か
体験

共感

Empathy

相手の立場や感情を自らのこととして感じ取ること。顧客理解とブランドへの結びつきの基盤。

意味

共感とは、相手の立場や感情を自らのこととして感じ取ることを指す。ブランドの文脈では、顧客が抱える状況や気持ちを企業の側が理解しようとする姿勢と、顧客がブランドに対して抱く親しみや結びつきの両面で語られる。

顧客理解の場面では、共感は表面的な要望の背後にある感情や動機に目を向ける手がかりになる。何を求めているかだけでなく、なぜそう感じるのかを捉えることで、的を射た提案につながりやすくなる。

また、ブランドが顧客の気持ちに寄り添う姿勢を示すと、顧客の側にも共感が生まれ、関係が深まることがある。共感は一方向ではなく、互いに育ち合う性質を持つ。

成り立ち

共感(empathy)は「相手の内面を自らのうちに感じ取る」ことを意味する語で、心理学の領域から広く使われるようになった。

顧客の内面を起点に発想する設計や調査の考え方が広まる中で、ブランドと顧客の関係を語るうえでの基盤的な概念として位置づけられるようになった。

共感とインサイトの違い

インサイトは行動の背後にある動機を言い当てた発見で、共感はその動機に触れようとする姿勢や、触れたときに生じる感情の動きである。前者は成果物として書き残せるが、後者は書き残せない。調査の結論の欄に並ぶのはインサイトの側になる。

順序としては共感が手前にある。相手の状況を自分のこととして受け取れていなければ、発言の裏側にある動機には届かない。ただし共感だけでは判断材料にならないため、感じ取ったものを他人が使える形の言葉へ移す作業が後ろに続く。

インサイトの項へ →

共感とエンパシーマップの違い

エンパシーマップは、対象者が何を見聞きし、何を感じているかを枠に沿って書き出す道具である。共感はその作業を通じて生まれることもあるが、枠を埋めたことが共感の証拠になるわけではない。道具を使ったことと、理解に届いたことは別に扱う必要がある。

見分けの目安は、書いた内容が対象者と会った経験に基づいているかにある。会わずに埋めた枠は、社内の想像を整えた図であって、相手の側からは何も来ていない。図の精度より、どこまでが観察でどこからが推測かの区別のほうが実務では効く。

エンパシーマップの項へ →

使いどころ

共感は、顧客の状況や感情を起点にブランドの姿勢や提案を組み立てる場面で用いられる。何を感じているかを理解の中心に据える。

カスタマージャーニーやサービスデザインの取り組みと結び付けると、各接点で顧客の気持ちに寄り添う設計につなげやすくなる。

実務でのチェックポイント

  • 制作や開発の担当者が、直近半年で顧客と直接話した回数を数える。ゼロなら、理解は伝聞に頼っている。
  • 顧客の発言をそのまま書き取った記録が残っているかを確かめる。要約しか残っていないなら、感情の部分は落ちている。
  • 顧客が困っている場面を、自社の担当者が自分で体験したことがあるかを確認する。
  • 調査の報告に、都合の悪い発言が含まれているかを見る。良い声だけが残っているなら、途中で選別が入っている。

よくある誤解

共感を、相手の言うことに同意することだと捉える誤解が起きやすい。要望をそのまま受け入れる姿勢は同調であって、なぜそう求めるのかを理解する作業とは別になる。理解した上で相手の想定とは違う解を出すことも共感の範囲に含まれ、一致することが目的ではない。

共感は担当者の資質の問題だ、と個人に帰される場合もある。実際には、顧客と直接会う機会がどれだけ仕事の中に組み込まれているかという仕組みの問題であることが多い。会う機会のない職種の人が理解しきれないのは、姿勢ではなく接点の不足から来ている。

よくある質問

共感と同情はどう違いますか?

立ち位置が違う。同情は相手の外側から気の毒に思う姿勢で、上下の関係を含みやすい。共感は相手の内側に立って同じ景色を見ようとする姿勢で、対等の関係に近い。顧客理解で必要になるのは後者で、前者に寄ると、相手を助けられる側と見なす見立てになる。

調査をしないと共感はできませんか?

形式ばった調査でなくても、直接会う機会があれば足りる場面は多い。問い合わせへの応対に同席する、使っている現場を見に行くといった接触でも、資料からは得られない情報が入る。必要なのは方法の厳密さより、間に人を挟まずに接する回数になる。

BtoBでも共感は必要ですか?

必要になる。組織として買う場面でも判断するのは個人で、社内で説明する負担や、失敗したときの立場といった事情を抱えている。表向きの要件だけを見ていると、なぜ話が進まないのかが分からなくなる。相手の社内での立場まで含めて理解の対象になる。

この項目は、ブランディング支援会社 Highlite Inc. 編集部が執筆・監修しています。
← 用語集の一覧へ