デザインスプリント
短期間で課題の理解から試作・検証までを一気に進め、アイデアの可否を素早く見極める集中作業の型。
意味
デザインスプリントとは、限られた日数のなかで課題の理解、発想、試作、利用者への検証までを一気通貫で行う集中的な進め方を指す。時間を区切ることで議論の空転を防ぎ、判断を前に進める点に狙いがある。
本格的な開発に入る前に、アイデアが筋の良いものかを小さく確かめられる。長い議論で答えを探すのではなく、つくって試すことで学ぶという姿勢を、日程として設計した手法である。
成り立ち
Google Venturesで実践された5日間の進め方をまとめたジェイク・ナップらの著書『SPRINT』を通じて広く知られるようになった。
デザインスプリントとワークショップの違い
ワークショップは参加者が手を動かして考える場の総称で、デザインスプリントは検証までを含む一連の日程として組まれた進め方である。前者は場の形式を指し、後者は結論の出し方まで含む。集まって議論する点は同じでも、持ち帰るものが違う。
見分けの軸は、終わった時点で何が確定するかにある。場としてのワークショップは意見や案が出れば成立するが、スプリントは利用者に当てた結果として、進めるか止めるかの材料が出ることを狙う。検証の有無が実質的な境目になる。
ワークショップの項へ →デザインスプリントとプロトタイピングの違い
プロトタイピングは試作をつくる営みそのもので、デザインスプリントはその試作と検証を短い日程に収める運営の型である。前者は日常的に繰り返される行為で、後者は特定の判断を前に進めるために期間を区切って行うものになる。
使い分けの目安は、何が滞っているかにある。案はあるが確かめる手段がないなら試作の技能が要る。案も試作もあるのに判断が進まないなら、関係者を同じ期間に拘束する運営の側が効く。詰まりの位置によって、選ぶ対象が変わる。
プロトタイピングの項へ →使いどころ
新機能や新サービスの方向性を短期間で見極めたいときに用いる。関係者を一室に集め、意思決定と検証を圧縮して行う場として設計される。
実務でのチェックポイント
- この期間で確かめたい問いを一つに絞れているかを確認する。複数あるなら、日程内では材料がそろわない。
- 決裁できる人が期間中に参加できるかを先に確かめる。参加しないなら、結果は持ち帰って再検討になる。
- 検証に協力する利用者の目処が立っているかを見る。当てる相手がいなければ、試作をつくって終わる。
- 終了後に何を決めるのかを開始前に書いておく。決める対象が曖昧なら、良い議論をしたという感想で終わる。
よくある誤解
短期間で答えが出る手法として期待されやすいが、出るのは答えではなく判断の材料である。数日で分かるのは、当初の想定が利用者に通じるかどうかまでで、事業として成立するかまでは確かめられない。何を確かめる場かを狭く定めておかないと、期待と成果がずれる。
準備の負荷が軽く見られる点も実務では問題になる。検証する相手を集め、確かめたい問いを絞り、決裁できる人の日程を押さえるといった段取りは、期間の中に圧縮できない。当日の進行だけを設計すると、試す相手がいないまま日程が始まることになる。
よくある質問
デザインスプリントは何日で行いますか?
区切ること自体が要点で、日数そのものに決まりはない。数日で組む形が知られているが、扱う対象や関係者の都合に合わせて縮めたり分けたりできる。守るべきは、期限を先に決めて、その中で判断の材料まで出すという点にある。
一度で結論が出なかった場合はどうしますか?
出ないこと自体は失敗ではない。確かめたい問いが大きすぎたのか、試作が問いに答えられる形ではなかったのかを切り分け、範囲を狭めて繰り返す。何が分からなかったかを特定できていれば、次の回はより短く済む。
参加者は何人が適当ですか?
決裁できる人と、実際に手を動かす人が同席できる最小の人数に収める。増えるほど合意の形成に時間が取られ、期間内に検証まで届かなくなる。関係者が多い案件では、全員を入れるより、決めた内容を後で共有する経路を用意する。