— 01 —成果物ではなく、つくり方のほうに焦点が当てられている
PR EDGEが「社員全員で言葉をつくった理由に迫る|丸天産業のインナーブランディング」と題した記事を掲載している。丸天産業は名古屋に本社を置く1950年創業の企業で、オフィス用品の販売から内装、ICTまでを扱うワークプレイス領域の会社だ。社員数は50名台。同社は自社サイトで、2026年8月3日にコーポレートタグライン「「はたらく」を、はずませよう」を策定したと公表している。掲げるパーパスは「未来を変えよう、「人」と「空間」のチカラで」。
CI刷新にあたっては社内に横断チームを置き、全社員が参加するワークショップを重ね、ロゴ案も社員から多数集めたと伝えられている。記事はこの一連の動きを「なぜ社員全員で言葉をつくったのか」という問いから捉え、できあがった言葉そのものよりもつくり方の側に焦点を当ててまとめている。
正直、全員でやると決まるまでが長いんですよね。ただ、発表したあとに「で、これ何だっけ」と言われ続ける時間のほうが、じつは長いのかもしれません。
— 02 —参加は、浸透コストの前払いである
理念やタグラインの一般的な段取りは、経営が決め、社内に発表し、そのあとに浸透施策を重ねる、という順番になる。この順番だと社員にとって言葉は「渡されたもの」として届く。渡されたものは正しさで評価される。よくできているかを判定し、自分の仕事と関係が薄いと見ればそこで止まる。
全員でつくる方式は、決定までの時間が確実に伸びる。それでも成立するのは、発表の瞬間にはその言葉がすでに一度は自分の口から出ているからだ。自分の仕事を語り、未来像を描き、案を出す。この過程で社員が手にしているのは完成した文言ではなく、「うちはこういう判断をする会社だ」という基準のほうである。
丸天産業のように50名規模なら、全員参加が物理的に可能だ。人数が増えれば全員は難しくなるが、原理は同じだ。決定の前に判断の材料を出す機会があったかどうかで、あとの効きが変わる。「「はたらく」を、はずませよう」という言葉が、はたらく場所をつくる会社自身の働き方から出てきていることも見逃せない。事業と言葉が地続きなら、日々の仕事がそのまま言葉の裏づけになる。
— 03 —と、いうことで。
この記事を読んだあとの最初の一歩は、いま社内にある言葉を棚卸しして、それぞれが誰の口から出たものかを書き添えることだ。理念、ビジョン、行動指針、タグライン。一枚の紙に並べ、横に「誰が書いたか」「策定時に何人が関わったか」を記入する。
全部が経営と外部パートナーの二者で完結していたら、浸透施策を足す前に、次の改定でプロセスそのものを設計し直す余地がある。改定を待たずにできることもある。既存の言葉のまま「この言葉が自分の仕事のどこに出ているか」を一人ひとつ挙げてもらう会を開く。配られた言葉が、自分の言葉に一歩近づく。
- 社内の言葉を棚卸しし、それぞれ誰が書き何人が策定に関わったかを書き添える
- 理念策定の工数を、決める時間と浸透させる時間の合計で見積もり直す
- 全員参加が難しい規模なら、代表性のある層を決定の前に通す設計にする