デザインラダー
デザインの活用度合いを段階で捉えるモデル。デザインが企業のどの階層まで関与しているかを可視化する。
意味
デザインラダーとは、企業がデザインをどの程度活用しているかを段階(はしご)としてとらえる枠組みを指す。デザインをほとんど使わない状態から、仕上げの手段、開発の一部、そして経営戦略の中核へと関与が深まる過程を段階的に示す。
このモデルは、自社のデザイン活用がどの段階にあるかを見立てる物差しとして用いられる。上の段階ほどデザインが経営に近づき、デザイン経営が目指す姿と重ねて語られることが多い。
成り立ち
デザインラダーは、デンマークデザインセンター(Danish Design Centre)が提示したモデルとして知られる。デザインの活用度を段階で示す枠組みとして、各国のデザイン政策や議論で参照されている。
デザインラダーとデザイン経営の違い
デザイン経営は目指す状態を語る言葉であり、デザインラダーは現在地を測るための物差しである。前者は何をすべきかの方向を示し、後者はいまどこにいるかを示す。方向だけを掲げると、達していない距離が見えないまま施策だけが増えていく。
使う場面も違う。ラダーは議論の入口で、経営とデザインの距離を関係者の間でそろえるために使う。デザイン経営の議論は、その距離を縮める手立てを決める段階に入ってからのものになる。順番を逆にすると、現在地の認識が割れたまま手立てを論じることになる。
デザイン経営の項へ →デザインラダーとデザイン投資の違い
デザイン投資は資源をどれだけ、どこに配分したかという入力の話で、ラダーはその配分がどこまで経営に届いているかという関与の深さの話である。金額が増えても、使い道が仕上げの範囲に留まっていれば段は上がらない。
判別したいときは、増やした予算が誰の判断を変えたかを問うとよい。制作の点数だけが増えたなら投資は動いているが位置は動いていない。事業の方向を決める場にデザインの視点が持ち込まれて初めて、段が上がったと言える。
デザイン投資の項へ →使いどころ
「デザインラダーで自社の位置を見立てる」のように、活用度を診断する文脈で用いられる。段階の呼び方には幅があり、考え方の枠組みとして扱われる。
実務でのチェックポイント
- 直近一年の意思決定をたどり、デザイン側の指摘で結論が動いたものを探してみる。見つからないなら、デザインラダー上の自認は実際より一段か二段高く見積もられている。
- デザインの話題が経営会議に上がるのは、承認のためか方向を決めるためかを確かめる。前者ばかりなら仕上げの段に留まっている。
- デザイン担当が案件に加わる時期を案件ごとに書き出す。要件確定後ばかりなら、段を上げる余地はその手前にある。
- 自社の段を関係者数人に別々に見立ててもらい、答えが割れるかを見る。割れるなら、現在地の認識自体が共有されていない。
よくある誤解
段が上であるほど優れているという読み方をされやすい。だが必要な段は事業の性質で変わり、供給の安定や価格で勝負が決まる領域では、上の段に無理に上がろうとしても判断が重くなるだけになる。自社にとってどの段が適正かを先に置かないと、ラダーは背伸びを促すだけの道具になる。
もう一つは、自己申告で位置を決めてしまう扱いである。経営会議にデザイン担当が出席していることを上位の段の根拠にしても、そこで表現の報告しかしていなければ関与は深まっていない。段の判定は、肩書きや出席ではなく、実際に覆された判断があるかどうかで確かめる対象になる。
よくある質問
デザインラダーの段は必ず順番に上がるものですか?
順に上がることが多いが、決まりではない。経営の交代や大きな事業転換で一気に位置が変わることもあれば、担当者の異動で下がることもある。段は組織の状態を映すもので、一度上がれば保たれる階級ではない。上がった後の維持も別に考える対象になる。
自社の段はどう判定すればよいですか?
関与の時期と、覆せる範囲で見るのが確かめやすい。デザインが呼ばれるのが要件確定の後なのか前なのか、そしてデザインの側から進行中の案を止められるかを問う。掲げている方針や体制図ではなく、実際に起きた出来事から判定する。
上の段を目指さないという選択もありますか?
ある。デザインの関与を深めるほど意思決定に時間がかかる面もあり、それが見合う事業かどうかで判断は分かれる。ただし選ばないと決めたなら、なぜ選ばないのかを説明できるようにしておく必要がある。放置と選択は結果が同じでも、次の判断で差が出る。