CDO(チーフ・デザイン・オフィサー)
デザインを経営レベルで統括する役員職。事業やブランドに関わる設計判断を経営会議の場に接続する役割を担う。
意味
CDOとは、Chief Design Officer の略で、デザインに関する意思決定を経営の最上位で束ねる役員を指す。個別の制作を管理するのではなく、デザインの視点を経営の議論に持ち込み、資源配分や事業方針に反映させることを職務とする。
この役職は、デザインが経営から切り離されがちだった状態を是正する装置として語られることが多い。デザインを担う組織と経営層を結ぶ結節点に人を置くことで、判断の一貫性と速さを保とうとする。
成り立ち
経営陣に専門領域の責任者を置く発想は、財務のCFOや技術のCTOなどと同じ系譜にある。デザイン経営宣言の議論のなかでも、デザイン責任者を経営に関与させることの重要性が論点として挙げられた。
CDO(チーフ・デザイン・オフィサー)とデザイン組織の違い
デザイン組織は機能と人の集まりを指し、CDOは判断の権限を持つ一つの席を指す。組織を整えても、経営の議論に加わる席がなければ判断は上まで届かない。逆に席だけを設けても、支える機能がなければ、その人個人の力量に成否が委ねられる。
不足しているのがどちらかは、案件が止まる位置に現れる。仕上がりの粗さや納期の遅れが続くなら、手を動かす部門の体制を厚くする話になる。一方、社内で固めた案が経営会議で覆る、あるいは議題にすら載らないのであれば、足りないのは会議室の席のほうである。人を増やせば前者は動くが、後者は席が用意されない限り同じ場所で止まり続ける。
デザイン組織の項へ →CDO(チーフ・デザイン・オフィサー)とデザイン人材の違い
デザイン人材は担い手をどう確保し育てるかという話であり、CDOは判断がどう通るかという構造の話である。人を増やしても、判断の経路が変わらなければ、任せられる範囲は以前と同じままになる。
時間軸でも違う。席は決めれば設けられるが、人材は集まるまでにも育つまでにも時間がかかる。席を先に置いた場合は判断の根拠を作る人がいない状態が生まれ、人材だけを増やした場合は判断が届かない状態が続く。自社でどちらが詰まっているかが順序を決める。
デザイン人材の項へ →使いどころ
「CDOを設置し、デザインの視点を経営会議に常時反映させる」のように、組織体制を語る文脈で用いられる。呼称は企業により異なり、役割の実質で捉えるのが通例である。
実務でのチェックポイント
- その席にいる人が、事業の継続可否や価格の決定に関わっているかを確認する。制作物の承認だけなら実質は部門長にあたる。
- 経営会議の議事録をさかのぼり、その席からの発言がどの議題に紐づいているか拾い出す。ロゴや広告の見え方をめぐる議題にしか名前が出てこないなら、資源配分や事業方針の議論には届いていない。
- その判断が覆された事例を挙げ、覆した側の根拠を確認する。根拠が示されないまま覆るなら、権限は形の上だけになる。
- その席が空いたとき、誰がどの判断を引き継ぐかが決まっているか見る。決まっていないなら、個人に依存した体制になっている。
よくある誤解
役職名を置けばデザインが経営に関与するようになる、と考えられがちである。実際に効くのは、その席が何をどこまで決められるかと、決めた内容が覆される余地がどれだけあるかになる。名前だけの役職は、責任が集まる一方で権限が伴わないため、かえって判断を滞らせることさえある。
デザイン部門の管理職の呼び名を変えただけ、という形で運用される場合もある。管理している対象が制作物のままなら、経営会議に上がる議題は変わらない。役職の実質は、肩書きではなく、何について発言を求められているかで測られる。求められる範囲が表現に限られているなら、位置づけは以前と同じになる。
よくある質問
CDOを置けばデザイン経営になりますか?
席を設けることは条件の一つであって、それ自体が状態を作るわけではない。判断が割れたときに設計側の理屈が採られる余地があるか、資源の配分に関与できるかで実質は決まる。置いた後に何の決定が変わったかを追う欄がなければ、体制表が更新されただけで終わる。
他の役員が兼任してもよいですか?
兼任は成立するが、利害が衝突する場面での扱いを先に決めておく必要がある。短期の収益と、長く積み上げる一貫性がぶつかったとき、同じ人が両方を背負うと、期限の近い側が優先されやすい。誰かが反対側の立場から発言できる形になっているかが要点になる。
外部の人が務めることはできますか?
務められるが、決裁の範囲を明示しておかないと機能しにくい。外部の立場は既存の力関係から自由な反面、日々の判断の背景を持たないため、助言に留まりやすい。どの会議に常時出て、どの決定に署名するのかまで決めて初めて、席として働くことになる。