ま
戦略

模倣困難性

Inimitability

他社が簡単には真似できない性質。競争優位が長く続く条件の一つとして、経営資源に求められる要件。

意味

模倣困難性とは、ある企業が持つ強みを、他社が容易には真似できない性質を指す。優位が一時的なもので終わらず、長く続くかどうかを左右する要件の一つとされる。

たとえば独自の技術や、長い時間をかけて築かれた信頼や文化は、外から見えにくく再現しにくいため模倣が難しい。ブランドが積み上げてきた知覚や関係性も、模倣困難な資産として捉えられることがある。

成り立ち

「模倣困難性」は、経営資源が持続的な競争優位につながる条件を論じる資源ベースの視点で用いられてきた語である。価値・希少性・模倣困難性・組織といった観点で経営資源を評価する枠組みの一要素として整理される。

模倣困難性と差別化の違い

差別化は、他社と違う状態をつくることであり、模倣困難性は、その違いが真似されずに残るかという持続の条件である。違いをつくった時点で差別化は成立するが、模倣困難性はその後の時間の中でしか確かめられない。現在の話か、将来の話かで分かれる。

打ち手も逆を向く場合がある。差別化は目立つ違いを増やす方向に進みやすいが、目立つ違いほど外から見えやすく真似もされやすい。長く残る強みは観察しにくい部分に宿ることが多いため、違いを分かりやすく示す作業と、真似されにくくする作業は同時には進まない。

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模倣困難性とスイッチングコストの違い

模倣困難性は、他社が同じものをつくれるかという供給側の条件であり、スイッチングコストは、顧客が他社へ移りにくいかという需要側の条件である。同じ乗り換えられにくさに見えても、効いている場所が売り手の側か買い手の側かで分かれる。

両者は独立して成立する。真似できない強みがあっても移る手間が小さければ流出は起きるし、真似は容易でも契約や慣れによって留まる場合もある。留まっている理由がどちらにあるかを確かめないと、後者に支えられている状態を強みだと読み違えることになる。

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使いどころ

「模倣困難性が高い」といった形で、他社が真似しにくい強みを論じる際に用いられる。目に見える機能よりも、時間をかけて築いた無形の蓄積について語られることが多い。

実務でのチェックポイント

  • 自社の強みを一つ挙げ、資金と時間が十分にある同業がどれだけの期間で再現できるかを見積もる。短く見積もれるなら、持続の条件は満たしていない。
  • その強みが個人の技量に依存しているか、組織の仕組みに移っているかを確かめる。個人に留まる強みは、移籍とともに再現される。
  • 顧客が自社を選び続ける理由を、他社が真似できる要素と真似しにくい要素に仕分ける。前者だけで説明がついてしまうなら、優位は借り物になる。
  • 過去に他社から真似された取り組みを挙げ、どの部分が写し取られ、どの部分が残ったかを確かめる。残った部分の性質が持続の源になる。

よくある誤解

特許や独自技術のような形のあるものだけが模倣困難だと捉えられやすい。だが形があるものほど内容が外に出て、代替の手が考えられやすい面もある。長い時間をかけて築かれた関係や、社内で言語化されないまま共有されている判断の癖は、外から見えないぶん再現が難しく、実際にはこちらが残ることも多い。

もう一つは、真似されにくい状態を固定されたものと見なす扱いである。再現の難しさは相手の技術や市場の条件によって変わるため、条件が動けば同じ強みが容易に写し取られる場合がある。なぜ真似されていないのかを説明できないうちは、まだ誰も試していないだけという可能性が残る。

よくある質問

模倣困難性はどうすれば高められますか?

単一の要素を強くするより、複数の要素が絡み合った状態をつくるほうが真似されにくい。一つの技術や仕組みは切り出して再現できるが、判断の基準や人の動き方まで結びついた状態は、部分だけを取り出しても同じ結果にならない。絡み合いの数が、そのまま再現の手間を増やす。

ブランドは模倣困難な資産と言えますか?

言えるが、条件がつく。表層の見た目や言い回しは容易に写せるため、真似されにくいのは、長い時間をかけて受け手の中に積み上がった期待のほうになる。同じ表現を他社が使っても同じ期待が生まれないという状態まで来て初めて、模倣の難しい資産として働く。

小さな企業でも模倣困難性は持てますか?

規模とは別の軸で持てる。大きな投資を要する優位は資金の勝負になるが、特定の相手との深い関係や、狭い領域での判断の蓄積は、規模が小さくても築ける。むしろ対象が狭いほど、他社が同じ手間をかける動機を持ちにくいという形で残りやすい面がある。

この項目は、ブランディング支援会社 Highlite Inc. 編集部が執筆・監修しています。
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