イシューマップ
検討すべき論点を構造的に洗い出し、関係性を可視化して整理する枠組み。
意味
イシューマップとは、ある課題について検討すべき論点(イシュー)を漏れなく洗い出し、その上下関係や依存関係を構造的に整理・可視化した図を指す。何を、どの順番で考えるべきかを見通すための思考の設計図として用いられる。
問題を大きな問いから細かい論点へと分解し、枝分かれの形で並べることで、議論の抜け漏れや飛躍を防ぐ。ブランド戦略の立案では、目指す姿と現状の隔たりを構成する論点を分解し、優先して取り組むべき箇所を見定める際に役立つ。
成り立ち
論理的思考やコンサルティングの実務で用いられる論点分解の手法を出自とし、ツリー構造で論点を整理する発想に基づく。課題解決を「良い問いの設定」から始めるという考え方の中で、論点整理の道具として定着してきた。
イシューマップとコンセプトの違い
イシューマップは何を考えるべきかを並べる段階の道具であり、コンセプトはその検討を経て一つに定めた答えである。前者は広げて漏れをなくす方向に働き、後者は絞って捨てる方向に働く。同じ検討の中でも、手前と終点にあたる。
取り違えは、論点を整理した時点で方針が決まったと感じてしまうところに出る。図がきれいに埋まると全体を把握した感覚が生まれるが、埋まっているのは問いであって答えではない。どの枝に賭けるかを決めない限り、次の作業は始まらない。
コンセプトの項へ →イシューマップとエンパシーマップの違い
エンパシーマップが描くのは特定の人物の内面であり、イシューマップが描くのは検討すべき問いの構造である。前者は相手の側に立つための道具、後者は自分たちの思考を点検するための道具で、埋める材料の出どころが違う。
使う場面も分かれる。相手の理解が足りないまま論点だけを分解すると、枝は増えるのに問いが自社の都合だけで組まれる。逆に人物像だけを共有しても、何から決めるかの順序は出てこない。両方を使うなら、理解の側を先に置くと論点の質が上がる。
エンパシーマップの項へ →使いどころ
戦略や企画の初期に、議論の土台となる論点構造を共有する目的で作られる。結論を急ぐ前に「何を考えるべきか」を関係者で合意する場面で有効であり、検討の抜け漏れや堂々巡りを避ける手がかりとなる。
実務でのチェックポイント
- 並べた論点の中から、答えが出れば方針が変わるものを選び出す。変わらない論点は検討から外す。
- 各枝について、誰が答えを持っているか、どこを見れば答えが出るかを一行で書き添える。
- 描いた論点の枝を眺め、「そもそもこの事業を続けるべきか」といった、自社に不都合な答えが出かねない問いが一本でも立っているかを探す。都合のよい枝ばかりなら、分解の前に結論が置かれている。
- 検討の順序を並べ、前の答えが出ないと決められない枝がどれかを線でつないでみる。
よくある誤解
分解が細かいほど良い整理だと受け取られやすい。枝を増やせば漏れは減るが、同時にどれも同じ重みに見えてきて、優先順位が消えていく。分解の目的は網羅そのものではなく、どこに賭けるかを選べる状態をつくることにあり、選べなくなった時点で細かさは害に転じる。
もう一つは、論点を挙げた人がそのまま答えを持っていると見なされることである。論点の構造は誰が見ても同じ形に近づくが、どれが重要かの判断には立場が入る。整理した図を共有するときに、構造の部分と優先順位をつけた判断の部分を分けて示さないと、判断まで客観の顔をして通ってしまう。
よくある質問
イシューマップはどこまで細かく分解すればよいですか?
答えを出す方法が思い浮かぶところで止めることになる。どう調べれば分かるかを言えない粒度の枝は、それ以上分けても検討に移せない。逆に、調べ方が見える枝が並んでいれば、その先は分解ではなく作業の割り振りの話に変わる。
一人で作ってもよいですか?
下書きは一人のほうが速いが、そのまま確定させると作った人の関心が構造に写り込む。抜けは、別の立場から見た人のほうが見つけやすい。作る手は一人でも、埋まっていない枝を探す役を別に立てておくと、漏れの性質が変わる。
作った後はどう使えばよいですか?
議論が迷ったときに戻る場所として置いておく。話が広がりすぎたときに、今どの枝の話をしているかを指させれば、議論は元の順序に戻る。作った時点で役目が終わる図ではなく、検討中に何度も参照される前提で置き場所を決めておく。