マイクロモーメント
スマートフォンで「知りたい・行きたい・したい・買いたい」と反射的に検索する一瞬の接点を指す概念。
意味
マイクロモーメントとは、人が何かを思い立った瞬間に、手元の端末で反射的に情報を求める短い接点を指す。従来のように腰を据えて調べるのではなく、日常のすきま時間に断片的な意図が立ち上がる場面を捉えた考え方である。
「知りたい」「行きたい」「したい」「買いたい」の四類型で整理されることが多く、ブランドはその一瞬に的確な答えを差し出せるかどうかで想起の機会を得る。長い接触ではなく、点在する小さな瞬間の積み重ねが選択を左右するという見方に立つ。
成り立ち
「マイクロモーメント(micro-moment)」は、スマートフォンの普及を背景に二〇一〇年代半ばにグーグルが提唱・普及させた概念とされ、「知りたい」「行きたい」「したい」「買いたい」の四つの意図で消費者行動を捉える枠組みとして紹介された。
マイクロモーメントとカスタマージャーニーの違い
カスタマージャーニーは、認知から購入までを連なった筋として捉える。マイクロモーメントは、その筋を前提とせず、その場で立ち上がった意図の単位で捉える。長い道のりを歩む相手を想定するか、断片的に現れる相手を想定するかで、設計の起点が変わる。
取り違えると、筋の途中に位置づけられない行動が抜け落ちる。思い立った瞬間に調べ、その場で決めて終わる相手は、段階を追う筋の上には現れない。両方を持ったうえで、どちらの相手が多いかを扱う商品ごとに見立てる形になる。
カスタマージャーニーの項へ →マイクロモーメントとメンタルアベイラビリティの違い
メンタルアベイラビリティの側にあるのは、機会が訪れた瞬間に思い出される状態であり、その蓄えは手前の時間で積まれている。マイクロモーメントが指すのは、その機会が立ち上がった一瞬の場面そのものである。積んでおくものと、その場で差し出すものという違いになる。
打ち手の向きも分かれる。思い出される状態をつくる作業は時間をかけて積み上がるが、その瞬間に答えを差し出す作業は、探された場所に情報が置かれているかという整備の話になる。どちらが欠けても、一瞬の場面は取り逃がされることになる。
メンタルアベイラビリティの項へ →使いどころ
「マイクロモーメントを捉える」といった形で、検索やアプリ上での一瞬の意図に合わせて情報設計を行う文脈で用いられる。長い訴求よりも、その瞬間に必要な答えを最短で返す発想と結びつく。
実務でのチェックポイント
- 自社が扱う商品で人が思い立つ場面を書き出し、そのときに使われる言葉で実際に検索して結果を確かめる。
- たどり着いた先で、求められている答えが最初の画面に出ているかを見る。読み進めないと分からないなら間に合っていない。
- 問い合わせを、その場で答えを求めるものと比較検討の途中のものに分ける。割合が資源の配分と合っているかを確かめる。
- 手元の端末で自社の情報にたどり着くまでの手数を数える。手数の多い経路が残っていないかを見る。
よくある誤解
短い接点を狙うという発想が、短い言葉で訴えるという話に読み替えられやすい。捉えるべきなのは表現の長さではなく、その瞬間に相手が求めている答えの形になる。求められているのが所在地や在庫の有無であれば、印象に残る言い回しよりも、探した場所にその情報があるかのほうが効く。
その場の意図に応えることが、関係を築くことと同じ扱いをされる場合もある。一瞬の場面で選ばれたとしても、次に思い立ったときに同じ相手が思い出される保証はない。瞬間ごとの取りこぼしを減らす作業と、思い出される状態を積む作業は、別々に置いて配分する対象になる。
よくある質問
マイクロモーメントはBtoBでも当てはまりますか?
当てはまる場面はあるが、比重が変わる。組織としての決定には時間がかかる一方、その手前で担当者が個人として調べる場面は日常的に起きる。その場で名前が挙がるかどうかは後の比較検討に残るかを左右するため、瞬間の接点を無視できるわけではない。
検索結果の上位に出ていれば十分ですか?
たどり着けることは前提にすぎない。着いた先で求めている答えがすぐ見つからなければ、その場で離れて別の相手が選ばれる。上位に出ているのに反応が薄い場合、疑う対象は順位ではなく、着地した画面が何に答えているかのほうになる。
その瞬間に選ばれれば関係は続きますか?
続くとは限らない。その場の必要を満たした相手として記憶されても、次に同じ場面が訪れたときに再び思い出されるかは別の問題になる。瞬間に応じる整備と、思い出される状態を積む取り組みは、同じ資源の中でも別の枠として扱うことになる。