ベネフィット
製品の機能そのものではなく、それによって顧客が得られる便益や良い変化を指す概念。
意味
「何ができるか」ではなく「顧客がどう良くなるか」に焦点を当てる。
機能(フィーチャー)と対比され、選ばれる理由の核とされる。
成り立ち
顧客はドリルではなく穴を求める、という発想に象徴される考え方に連なる。
訴求設計で機能を便益へ翻訳する必要性から重視される。
ベネフィットとバリュープロポジションの違い
ベネフィットは顧客が得る良い変化そのものを指し、バリュープロポジションはその変化のうち、自社が提供でき他社が提供しにくいものを選び取った提案を指す。前者はいくつも列挙できるが、後者は絞られた一つに収まる。扱う数が違う点が最初の見分けになる。
順序でも切り分けられる。便益を洗い出す作業が手前にあり、そこから競合との比較を通して残った部分が提案になる。洗い出しただけでは提案にならないのは、同じ便益を他社も語れる場合があるためで、絞る工程を飛ばすと、正しいが選ぶ理由にならない言葉が残る。
バリュープロポジションの項へ →ベネフィットとUSP(ユニークセリングプロポジション)の違い
USPは他社にない独自の売りを一点に定める考え方で、ベネフィットは独自かどうかを問わず顧客側の得を指す。独自でない便益にも、伝えれば効くものはある。独自性を条件にすると、顧客が本当に求めている当たり前の便益を語れなくなることがある。
判別の軸は、誰と比べているかにある。USPは常に競合との比較のなかで成立し、ベネフィットは比較がなくても成立する。カテゴリー自体が知られていない段階では、まず何が得られるのかを語る必要があり、他社との違いを立てるのはその後に来る。
USP(ユニークセリングプロポジション)の項へ →使いどころ
機能を顧客価値へ言い換える場面で参照される。
訴求メッセージの中心に据える要素として扱われる。
実務でのチェックポイント
- 自社の主要な訴求文から、顧客の状態が変わる前と後を取り出せるか確かめる。取り出せないなら、まだ機能の説明にとどまっている。
- 同じ機能について、想定する顧客ごとに別々の便益を書き分けてみる。書き分けられないなら、相手の状況をまだ具体化できていない。
- 掲げた便益を競合の資料に置いてみて、そのまま成立するかを見る。成立してしまうなら、選ぶ理由としては働いていない言葉になっている。
- 顧客が実際に語った変化の言葉を集め、自社が掲げる便益と同じ語が出てくるかを照合する。自社の言い方に直さず、そのまま並べる。
よくある誤解
機能を言い換えれば便益になる、という手続きとして扱われがちである。実際には、同じ機能から引き出せる便益は相手によって違い、時間が浮くことが得になる人もいれば、失敗しないことが得になる人もいる。誰にとっての得かを固定しないまま言い換えると、当たり障りのない一般論に着地する。
情緒的な言い回しへ置き換える作業が、便益への翻訳と取り違えられることがある。「毎日が輝く」と書き足しても、その人の手元で何が減り、何ができるようになったのかは示されない。機能の記述には少なくとも事実が残るが、雰囲気だけの言い換えには何も残らない。使う前と使った後を並べ、手間・時間・不安のどれがどう動いたのかを書けたとき、初めてベネフィットの記述になる。
よくある質問
ベネフィットは機能より優先して伝えるべきですか?
相手が何を確かめたい段階にいるかで変わる。関心を持つ前は得られる変化のほうが入口になるが、比較検討に入った相手は、その変化が本当に起きるのかを機能で確かめようとする。どちらかを捨てるのではなく、置く順序と分量を段階に合わせることになる。
情緒的な便益と機能的な便益はどう使い分けますか?
両方を同時に書くより、どちらが購入の理由になっているかを先に見極める。手間が減る、失敗しないといった実利で選ばれている相手に情緒を重ねても決め手は増えない。逆に実利が横並びのカテゴリーでは、どう感じられるかが差になる。基準は比較のされ方にある。
BtoBでもベネフィットの考え方は使えますか?
使えるが、得をする相手が一人ではない点を織り込む必要がある。使う人にとっての得と、承認する人にとっての得は違い、前者が作業の楽さなら後者は説明のしやすさになることが多い。どちらか一方だけを語ると、検討の途中で話が止まりやすくなる。