ステークホルダー
企業やブランドの活動から影響を受け、また影響を与える利害関係者。顧客・従業員・株主・地域など。
意味
ステークホルダーとは、企業やブランドの活動によって影響を受け、また影響を与える利害関係者のことである。顧客だけでなく、従業員・取引先・株主・地域社会などを含む。
誰を関係者と捉えるかによって、意思決定で考慮すべき範囲が変わる。株主の利益に絞る見方もあれば、広く社会全体を視野に入れる見方もある。
ブランドは顧客だけに向けたものではなく、多様な関係者との関わりのなかで築かれる。それぞれの期待をどう受け止めるかが問われる。
成り立ち
stakeholder は、stake(利害・関わり)を hold(持つ)者を意味する英語で、ある事業に利害を持つ主体を指す。株主(shareholder)より広い関係者を捉える語として用いられてきた。
企業を株主だけでなく多様な関係者との関わりのなかで捉える発想とともに、経営やブランドの議論に取り込まれた。
ステークホルダーとオーディエンスの違い
オーディエンスは、こちらが届けたい相手として選んだ受け手である。ステークホルダーは、選ぶかどうかに関わらず影響が及ぶ相手までを含む。前者は絞る対象、後者は漏れなく数える対象という違いになる。
見落としはこの差から起きる。伝える相手として想定していなくても、従業員や取引先、地域はこちらの判断の影響を受け、反応を返す。届けたい相手だけを数えていると、想定していなかった場所から批判が返ってくる。
オーディエンスの項へ →ステークホルダーとマテリアリティの違い
ステークホルダーが誰かを洗い出す作業は、関わりの範囲を広げる方向に働く。マテリアリティは、そのうちどれに優先して取り組むかを絞る判断にあたる。広げる作業と絞る作業が、続けて置かれる関係になる。
順序を逆にすると偏りが残る。先に取り組む課題を決めてから関係者を並べると、都合のよい相手だけが挙がる。全体を洗い出したうえで重みを付けるからこそ、外した相手を外したと認識したまま進められる。
マテリアリティの項へ →使いどころ
ステークホルダーは、企業やブランドの活動が誰に関わるかを整理する際に使われる。関係者ごとの期待や責任を捉える視点になる。
サステナビリティやインナーブランディングの議論では、従業員や社会を含む幅広い関係者への視野が前提として論じられる。
実務でのチェックポイント
- 自社の判断が影響を及ぼす相手を、顧客と株主以外に三つ以上挙げられるかを試す。
- 直近の重い決定を一つ取り上げ、その判断で不利益をこうむった側の名前を挙げてみる。全員が得をしたと説明できる決定は、たいてい誰の期待にも正面から向き合っていない。
- 関係者ごとに、期待を聞き取る経路が実際に用意されているかを一覧で見る。
- 従業員が自社の方針を外部に説明できる状態にあるかを、実際に聞いて確かめる。
よくある誤解
関係者を漏れなく列挙した図が完成すると、そこで仕事が終わったように見えてしまう。だが名前が並んだだけの一覧は、意見が衝突した瞬間に何も指示してくれない。それぞれが何を期待し、どこまで応えるのか、そして誰の要望を今回は保留するのか。そこまで書き込まれて、はじめて判断の材料になる。
全員の期待に応えるべきだ、という読み方も現実と噛み合わない。関係者の要望は互いに衝突するもので、価格を下げれば取引先の利益が減り、待遇を厚くすれば短期の利益が削られる。調整のための枠組みであって、全方位を満たすための枠組みではない。
よくある質問
ステークホルダーはどこまで含めればよいですか?
事業の判断が影響を及ぼす範囲で線を引く。取引先の先にいる生産者や、事業所のある地域まで含むかは、自社の判断がそこに届くかで決まる。広げすぎて扱えなくなるより、影響の経路を説明できる範囲まで挙げ、そこから優先度を付ける順序になる。
株主と他の関係者の利益が衝突したらどうしますか?
どちらを取るかを先に決めるより、時間軸を揃えて比べるほうが判断しやすい。短期の利益と、長期に失う信用は同じ物差しに乗りにくい。衝突を隠したまま折衷せず、何を諦めたのかを記録に残すことが、後から説明できる形になる。
中小企業にもステークホルダーの視点は必要ですか?
必要になる。規模が小さいほど、従業員や取引先との関係が事業の継続を直接左右する。相手の数が少ないぶん一人あたりの影響が大きく、関係が切れたときの代替も効きにくい。数の問題ではなく、依存の度合いの問題になる。