— 01 —一夜の逆転ではなく、積み上げの帰結
東洋経済オンラインが、シチズンのマルチブランド戦略がアメリカ市場で躍進していると報じている。シチズンは2008年に米ブローバを傘下に収めて以来、価格帯やブランドの異なる複数の時計ブランドを抱える「マルチブランド」の陣容を築いてきた。記事は、その戦略が18年目にあたるいま、スイス勢の値上げで生まれた中価格帯の空白地帯を捉える形で開花している、と位置づけている。
高級路線に振れたスイス勢の隙をつき、手の届く価格帯で選ばれる——長く保ってきた品揃えの厚みが、市場環境の変化と噛み合った瞬間だとまとめている。一夜の逆転ではなく、積み上げの帰結として描いている点が印象的だ。
戦略って、つい新しく立て直したくなるんですよね。でも18年も同じ立ち位置を守り抜いたと聞くと、続けること自体がいちばん難しくて、いちばん効くんだなと思わされます。
— 02 —戦略とは、続けると決めた立ち位置のことだ
この事例が教えてくれるのは、ブランド戦略の成果は時間を味方につけたときに現れるということだ。18年という歳月は、思いつきや流行では到底維持できない。価格帯を分けて複数のブランドを持つという判断を、環境が良いときも悪いときもぶらさずに続けた。その一貫性こそが、いざスイス勢が値上げで空白を作ったときに、すぐ差し込める準備になっていた。
多くの会社は戦略を「新しく決めるもの」と考える。だが本当に効くのは、決めた立ち位置をやめなかったことのほうだ。マルチブランドは、一つひとつの価格帯とブランドの役割が明確で、互いに食い合わないよう設計されて初めて機能する。役割の設計と、それを長く守る規律。この二つが揃うと、ポートフォリオは環境の変化に応じてチャンスを拾う網になる。好機は突然来るが、それを掴めるかは、平時に何を積んできたかで決まる。
— 03 —と、いうことで。
この記事を読んだあなたがまずやるべきは、自社が複数の商品やブランドを持っているなら、それぞれの「役割」を一言で書き分けてみることだ。誰に、どの価格帯で、何を約束するのか。もし二つの役割が重なっていたら、それは網ではなく、資源の食い合いになっている。
そして、いちど決めた役割を「何年守るか」を先に宣言しておくといい。戦略が続かない最大の理由は、成果が出る前に手を替えてしまうことだ。18年という時間は極端に見えるが、続けると決めた立ち位置だけが、いつか訪れる市場の空白を捉える準備になる。今日できるのは、その物差しを一枚の紙に書き出すことだ。
- 複数ブランド・商品それぞれの「誰に・どの価格帯で・何を約束するか」を一言で書き分ける
- 役割が重なっている二つを見つけ、網か食い合いかを見極める
- 一度決めた立ち位置を「何年守るか」を先に宣言し、成果が出る前の乗り換えを防ぐ