— 01 —競合ロゴマッピングの型
やり方はシンプルだ。まず対象業界の主要プレイヤーを20社ほど選び、ロゴを一覧にする。次に二つの軸を決める。よく使うのは形状(幾何的か有機的か、シンボル型か文字型か)と色相(寒色か暖色か、彩度の高低)。この2軸の平面上に各社を配置していく。
配置しながら、業界の「記号法」を棚卸しする。金融は青が多い、食は暖色が多い、テック系は幾何的なシンボルが多い、といった慣習だ。これは良し悪しではなく、その業界で「らしさ」がどう記号化されているかの現状把握になる。
20社を並べ終えると、密集している領域と、ぽっかり空いた領域が見えてくる。この空白が、次の議論の起点になる。手順としては、社数を無理に増やすより、主要な競合と、あえて異業種の参照を数社混ぜると、業界の枠の外も見えてくる。
地図を見せた瞬間にクライアントが前のめりになる、あの感じが好きなんですよね。案の好き嫌いより、位置の話のほうが冷静に議論できる。
— 02 —似せるか、外すか
地図ができると、次は判断だ。業界慣習に乗るべき場面と、外すべき場面がある。乗るべきなのは、その記号が顧客の「安心」や「カテゴリ理解」に直結している場合。たとえば、そのジャンルだと一目で分からせたいときは、慣習に寄せたほうが伝わる。
外すべきなのは、その慣習に埋もれると差別化できず、かつブランドが「違い」を打ち出したい場合だ。ただし外すこと自体が目的化すると危うい。周りが青ばかりだから赤にする、という発想は、根拠が「目立ちたい」しかなく、後で説明に詰まる。
似せる・外すの判断基準は、奇抜さではなく整合性だ。慣習に乗るなら「顧客の理解を助けるため」、外すなら「このブランドの違いを表すため」と、理由が言えるか。理由が言えない差別化は、次の章で見るように、ただの奇抜さに落ちていく。
— 03 —空いている形は、ポジショニングの視覚版
「空いている形」は、実はマーケティングで言うポジショニングの視覚版だ。ポジショニングが「顧客の頭の中で、どの位置を取るか」の戦略なら、空いている形は「見た目の地図で、どの位置を取るか」の話になる。両者はつながっている。
だから重要なのは、空白を見つけたら「なぜそこが自社に合うのか」を戦略と接続することだ。空いているから取る、では弱い。そのブランドが約束する価値や、選ばれる理由が、その空白の位置と一致しているか。ここが合って初めて、視覚の差別化が戦略の差別化を運ぶことになる。
逆に、戦略の裏づけなく空白だけを狙うと、差別化は奇抜さに堕ちる。目立ちはするが、なぜその形なのかを誰も語れない。マッピングは差別化の材料を出してくれるが、どの空白を選ぶかは、ブランドのコアが決める。地図は問いを与え、答えは戦略が出す。
— 04 —収集はAI、意味の読み取りは人
ロゴの収集や、色相・形状での分類といった整理は、ツールやAIで速く進む(機能は執筆時点のもの)。数を集めて並べる手数は下げられる。一方で、「この空白は自社の戦略と合うか」という意味の読み取りは、人の判断が要る。地図を作るのは半自動化できても、地図をどう読むかは自動化しにくい。
経営者への提案でも、いきなり「案」を三つ見せるより、先に「地図」を見せたほうが議論が締まる。地図があると、なぜこの案なのかが位置で語れる。案だけだと好き嫌いの話になりやすいが、地図があると戦略の話に乗せられる。これは提案の説得力を大きく変える。
良いロゴ提案は、案を見せる前に地図を見せる。その地図がどの空白を選ぶかは、ポジショニングという戦略から導く。次は、その形を長持ちさせるブランドコアの話へ進みたい。
- 提案前に競合20社を形状×色相の2軸でマッピングし、空白を可視化する。
- 似せる/外すは奇抜さでなく『理由が言えるか』で判断する。
- 空いている形は戦略と接続してから選ぶ。空白だけで選ばない。
- クライアントには案の前に地図を見せ、位置で議論を締める。