デザイン経営宣言
経済産業省・特許庁が2018年に公表した、デザインを重要な経営資源と位置づける方針を示した報告書を指す。
意味
デザイン経営宣言とは、2018年5月に経済産業省・特許庁が公表した「『デザイン経営』宣言」を指す。デザインを企業価値向上のための重要な経営資源と位置づけ、ブランド構築力とイノベーション力を高めるものとして提示した文書である。
この宣言はデザインを一部の専門領域の話にとどめず、経営全体で取り組むべき投資対象として整理した点に特徴がある。以後、企業や行政の文書でデザインを経営課題として語る際の共通の参照点となっている。
成り立ち
本宣言は経済産業省・特許庁が設置した研究会の議論を経て、2018年5月にとりまとめられ公表された。デザインへの投資が企業の競争力にどう結びつくかを政策的に位置づけた点で、実在の公的文書として参照される。
デザイン経営宣言とデザイン経営の違い
一方は公表された一つの文書を指し、もう一方はその文書が説いた考え方と実務そのものを指す。デザイン経営宣言は引用できるが、引用した事実だけでは何も動かない。方針書の冒頭に宣言の一節が置かれていることと、投資や人事の決裁が実際に変わっていることの間には、まだ距離がある。
見分けの目安は、社内で名前が出るときの使われ方にある。方針の根拠として引いているのか、自社で決めるべき内容の代わりに置いているのか。文書の権威で説得が済んでいるなら、自社の事業に翻訳する工程が抜け落ちている。
デザイン経営の項へ →デザイン経営宣言とデザインラダーの違い
デザインラダーは、企業がデザインをどの段階で扱っているかを見立てる物差しである。宣言は向かう方向を示した文書にあたる。現在地を測る道具と、方向を示す旗印という違いがあり、片方だけでは着手する順番が決まらない。
実務では両方が要る。方針を掲げても、いま自社がどの段階にいるかが分からなければ、何から手を付けるかは選べない。逆に段階だけを診ても、そこから先に進む理由は自社で用意することになる。診断と方針は別々の作業として置く。
デザインラダーの項へ →使いどころ
「デザイン経営宣言を踏まえ、デザイン投資の方針を定める」のように、方針や施策の根拠として引用される。宣言自体は特定企業の主張ではなく、公的な提言として扱われる。
実務でのチェックポイント
- 宣言を引いた社内資料が、自社の事業の言葉に翻訳されているか確かめる。原文の要約のままなら、方針としては働かない。
- 掲げた方針に対して、来期の資源配分がどう変わるかを一行で書けるか試す。書けないなら、引用の段階に留まっている。
- 新たに設けた役職や部署が、実際にどの決定に関与したかを具体例で挙げる。挙げられないなら形だけになっている。
- 自社で使うデザインという語の範囲を定義しているか見る。範囲が曖昧なままだと、投資の対象も評価の物差しも定まらない。
よくある誤解
公的な文書があること自体を、デザインへの投資が正当化された証拠として扱う使い方がある。示されているのは一般的な方向であって、自社のどの投資がどの成果につながるかまでは書かれていない。根拠として引くのは構わないが、社内の説明はその先を自分で埋める作業から始まることになる。
書かれた要件を満たすこと自体が目的になる運用も起きやすい。体制や役職を形として揃えても、判断の流れが変わらなければ実態は動かない。整えた形が実際にどの決定を変えたのかを記録する欄を持たないと、対応が完了したという報告だけが残り、次に何をするかが決まらない。
よくある質問
デザイン経営宣言に従う義務はありますか?
方向を示す提言であり、企業に何かを課す規制とは性質が違う。したがって守る守らないという読み方は合わない。使い道は、社内で議論を始めるときの共通の土台を借りることにある。義務として読むと形式を整える作業になり、参照点として読むと自社の判断を作る作業になる。
宣言の内容を自社にどう当てはめればよいですか?
全体を写すのではなく、今の自社で欠けている一点を選ぶところから始まる。判断の場に設計の視点が届いていないのか、資源が単発の費用としてしか動いていないのか、担い手が孤立しているのか。どこが詰まっているかを先に特定すれば、引用すべき箇所も自然に絞られる。
宣言を知らないと不利になりますか?
知らないこと自体が不利になるわけではないが、社外と話す際の共通語として通じる場面はある。取引先や支援機関との議論で、デザインを経営の議題として扱う前提が省ける分だけ話が早い。中身を知らずに名前だけ使うほうが、かえって噛み合わない結果になりやすい。