社会課題起点デザイン
社会や利用者の課題を出発点に価値を構想する姿勢。企業の存在意義と事業をデザインで結びつける考え方を指す。
意味
社会課題起点デザインとは、自社の都合ではなく、社会や利用者が抱える課題を出発点に据えて価値を構想する姿勢を指す。何を解決すべきかという問いから始め、そこに向けて事業や表現を設計しようとする。
この視点は、企業の存在意義と日々の事業を結び直す働きをもつ。課題に応える過程で新しい価値が生まれ、同時にブランドが社会の中で果たす役割も明確になっていく。
成り立ち
利用者や社会の課題を起点に発想するという姿勢は、デザインの方法論に根ざしている。デザイン経営の議論でも、デザインが社会課題の解決や新たな価値創出に寄与する側面が語られる。
社会課題起点デザインとブランドパーパスの違い
ブランドパーパスは自社が何のために存在するかという宣言で、社会課題起点デザインはその宣言を実際の設計の出発点に据える進め方である。掲げることと、企画の最初の問いをそこから始めることの間には、実務上の距離がある。
判別したいときは、順序を見る。企画が固まった後にパーパスとの整合を確かめているなら、宣言は後付けの検算として使われている。何を解くべきかの議論から社会の側の課題が出てくるなら、起点として働いていると言える。
ブランドパーパスの項へ →社会課題起点デザインとコーズマーケティングの違い
コーズマーケティングは社会的な取り組みを販売や訴求に結びつける手法であり、社会課題起点デザインは何をつくるかの判断そのものを課題から始める姿勢である。前者は届け方の話で、後者は中身の話になる。同じ活動でも扱う層が違う。
取り違えると、商品は従来のままで訴求だけが社会性を帯びる状態が生まれる。受け手はその落差を感じ取りやすく、かえって信頼を損なう。中身が動いているかは、その取り組みをやめたときに商品や提供の仕方が変わるかどうかで確かめられる。
コーズマーケティングの項へ →使いどころ
「社会課題起点でデザインを構想し、事業と存在意義を結ぶ」のように、出発点の置き方を語る文脈で用いられる。自社起点の発想と対比される。
実務でのチェックポイント
- 掲げている課題と自社の事業の接点を一文で説明してみる。説明に飛躍があるなら、受け手にもつながりは見えていない。
- その課題に関わる当事者に直接話を聞いた回数を数える。資料だけで課題を設定しているなら、解像度は上がらない。
- 取り組みをやめた場合に商品やサービスが変わるかを問う。変わらないなら、起点ではなく付随の活動になっている。
- 課題の解決度を何で確かめるかを決めているかを見る。決めていないと、続けているかどうかだけが報告されていく。
よくある誤解
社会課題を掲げれば共感が得られる、という期待が先に立ちやすい。だが受け手が見ているのは、その課題と自社の事業がどうつながっているかである。本業から離れた課題を掲げるほど、なぜこの会社がそれを言うのかという疑問が残り、取り組みの熱量とは無関係に距離が生まれる。
もう一つは、規模の大きな課題ほど価値があるという読み方である。扱う課題が大きいほど自社の関与は薄まり、何がどう変わったかも見えにくくなる。手の届く範囲の具体的な困りごとから始めたほうが、解けたかどうかを確かめられ、次の判断にもつながっていく。
よくある質問
社会課題起点で考えると事業として成り立ちますか?
成り立つ場合とそうでない場合がある。課題が深く、対価を払う相手が特定できるなら事業になり、困っている人と払う人が離れている場合は別の仕組みが要る。起点を社会に置いても、誰が費用を負担するかの設計は同時に必要になる。
自社に関係のある課題はどう見つけますか?
すでに扱っている顧客の周辺から探すのが近道になる。日々の取引で見えている不便や、自社の事業活動が生んでいる負荷は、関与する理由を説明しやすい。遠くの課題を探す前に、手元にある接点を洗い出すほうがつながりのある課題に届く。
大きな課題を掲げないと弱く見えませんか?
範囲の大きさと説得力は別に動く。狭くても、その課題に対して自社が何をしたかを具体的に語れるほうが伝わる。大きな課題は掲げる企業の数だけ言葉が似通うため、かえって自社の像は薄まりやすい。狭さは弱さと同じではない。