ウォンツ
ニーズを満たすための具体的な手段や対象として顕在化した欲求。
意味
ウォンツとは、根源的な欠乏や必要(ニーズ)を満たすための、具体的な手段・対象として表れた欲求を指す。「喉が渇いた」がニーズなら、「あの飲料が欲しい」がウォンツにあたり、より具体的で対象が特定された状態を示す。
同じニーズであっても、それをどう満たそうとするかは人や文脈によって異なり、多様なウォンツとして現れる。ニーズとウォンツを区別することで、そもそも満たしたい本質は何かを見失わず、手段の提案に幅を持たせて考えることができる。
成り立ち
英語 wants(欲しいもの)に由来し、マーケティングの基礎概念としてニーズ・ウォンツ・需要を段階的に捉える枠組みの中で位置づけられてきた。人の求めるものを、抽象的な必要と具体的な欲求とに分けて理解する発想に基づく。
ウォンツとニーズの違い
ニーズは満たされていない状態そのものであり、ウォンツはそれを満たす手段として名指しされた対象である。前者は何が足りないかとして表され、後者は何が欲しいかとして表される。手段が変われば後者は入れ替わるが、前者は残り続ける。
実務での使い分けは、置き換えが効くかで見分けられる。別の手段を示したときに納得が得られるなら、その要望はウォンツであり、背後のニーズは別にある。どんな手段を出しても解消しないなら、そもそも捉えているニーズのほうがずれている。
ニーズの項へ →ウォンツとインサイトの違い
「あの飲料が欲しい」と口に出せるところまで具体化した欲求がウォンツであり、インサイトは理由を尋ねても言葉にならない動機を指す。両者は同じ人の中に同居していて、表明された手段の奥を掘っても、なぜその手段だったのかは当人からは返ってこない。語れる範囲の外側に洞察の対象がある。
順序としては、ウォンツは出発点の材料になる。なぜその手段を選ぼうとしたのかを重ねて問うことで、本人も意識していなかった前提が見えてくる。表明された欲求をそのまま実装すると、手段の改良にはなっても、選ばれる理由は変わらない。
インサイトの項へ →使いどころ
顧客の要望を額面どおりに受け取らず、その奥の本質的なニーズまで遡って理解する際の対概念として用いられる。表明されたウォンツにそのまま応えるだけでなく、背後のニーズを捉え直すことで、提案の方向性を広げる手がかりとなる。
実務でのチェックポイント
- 直近の要望を書き出し、それぞれについて別の手段でも満たせるかを一つずつ考えてみる。
- 顧客が挙げた機能要望について、それで何ができるようになるのかを本人の言葉で確かめる。
- 自社が満たしているニーズを一文で書き、競合が同じ文を書いても成り立つかを見る。
- 失注の理由が、手段の違いなのか、満たしたい状態の理解の差なのかを仕分ける。
よくある誤解
ニーズとウォンツの区別が、抽象と具体の言い換えとして扱われることがある。だが本質は、代わりがあるかどうかにある。ウォンツには代替があり、他社の手段に置き換えられる。ニーズには代替がなく、満たされるまで残り続ける。この違いを踏まえないと、要望の言い換え作業に終始する。
もう一つは、顧客の言うウォンツに応え続ければ関係が保たれるという見方である。名指しされた手段に忠実に応えるほど、同じ手段を提供する相手との比較に入り、条件の勝負になりやすい。何を満たそうとしているのかに戻らないと、手段の改良競争から抜けられない。
よくある質問
ニーズとウォンツはどちらを重視すべきですか?
見る順序が違うだけで、どちらも扱う対象になる。判断の軸を決めるときはニーズに遡り、実際に提供するものを決めるときはウォンツの具体さが要る。遡ってばかりでは形にならず、目の前の要望だけを追うと軸が定まらない。
顧客の要望はそのまま実現すべきですか?
そのまま実現するかは、要望の背後を確かめてから決まる。同じ要望でも、満たしたい状態が違えば適した形は変わる。要望を却下するという話ではなく、何のためかを聞いた上で、より合う手段があるなら提案し直せる余地が生まれる。
ウォンツは作り出せますか?
手段への欲求は、提示によって生まれる余地がある。存在を知らなかった手段が示されて初めて、それが欲しいという形になることは起きる。ただし満たすべきニーズがない場合は、提示された時点で関心が向かず、欲求として定着しない。