アドボカシー
顧客が自発的にブランドを他者へ推奨・擁護する態度や行動を指す概念。
意味
アドボカシーとは、顧客が自らの意思でブランドを他者に薦めたり、批判に対して擁護したりする態度・行動を指す。単なる継続購入(ロイヤルティ)を超え、周囲への推奨という形で価値を外部へ広げる段階として位置づけられる。
推奨は広告と異なり、送り手の利害から独立した第三者の声として受け止められやすく、信頼の伝播に寄与する。アドボカシーは操作して生み出すものではなく、期待を超える体験や誠実な姿勢の結果として醸成される点が重視される。
成り立ち
英語 advocacy(擁護・支持)に由来し、マーケティングでは購買後の顧客行動を捉える文脈で用いられるようになった。推奨意向を測る指標や、顧客の推奨を起点にした関係設計への関心の高まりとともに広まった概念である。
アドボカシーとブランドロイヤルティの違い
ロイヤルティは選び続けるという自分に閉じた行動に表れ、アドボカシーは他人に薦めるという外向きの行動に表れる。前者は本人が満足すれば成り立つが、後者は薦めた相手の評価が自分に跳ね返るため、より高い確信が要る。背負うものが違う。
順序では継続が先に立つが、続けているからといって薦めるとは限らない。習慣で買い続けている状態と、人に説明できる理由を持っている状態は別になる。薦めない顧客が多いなら、満足はしていても言葉にできる理由が渡っていないことがある。
ブランドロイヤルティの項へ →アドボカシーと口コミの違い
口コミは伝わっている現象そのものを指し、アドボカシーは薦める側の態度に焦点を当てる。良い話も悪い話も口コミには含まれるが、アドボカシーは擁護や推奨という向きが定まっている。現象の広がりと、態度の向きという違いになる。
施策として扱うときの差も大きい。口コミは量として捉え、広がり方を追う対象になるが、アドボカシーは誰がなぜ薦めているのかという個別の理由に踏み込む対象になる。量を追う打ち手と、理由を確かめる打ち手は別の作業として並ぶ。
口コミの項へ →使いどころ
購入後の顧客が「薦めたくなるか」を関係設計の到達点として据える際に用いられる。推奨を促す仕組みだけでなく、そもそも推奨に値する体験を提供できているかを問う視点として、ロイヤルティ施策や口コミ設計の議論で参照される。
実務でのチェックポイント
- 紹介で来た顧客に、誰にどう説明されたかを尋ねる。使われた言葉が自社の説明と重なっているかを見る。
- 既存顧客に、薦めるとしたら誰に薦めるかを聞く。相手が具体的に浮かばないなら、薦めやすい形になっていない。
- 批判的な投稿や口コミに、顧客の側から反応が付いた例があるか探す。擁護が生まれる関係かどうかが分かる。
- 紹介に謝礼を付けている場合、謝礼を止めても紹介が続くかを見積もる。止まるなら仕組みで作られていた。
よくある誤解
紹介の仕組みや謝礼を用意すれば推奨が生まれる、という扱われ方が起きやすい。報酬を伴う推奨は、受け手の側からも利害が透けて見えるため、第三者の声としての強さを失う。仕組みが作れるのは推奨のきっかけまでで、薦めるに値する体験そのものは代替できない。
推奨する顧客を増やすことだけに目が向き、擁護という側面が抜け落ちやすい。批判が出たときに顧客の側から別の見方が示される状態は、薦める行為とはまた違う厚みになる。この厚みは、何も起きていない平時の関係の作り方でしか準備できない。
よくある質問
推奨してもらうにはどうすればよいですか?
薦める理由を顧客が言葉にできる状態を作ることが先になる。満足していても、他人へ説明する短い言い方が手元になければ薦めにくい。何が他と違うのかを顧客自身の言葉で語れているかを確かめ、足りないなら伝え方の側を整える形になる。
紹介制度は用意すべきですか?
きっかけを作る道具としては有効だが、動機の主役に据えないほうがよい。謝礼が理由の推奨は受け手にもそう伝わり、第三者の声としての効き目が下がる。制度は、すでに薦めたい人の手間を減らす位置に置くと無理が生じにくい。
悪い口コミが出たときはどう扱いますか?
打ち消すより、擁護が自然に生まれる関係があるかを見る機会として扱う。企業側の反論は利害が明らかなため受け止められにくいが、顧客の側から別の見方が出れば重みが違う。反応がまったくないなら、平時の関係の薄さが表れている。