ユーザビリティ
製品やサービスの「使いやすさ」を指す概念。特定の利用者が特定の目的を、どれだけ効果的・効率的・満足に達成できるかで測られる。
意味
ユーザビリティとは、ある製品やサービスを、特定の利用者が特定の状況で使うとき、どれだけ使いやすいかを表す概念である。単なる操作の分かりやすさにとどまらず、目的をどれだけ的確に、無駄なく、満足のうちに達成できるかまでを含んで捉えられる。
国際規格ISO 9241では、有効さ(目的の達成度)・効率(達成にかかる資源)・満足度の三つの観点から定義される。誰にとっても一律の「使いやすさ」があるのではなく、利用者と目的と状況の組み合わせのなかで相対的に決まる点が特徴である。
ブランド体験の視点では、ユーザビリティは接点ごとの印象を左右する土台となる。使いにくさは約束と実体のずれとして受け手に残るため、体験設計の基礎的な品質指標として扱われる。
成り立ち
ユーザビリティは人間工学や認知科学を背景に発展し、ヤコブ・ニールセン(Jakob Nielsen)らのユーザビリティ工学によって実務の言葉として広まった。国際規格ISO 9241がその定義を体系化している。
ユーザビリティとUI(ユーザーインターフェース)の違い
UIは利用者が触れる面そのものの作りであり、ユーザビリティはその作りが目的の達成にどう働いたかという結果である。UIは作り手が直接手を入れられるが、ユーザビリティは実際に誰かが操作したときにしか現れない。原因と結果のあいだに人が挟まっている点が、両者の性質を分けている。
見分けの軸は、誰が良し悪しを判定できるかにある。画面の作りは社内のレビューでも議論できるが、達成の度合いは社外の人が触れた記録がなければ判定できない。会議室の中だけで結論が出たのであれば、それはUIの話をしていたことになる。
UI(ユーザーインターフェース)の項へ →ユーザビリティとUX / CX / BXの違い
ユーザビリティは特定の目的を達成する過程の質を扱い、体験の側の概念は触れる前後を含めて何が残ったかまでを扱う。前者は詰まらずに終えられたかで判定できるが、後者はもう一度関わりたくなったかという、その場では確かめにくい部分を含む。
実務で効いてくる違いは、同じ条件をもう一度作れるかにある。同一の課題を与えれば操作の成否は前後で並べられるが、体験のほうは期待も文脈も一度きりで、同じ状態には戻せない。だから「改善した」という報告を受けたときは、何と何を並べたのかを聞けばよい。並べた対象を言えるならユーザビリティの話、言えないなら体験全体の印象を語っている。
UX / CX / BXの項へ →使いどころ
「このUIのユーザビリティを検証する」といった形で、使いやすさを設計・評価の対象として扱う場面で用いられる。感覚的な良し悪しではなく、観察や指標を通じて確かめる姿勢を伴うことが多い。
実務でのチェックポイント
- 想定する利用者と目的と状況を一行で書けるか試す。書けないなら、良し悪しの判断基準が人によって違ったまま進んでいる。
- 直近の改修で、初めて触る人が手を止めた箇所の記録があるか確認する。社内の意見だけで直しているなら、判定の材料が欠けている。
- 問い合わせのうち、操作が分からないことを理由とするものの割合を追う。改修後も減っていないなら、達成の度合いは変わっていない。
- 完了までの手数や離脱した位置など、前後で同じ物差しで比べられる記録を残しているかを見る。
よくある誤解
使いやすさを万人に共通する性質と捉える見方が根強い。実際には利用者と目的と状況の組み合わせで決まるため、慣れた人にとって最短の設計が、初めて触る人には手がかりを欠いた画面になることがある。誰にとっての使いやすさかを固定しないまま議論すると、社内の意見が割れたまま声の大きさで決着してしまう。
体験の下限であって差別化にはならない、という扱われ方もある。下限であるという理解自体は正しいが、下限を割った接点は、掲げている約束のほうを打ち消す働きをする。丁寧さや誠実さを価値として語っているほど、操作上の詰まりはその主張への反証として受け取られる。順位の低い項目ではなく、他の主張の前提として置かれる。
よくある質問
ユーザビリティを上げると個性がなくなりませんか?
失われるのは個性ではなく、独自であることの根拠が薄い部分になる。操作の手順や表示の位置は、多くの人が既に覚えている型に沿うほど迷いが減る。独自性を置く場所は、その型の上に載る言葉や間合いのほうにある。迷わせることで生まれる個性は、記憶に残っても選ばれる理由にはなりにくい。
何人に試してもらえば十分ですか?
人数より、同じ箇所で詰まる人が繰り返し現れるかで判断する。別々の人が同じ場所で止まるなら、その原因は設計の側にある。逆に止まる場所がばらばらのうちは、まだ観察を続ける段階といえる。人数を目標にすると、結論の出ない記録だけが増えていく。
使いやすさは数字で表せますか?
一本の指標にまとめるのは難しい。ただし、有効さ・効率・満足度はそれぞれ別の形で観察できる。目的に辿り着けた人の割合、辿り着くまでに踏んだ手順と要した時間、終えた直後の本人の申告。同じ課題を同じ手順で前後に置けば、どこが軽くなり、どこが変わらなかったかは読める。求めるべきは高い点数ではなく、改修の前と後で何が動いたかという差分である。