インバウンドマーケティング
有益な情報を通じて顧客に見つけてもらい、自発的な接触を促す考え方。
意味
インバウンドマーケティングとは、企業側から一方的に売り込むのではなく、顧客にとって有益な情報を提供し「見つけてもらう」ことを通じて、自発的な接触や関係構築を促す考え方である。検索や記事、コンテンツなどが主要な入口となる。
電話や広告で相手の注意を割り込んで獲得する押し出し型(アウトバウンド)と対比される。信頼と役立ちを積み重ねて引き寄せる姿勢を基本とし、短期の刈り取りより、検討中の顧客に選ばれる土壌づくりを重視する点に特徴がある。
成り立ち
英語 inbound(内向き・入ってくる)に由来し、顧客の側から近づいてくる流れを設計するという含意を持つ。検索エンジンやコンテンツを通じた情報探索が一般化したことを背景に、押し出し型の限界を補う発想として広まった。
インバウンドマーケティングとコンテンツマーケティングの違い
コンテンツマーケティングは、有益な情報を作って届ける手法そのものを指す。インバウンドマーケティングは、顧客の側から近づいてくる流れをどう設計するかという考え方であり、コンテンツはその中で用いられる主要な手段の一つにあたる。
切り分けたいときは、扱う範囲を問うとよい。コンテンツの制作だけを増やしても、見つけられる導線や、関心を持った人の受け皿がなければ流れは完成しない。手段の側だけを担当が持ち、設計の側を誰も持っていない状態は、記事は増えるのに問い合わせが動かない形で表れる。
コンテンツマーケティングの項へ →インバウンドマーケティングとオーガニックの違い
オーガニックという語が区分しているのは、費用を払わずに得られた到達という結果の側である。一方でインバウンドマーケティングが指すのは、その到達が生まれる状態を意図してつくりにいく設計の思想である。横に並べて比べる関係にはなく、後者が働いているかどうかが前者の数字として遅れて表れる、という位置にある。
取り違えると、費用をかけないこと自体が目的になる。インバウンドの設計であっても、見つけてもらう入口を確保するために広告を併用することはあり、費用の有無は本質的な区別ではない。分けるべきなのは、押し込むか、見つけられる状態をつくるかという姿勢の側になる。
オーガニックの項へ →使いどころ
検討期間が長い商材や、情報探索が購買を左右する領域で採用されやすい。有益なコンテンツの継続的な提供と、見つけられるための設計が前提となり、成果が現れるまで時間を要する点を織り込んだ運用が求められる。
実務でのチェックポイント
- 問い合わせが来た相手に、何を調べていて自社に行き着いたかを聞き、その入口を記録する。
- 公開しているコンテンツを検討の初期向けと比較段階向けに仕分け、偏りがないかを見る。
- 記事を読み終えた人が、次に何をすればよいか迷わず動ける手がかりを各ページの末尾に置く。資料も事例も相談の入口もない記事は、見つけてもらえても関係の入口にならない。
- 成果を評価する期間が、実際に効き始めるまでの期間と噛み合っているかを社内で確認する。
よくある誤解
売り込まない手法だから労力が軽い、という受け取り方が生じやすい。実際には、有益と判断される情報を継続して出し続ける負荷は小さくなく、しかも成果が現れるまでの期間が長い。短期の目標と同じ物差しで評価すると、効き始める前に打ち切られることになる。
もう一つは、記事や資料の本数を成果の代わりに置いてしまう扱いである。本数は自社の作業量であって、見つけられたかどうかは相手の行動の側にある。作業量が積み上がっているのに問い合わせが動かない期間が続くなら、増やす前に、何を探している人へ届いているのかを確かめる段になる。
よくある質問
インバウンドだけで成果は出ますか?
出る場合もあるが、立ち上がりの遅さを許容できるかによる。見つけられる状態が育つまでは接点が少ないため、その間の商談をどう確保するかを別に用意しておく必要がある。全面的に切り替えるより、効き始めるまでの期間を他の手段で埋める設計になる。
どのくらいの期間で効果が出ますか?
期間で区切るより、順に現れる兆候で見るほうが確かめやすい。まず特定の話題での流入が増え、次に問い合わせの内容が具体的になり、最後に件数が動く。件数だけを最初から追うと、手前の変化が起きていても効いていないと判断してしまう。
BtoBに向いていますか?
検討の期間が長く、担当者が自分で情報を集める領域とは相性がよい。決裁までに社内を説得する材料が必要になるため、その材料になる情報を出しておくと、こちらが同席しない場面でも検討が進む。逆に、比較検討がほとんど生じない商材では効きにくい。