ソーシャルリスニング
SNSなどの公開された声を収集・分析し、ブランドや話題への評判や兆しをつかむ取り組み。
意味
ソーシャルリスニングとは、SNSや口コミサイトなど、公開された場に投稿された声を収集し分析することで、ブランドや話題に対する評判や関心の動きをつかむ取り組みである。
アンケートのように問いかけて答えを得るのではなく、人々が自発的に語っている言葉を拾う点に特徴がある。飾らない本音や、想定外の反応が見えることがある。
好意的な声だけでなく、不満や誤解、火種となりうる兆しを早めに捉える役割も持つ。声の量だけでなく、その中身や文脈を読むことが求められる。
成り立ち
social listening は「ソーシャル(メディア)に耳を傾けること」を意味する英語で、公開された会話を聞き取る行為に由来する。
SNSの普及により、人々の生の声が公開の場に大量に蓄積されるようになったことを背景に、それらを分析する手法を指す語として広まった。
ソーシャルリスニングとボイス・オブ・カスタマーの違い
問い合わせ窓口やアンケートに寄せられた声を扱うのがボイス・オブ・カスタマーであり、ソーシャルリスニングが拾うのは、そもそも自社に宛てられていない会話である。わざわざ企業に届けようとする人は、それだけの動機を抱えている。一方、公開の場に流れるのは、褒めるでも訴えるでもない独り言に近い一言まで含む。
もう一つの軸は、声の主が特定できるかどうかにある。寄せられた声は誰の発言かをたどれるため個別の対応につなげられるが、公開の場の声は全体の傾向として読むしかない場合が多い。個別対応の材料にするのか、兆しの把握に使うのかで、どちらを見るべきかが決まる。
ボイス・オブ・カスタマーの項へ →ソーシャルリスニングとサーベイの違い
サーベイは問いを立てて答えを引き出す方法であり、こちらが用意した枠の中に回答が収まる。ソーシャルリスニングは枠を用意しないため、想定していなかった話題や、質問しようとすら思わなかった論点が混ざって出てくる。枠の内と外という違いになる。
時間の扱いも違う。サーベイは実施した時点を切り取るが、公開された声は日々流れ続けるため、変化の速さや火のつき方まで見える。ある一日の量そのものより、前後と比べてどう動いたかを読む使い方に向いており、定点の測定とは役割が分かれる。
サーベイの項へ →使いどころ
ソーシャルリスニングは、ブランドの評判把握や、話題の兆しの早期発見、顧客理解の補完などに用いられる。
自発的な声を扱うため偏りもあり、サーベイなどの調査と補い合って解釈されることが多い。ソートリーダーシップや炎上対応の議論とも接点を持つ。
実務でのチェックポイント
- 自社名を含む投稿のうち、購入前の検討中に書かれたものと購入後に書かれたものを分けて数える。どちらが多いかで、いま見えている声の性質が変わってくる。
- 検索語が正式名称だけなら、略称・カタカナ表記・よくある誤字を足す。人は正しい社名で語らない。呼ばれ方の幅を取りこぼした収集は、声の総量そのものを過小に見せる。
- 直近で社内に共有された投稿が、好意的な評判の紹介に偏っていないかを確認する。共有される声が選ばれた時点で、判断の材料はすでに歪んでいる。
- これまでに拾った声のうち、商品や接客の変更まで至った例を一つ言えるか。言えないなら、レポートは回っていても、収集と意思決定の間に線がつながっていない。
よくある誤解
投稿の量が多いほど関心が高い、と読んでしまう誤解が起きやすい。語られやすい商材と、良くても黙って使われる商材があり、量は関心の強さより話題にしやすさを映している。自社の中で推移を比べるのは意味があるが、別のカテゴリと横並びにして多い少ないを論じると、解釈を誤ることになる。
否定的な投稿を打ち消すべきものとして扱う姿勢もよく見られる。不満の言葉は、期待の輪郭がどこにあるかを外から教えてくれる材料でもある。反論や削除の判断に急ぐ前に、その不満がどの期待から生まれたのかを読み取る作業が抜けると、同じ種類の声が形を変えて繰り返し立ち上がる。
よくある質問
ソーシャルリスニングはどのくらいの頻度で見るべきですか?
頻度を決める前に、見る目的を分けるほうが実用的である。火種の察知には日次に近い間隔が要るが、評判の傾向をつかむ用途なら期ごとの比較で足りる。毎日眺めていても比較の基準がなければ変化には気づけないため、何と比べるのかを先に決めておくことになる。
投稿数が少なくても分析する意味はありますか?
ある。数が少ないうちは統計として扱えないが、一つひとつの投稿を全文で読めるという利点がある。どんな言葉で自社が語られているかは、量が集まる前のほうが丁寧に拾える。集計に耐える量になってから始めると、その語彙を取りこぼしたまま数だけを追うことになる。
専用のツールがないと始められませんか?
手作業でも始められる。検索と閲覧で拾える範囲でも、どんな語で語られ、どの話題に反応が集まるかは把握できる。道具が要るのは量が増えて手で追えなくなってからで、最初に決めるべきは収集の手段ではなく、何を知りたいのかという問いのほうになる。