マテリアリティ
多くの課題の中から、企業にとって特に重要度の高い論点を見極めて絞り込むこと。重要課題ともいう。
意味
マテリアリティとは、無数にある社会的・経営的な論点の中から、その企業にとって特に重要度の高いものを見極めて絞り込むことを指す。「重要課題」と訳されることが多い。
何に注力し、何を開示するかを定める際の優先順位づけとして機能する。ブランドの視点では、掲げる姿勢と実際に力を注ぐ領域が一致しているかを問う土台となり、言葉と行動の整合を支える。
成り立ち
「マテリアリティ(materiality)」は「重要性」を意味する語で、もともとは会計・監査の分野で用いられてきた。近年は非財務情報やサステナビリティの文脈で、重点的に取り組むべき課題を指す語として広く使われるようになった。
マテリアリティとサステナビリティの違い
サステナビリティは取り組みうる領域の広がりを指し、マテリアリティはその広がりの中から何を自社の問題として引き受けるかという絞り込みを指す。前者は何が論点になりうるかを列挙する側にあり、後者は列挙されたものに順位をつけて落とす側にある。作業の方向が逆になる。
判別の手がかりは、外してよいものが決まっているかにある。領域の話は網羅的に並べても矛盾しないが、マテリアリティは並べた中から捨てる判断が入って初めて成立する。すべてが重要だと書かれた一覧は、絞り込みの工程がまだ行われていないことを示している。
サステナビリティの項へ →マテリアリティとブランドパーパスの違い
ブランドパーパスは何のために存在するのかという一つの答えであり、マテリアリティはその存在意義に照らして、どの論点を自社の課題として抱えるかという複数の選択である。前者は簡単には動かず、後者は事業や社会の状況に応じて見直される。時間の尺度が違う。
上下の関係でも切り分けられる。存在意義が定まらないままマテリアリティを選ぶと、選んだ理由を外の潮流にしか求められなくなり、同業とほぼ同じ項目が並ぶ。なぜその論点を自社が引き受けるのかを説明する言葉は、パーパスの側から出てくる。
ブランドパーパスの項へ →使いどころ
「マテリアリティを特定する」といった形で、取り組むべき重点課題を絞り込む文脈で用いられる。開示や中期的な方針づくりの前提として語られることが多い。
実務でのチェックポイント
- 特定した重要課題ごとに、今期の予算と担当部署が実際に紐づいているかを確かめる。紐づかない項目は、まだ課題として引き受けられていない。
- 一覧から項目を一つ外したとき、社内で誰が困るかを考える。誰も困らない項目は、優先順位を決める働きをしていない。
- 同業他社の重要課題の一覧と自社のものを並べ、項目がほぼ一致していないかを見る。一致しているなら、外の枠組みをなぞっただけの可能性がある。
- 特定してから見直しをかけた記録があるかを確認する。事業も社会も動くのに一度も更新されていなければ、判断の道具としては止まっている。
よくある誤解
開示のための整理だと捉えられ、資料の中でだけ完結してしまう場合がある。重要課題として掲げた項目が、予算の配分や人の割き方、引き受ける仕事の基準に一つも影響していなければ、掲げた事実だけが残る。特定した後に何をやめたかを言えるかどうかが、実際に絞り込んだかどうかの分かれ目になる。
もう一つは、社会から問われる論点だけを対象と考える扱いである。事業の存続に効く論点と、外から求められる論点は重なる部分もあれば別々に立つ部分もあり、どちらの軸で選んだのかを分けずに一覧にすると、優先順位の根拠が読み取れなくなる。二つの軸は混ぜずに並べておくほうが、後から判断を説明できる。
よくある質問
マテリアリティはどのくらいの数に絞るべきですか?
数そのものより、一つひとつに担い手と資源を割り当てられるかで決まる。挙げた項目のすべてに人と予算を配れないなら、絞り込みは完了していない。一覧を眺めて優先順位を語れる状態と、実際に配分が変わっている状態は別で、後者に届くところまで数を落とすことになる。
重要課題は誰が決めるものですか?
最終的には、資源の配分を変えられる立場の人が決めることになる。関係者から論点を集める作業は担当部署でも進められるが、何を捨てるかの判断は他の業務を削る決定と表裏にあるためである。集める工程と決める工程を分けておくと、責任の所在がはっきりする。
ブランドの取り組みとはどう関係しますか?
掲げている姿勢と、実際に人と予算が向かっている領域とを突き合わせる材料になる。ブランドの言葉が環境や人権を語っていても、重点課題の一覧にその領域が挙がっていなければ、外から見れば言葉が先に走っているとしか映らない。逆に、重点課題に選びながら発信ではほとんど触れていない領域が浮かぶこともある。マテリアリティは、その双方向のずれを見えるようにする場として働く。