メタファー
あるものを別のものになぞらえて意味を伝える比喩。ブランドの世界観や名づけ、表現の下敷きとして使われる。
意味
メタファーとは、あるものを別のものになぞらえることで、直接には言い表しにくい意味や感覚を伝える比喩の一種である。「〜のようだ」と明示せずに重ね合わせる点に特徴がある。
ブランドの表現では、名づけや世界観づくりの下敷きとしてメタファーが用いられることが多い。抽象的な価値を身近なイメージに託すことで、伝わりにくい約束を直感的に感じ取ってもらう助けとなる。
成り立ち
「メタファー(metaphor)」は「移し替える」という意味のギリシャ語に由来し、修辞学において比喩の中心的な技法として論じられてきた。近年は言語学や認知科学の分野で、人が概念を理解する枠組みそのものとしても捉えられている。
メタファーとコンセプトの違い
コンセプトは、何を提供し何を目指すのかという中身の定めであり、メタファーは、その中身を伝えるために別のものへ託す表現の技法である。前者は決めごと、後者は伝え方にあたる。良い比喩が見つかったことと、伝えるべき中身が定まったことは別に扱う。
順序を取り違えると、比喩のほうが先に立つ。魅力的な言い回しから出発すると、その比喩が背負える意味の範囲に中身のほうが引きずられ、本来伝えたい約束から外れていく。比喩を採るかどうかは、決めた中身を損なわずに運べるかで判断する対象になる。
コンセプトの項へ →メタファーとストーリーテリングの違い
ストーリーテリングは、時間の流れと出来事の連なりによって意味を伝える方法であり、メタファーは、あるものを別のものに重ねることで一息に意味を渡す方法である。前者は順を追って理解させ、後者は瞬間的に感じ取らせる。読み手にかかる時間の長さが違う。
使い分けの目安は、伝えたい相手がどれだけ聞く姿勢でいるかにある。読み進めてもらえる場面では物語が効くが、一瞬しか目に触れない接点では、重ねる一語のほうが残る。同じ約束を伝える場合でも、接点の長さに応じて手法を選ぶことになる。
ストーリーテリングの項へ →使いどころ
「メタファーを用いて世界観を示す」といった形で、抽象的な価値を具体的なイメージに託す文脈で用いられる。名づけやコンセプト表現の下敷きとして語られることが多い。
実務でのチェックポイント
- 使っている比喩を、その領域に馴染みのない相手に見せ、何を思い浮かべたかを聞く。作り手の意図と違うものが出てくるなら、渡っていない。
- 重ねた対象が持つ性質を、良し悪しを問わず書き出してみる。伝えたくない性質まで一緒に運ばれていないかを、選んだ段階で確かめる。
- 比喩を外した状態で同じ内容を一文で言えるかを試す。言えないなら、比喩が中身の不足を覆っている可能性がある。
- その比喩が何年先まで通じるかを考える。時期に依存した題材を重ねている場合、古びたときに言い換える手間が残る。
よくある誤解
比喩は分かりやすいものだ、と見込まれがちである。だが重ねる先の像が受け手のなかに無ければ、意味は渡らず言葉の見栄えだけが残る。作り手にとって鮮やかな連想ほど、その分野に馴染みのない相手には遠い。会議室で受けのよかったたとえこそ、外の人に一度そのまま話してみる値打ちがある。
もう一つは、比喩が持ち込む余分な連想を見落とす扱いである。あるものになぞらえた瞬間、そのものが持つ別の性質まで一緒に運ばれる。伝えたい面だけを切り取って渡すことはできないため、重ねた先に不都合な連想が含まれていないかを、選ぶ段階で確かめる作業が要る。
よくある質問
メタファーは使わないほうがよい場面はありますか?
誤解が実害につながる場面では避けるほうがよい。安全や条件、料金といった正確さが求められる説明では、比喩が生む幅がそのまま食い違いになる。比喩が向くのは、正確さより感覚を渡したい場面で、同じ資料の中でも記述の役割によって使う場所を分けることになる。
良いメタファーはどうやって見つけますか?
先に伝えたい中身を一文に絞り、その一文が持つ性質と重なる対象を探す順序になる。思いついた比喩から出発すると、当てはまりのよさを後付けで説明することになりやすい。候補を複数並べ、余分な連想が少ないものを残していく作業が中心になる。
ネーミングにメタファーを使うときは何に気をつけますか?
長く使う前提で選ぶ点に尽きる。名前は簡単には変えられないため、その比喩が事業の範囲を狭めないか、将来扱う領域を外していないかを先に確かめることになる。今の商品によく合う比喩ほど、事業が広がった際に名前のほうが足かせになりやすい。