請求と販促だけで成り立っている。
- 取引が続いている顧客に、他社へ変えない理由を尋ねる。手間や契約が理由なら、関係ではなく制約で続いている。
- 顧客からの連絡が、問題が起きたときだけに偏っていないかを見る。平時の往復がないなら関係は薄い。
- 担当者が変わった後も取引が続いているかを確かめる。個人につく関係か、会社につく関係かがそこで分かる。
よくある誤解
関係を重視するという方針が、接触回数を増やすことに置き換わりやすい。連絡の頻度を上げても、相手の側に用がなければ関係は深まらず、通知を切られる形で接点そのものを失う。増やす対象は回数ではなく、相手の側に生じる用のほうにある。
もう一つは、長く続いている取引を良い関係と見なしてしまう扱いである。他に選択肢がない、変える手間が大きいといった理由で続いている関係は、条件が変われば途切れる。続いた期間の長さは、関係の質を保証する材料にはならない。
よくある質問
リレーションシップマーケティングは会員制度を作ることですか?
制度は手段の一つで、それ自体が目的ではない。特典で囲う仕組みは取引の頻度を上げるが、特典が理由で続いている関係は、条件を下げた途端に離れる。制度を入れる前に、相手にとって続ける理由が何かを説明できるかが先に来る。
顧客数が多い場合でも成り立ちますか?
成り立つが、全員に同じ深さの関係を求めない前提が要る。関係の深さは相手の側の必要によって決まるため、深く関わりたい層とそうでない層を分け、後者には手間の少ない形を用意する。全員へ同じ濃さを届けようとすると続かない。
短期の売上目標とは両立しますか?
両立するが、評価の物差しを分ける必要がある。同じ施策を今期の反応率だけで測れば、関係を育てる性質の接触は常に見劣りする。期の数字で見る施策と、続き方で見る施策を別の欄に置き、それぞれ別の基準で判断する形になる。