ディスティンクティブアセット
色・形・音・言い回しなど、ブランドを瞬時に識別させる独自の記号的要素の蓄積を指す。
意味
ディスティンクティブアセット(識別資産)とは、ロゴだけでなく、特定の色・形・音・キャラクター・言い回しなど、それに触れただけでブランドを思い起こさせる独自の記号を指す。名前を出さずとも想起を促す手がかりになる。
こうした記号は、繰り返し一貫して用いられることで初めて資産として育つ。頻繁に変えてしまうと蓄積が途切れるため、独自性と一貫性の両立が要点となる。
成り立ち
ブランドが選ばれやすくなる条件を、想起のしやすさと結びつけて論じる議論の中で整理されてきた概念である。独自の識別要素を資産として蓄積する発想が核にある。
ディスティンクティブアセットと差別化の違い
差別化は、他社と比べて中身が何ほど違うかという内容の話である。ディスティンクティブアセットは、見た瞬間にどこのものか分かるかという識別の話になる。中身が独自でも見分けがつかない状態はあり、逆に中身は近くても即座に判別される状態もある。
求められる性質も逆を向く。差別化では他社が真似できないことに意味があるが、識別資産では受け手がすぐ結びつけられることに意味がある。意外性を狙って記号を凝ると、独自ではあるが何の合図か伝わらないという、識別としては失敗した状態が生まれる。独自であることと、伝わることは別に確かめる。
差別化の項へ →ディスティンクティブアセットとブランド連想の違い
ブランド連想は、名前から何が思い浮かぶかという方向の結びつきを指す。ディスティンクティブアセットは、記号を見て名前が思い浮かぶという逆方向の結びつきを指す。同じ結びつきでも、どちらからどちらへ向かうかで役割が変わる。向きの違いが、そのまま役割の違いになる。
働く場面も違う。連想は選ぶ理由をつくる側で効き、識別資産は候補として気づかれる手前で効く。売り場や画面で見落とされている状態と、気づかれてはいるが選ばれない状態は別の課題であり、どちらを直すかで手を入れる場所が分かれる。気づかれていないのか、気づかれても選ばれていないのかを先に見分ける必要がある。
ブランド連想の項へ →使いどころ
ブランドの識別要素を棚卸しし、どの記号を守り育てるかを見極める際に用いられる。目新しさを求めて記号を変え続けると、せっかくの蓄積が失われる点に注意したい。
実務でのチェックポイント
- 名前とロゴを外した自社の広告や包装を社外の人に見せ、どこのものか分かるかを試す。分からないなら、識別を担っている記号はまだ育っていない。
- 使っている記号を書き出し、直近の制作物すべてに一貫して現れているものがどれかを確かめる。散発的にしか出ていない要素は蓄積が途切れている。
- 同じ売り場や画面に並ぶ他社の記号と並べ、遠くから見て取り違えないかを見る。近くで比べて違えばよいというものではない。近くで見比べる条件では気づけない差がある。
- 記号を変える議論が出たとき、変えたい理由が受け手の反応にあるのか、社内の飽きにあるのかを区別する。後者なら、判断の根拠としては弱い。
よくある誤解
識別資産と、それらしい世界観をつくる装飾が混ざりやすい。雰囲気を整える要素は数を増やしても構わないが、識別に使える記号は、繰り返し目にしてようやく結びつく性質を持つ。抱える数が増えるほど一つあたりの露出は薄まり、どれも決め手にならない状態に近づいていく。抱える数を絞る判断が、蓄積の速さをそのまま決める。
作り手が飽きた時点で更新の議論が始まるのも、よく起きる。社内では毎日目にするため早く古びて感じられるが、受け手が触れる回数はそれよりはるかに少ない。飽きの感覚を判断の根拠に置くと、蓄積が始まる前に記号を入れ替え続けることになりかねない。更新の議論は、外の反応を確かめてから始めるほうが安全になる。
よくある質問
ロゴ以外に何を識別資産にできますか?
繰り返し使えて、他社と取り違えられないものであれば対象になりうる。特定の色づかい、形の癖、決まった構図、短い言い回し、音や声の使い方などが該当する。条件は目新しさではなく、同じ形で使い続けられることと、他社が同じ場で使っていないことになる。
識別資産はいくつ持つのが適切ですか?
すべての接点で欠かさず出せる数までに収まる。数が多いほど各記号の露出は分散し、どれも結びつきが育たない。まず一つか二つに絞って徹底し、その結びつきが確かめられてから増やす順序のほうが、同じ費用でも蓄積は速く進む。守り続けられる数が、そのまま上限になる。
デザインを刷新するとき、識別資産は残すべきですか?
何が識別を担っているかを確かめてから決めることになる。社内で象徴と考えている要素と、外から見て実際に見分けの手がかりになっている要素は、しばしば一致しない。刷新の前に外の人に何を覚えているかを尋ねておくと、捨ててよい部分の線引きがつく。捨てる判断は、確かめた後に下すことになる。