— 01 —「本当の自分に戻れる」という逆張り
メイクアップアーティスト・イガリシノブが手がけるコスメ「フーミー」が、リブランディングで再始動する。一度立ち止まったブランドが、新しい体制と新しいメッセージを掲げて市場に戻ってくる。目を引くのは、その打ち出し方だ。メイクといえば普通は「変身」や「盛る」が売り文句になる。ところがフーミーが掲げたのは、本当の自分に戻れるという、真逆の約束だった。
「メイクを、自分を解放するための逃避行に」——鏡の前の時間を、誰かのためでなく自分のための時間に。ロゴもすべて小文字に整え、完璧さより日々の揺らぎに寄り添う姿勢を示す。商品カテゴリー自体は変わらない。変わったのは、それが何のためにあるのかという意味づけのほうだ。
「盛る」の逆をあえて掲げるって、けっこう度胸のいる選択だと思うんです。売っているもの自体は変えずに意味だけ反転させる——言うほど簡単じゃない、というのが本音ですが、それが効いたときの立ち位置の変わり方は見事だなと。
— 02 —と、いうことで。
この記事を読んだあなたが、まず問い直したいのは、自社の商品が顧客の人生において「何を意味するか」だ。機能や品質の優位だけで勝負していないか。同じ機能を持つ競合が現れた瞬間、その優位は消える。だが意味の設計は、機能の改良よりずっと寿命が長い。まずは自社の商品を「〇〇のための道具」と一言で言い切ってみることから始めよう。
その一言を借り物にしないために、次は自分たちが何を信じているかを言葉にする。フーミーの強さは、作り手の思想が明確だった点にあった。借り物のコンセプトではなく、自分たちの内側から出た一行だけが、リブランドの軸として長く効く。棚に並ぶ一つから抜け出す入口は、その正直な一行の中にある。
- 商品の勝負を機能や価格でなく「顧客にとっての意味」の設計に移せないか問う
- 意味の再定義は、成分や価格で戦うより真似されにくく、寿命が長い
- ポジショニングの言葉は、作り手自身の一貫した思想に裏づけられて初めて立つ