ストーリーブランド
顧客を物語の主人公に据え、ブランドをその歩みを助ける導き役として位置づける伝え方の枠組み。
意味
ストーリーブランドとは、コミュニケーションを物語の構造でとらえ、顧客を主人公、ブランドをその歩みを助ける導き役として位置づける考え方である。
主役を自社ではなく顧客に置く点に特徴がある。ブランドは称賛を求める主人公ではなく、課題を抱えた顧客を目的地へと案内する役回りに徹する。
この枠組みは、伝えたいことを詰め込んで自社を語りすぎる状態を避け、顧客にとっての意味を中心に据えるための整理として語られる。
成り立ち
物語の登場人物の役割分担に着想を得て、顧客を主人公、ブランドを導き役に据えるという発想が、ブランドコミュニケーションの枠組みとして提唱された。
英語では story brand と呼ばれ、企業目線の語りから顧客目線の物語へと視点を移す考え方として広まった。
ストーリーブランドとストーリーテリングの違い
ストーリーテリングは、物語の形で伝えるという手法全般を指す。ストーリーブランドは、そのうち役割の配分を定めた型であり、顧客を主人公、自社を導き役に固定する。手法と、その具体的な型という関係になる。
使う場面も違う。何を語るか自体を探している段階では手法の側の自由度が要り、自社の話に寄りすぎた状態を正すときには型の側が効く。整える対象が定まっているかどうかで、どちらを持ち出すかが決まる。
ストーリーテリングの項へ →ストーリーブランドとペルソナの違い
ペルソナは、顧客がどんな人物かを描写したものである。ストーリーブランドは、その人物が何に困り、どこへ向かうかという筋立ての中に位置づける。静止した像か、動きのある道筋かという違いになる。
補い合う関係でもある。人物像が定まっていなければ主人公は輪郭を持たず、道筋がなければ人物像は判断に使われないまま置かれる。属性を増やしても筋立てが出てこないときは、困りごとと目的地の記述が抜けている。
ペルソナの項へ →使いどころ
ストーリーブランドは、伝えるメッセージが自社中心になりがちなときに、顧客を主役に据え直すための視点として使われる。
ストーリーテリングやコンセプトの議論とあわせて論じられ、誰の物語として語るかを問い直す枠組みとして参照される。
実務でのチェックポイント
- 自社の紹介文で、主語が自社になっている文と顧客になっている文の数を比べる。
- 顧客が向かいたい状態を、機能の説明を使わずに一文で書けるかを試す。
- 導き役として示している根拠が、実績なのか共感なのかを分けて確かめる。
- その文面から自社名を外し、同業他社の名前を入れても成立しないかを見る。
よくある誤解
顧客を主人公に据えるという原則が、自社について語らないことだと受け取られる場合がある。導き役にも果たすべき役割があり、なぜ案内できるのかを示せなければ信頼されない。語る量を減らすのではなく、語る位置を主役の座から動かすという指示にあたる。
型に当てはめれば物語が成立する、という扱いも起きやすい。役割の枠に言葉を流し込んでも、顧客が実際に何に困っているかが浅いままなら、どの会社でも同じ文面になる。型が働くのは、埋める中身を具体的に掴めている場合に限られる。
よくある質問
顧客を主人公にすると自社の強みは伝わりませんか?
伝わる場所が変わるだけになる。強みは冒頭の主張としてではなく、なぜ案内役を務められるのかという根拠の位置に置かれる。読み手は自分の問題が語られていると分かった後のほうが、相手の実績を受け取りやすい。順序の入れ替えにあたる。
BtoBでもこの枠組みは使えますか?
使える。ただし主人公を誰に置くかを決める必要がある。困っている現場の担当者と、承認する立場の人では、向かいたい状態が異なる。両方を一つの物語に混ぜると筋が通らなくなるため、資料ごとに主人公を一人に絞る形になる。
導き役という位置づけは弱く見えませんか?
弱くはならない。案内できる相手として認められるには道筋を知っていることを示す必要があり、それ自体が実力の提示になる。前に出る量が減るだけで、求められる中身はむしろ具体的になる。称賛を求める語りより、確かめられる形に近づく。