情報の非対称性
取引の当事者間で保有する情報に差がある状態。買い手の不安や不信を生む要因となる。
意味
情報の非対称性とは、取引に関わる当事者どうしで、持っている情報の量や質に差がある状態のことである。多くの場合、売り手のほうが商品について詳しい。
買い手は中身を十分に確かめられないまま判断を迫られるため、不安や不信が生じやすい。品質の見分けがつかないと、価格だけで選ばざるを得なくなることもある。
この差を埋める手立てとして、実績の提示や保証、第三者の評価などが働く。ブランドや信頼は、確かめきれない部分を補う目印としての役割を持つ。
成り立ち
情報の非対称性は、売り手と買い手が持つ情報の差が市場の働きに与える影響を扱う経済学の議論のなかで整理された概念である。
品質を見分けにくい市場では、情報の少ない側が不利になりやすいという知見とともに、信頼やシグナルの重要性を説明する語として広まった。
情報の非対称性と知覚品質の違い
知覚品質は、買い手の中に形づくられた品質の評価である。情報の非対称性は、そもそも品質を確かめられないという条件そのものを指す。片方は評価の結果、もう片方は評価を難しくしている前提にあたる。
順序で見ると分かりやすい。確かめられないからこそ、目印に頼った評価が生まれる。差が大きい商材ほど、実際の性能より伝わり方や見え方が評価を左右する。条件の話をしているのか、結果の話をしているのかを分けて扱う。
知覚品質の項へ →情報の非対称性と信頼残高の違い
信頼残高は、これまでのやりとりの積み重ねとして相手の中に貯まったものである。情報の非対称性は、その積み重ねがまだない状態で生じる差を指す。時間の経過とともに、後者は前者によって埋められていく。
初回と継続で課題が変わる点が切り分けの軸になる。まだ取引のない相手には、確かめる手立てを外から用意する必要がある。既存顧客には過去の実績が材料として働くため、同じ説明を繰り返す必要は薄れていく。
信頼残高の項へ →使いどころ
情報の非対称性は、ブランドや信頼がなぜ価値を持つのかを説明する際の背景として参照される。確かめにくさを補う目印としての機能が論じられる。
保証・レビュー・第三者認証など、情報の差を埋める仕組みの意義を考える枠組みとして用いられる。
実務でのチェックポイント
- 顧客が購入前に確かめたくても確かめられない点を挙げ、それを補う手立てが用意されているかを見る。
- 保証や返品の条件が、買う前に読んで理解できる場所に置かれているかを確認する。
- 商談で繰り返し聞かれる質問を集め、資料を読めば分かるはずのものが混じっていないかを見る。
- 第三者が確かめられる材料と、自社の主張だけの材料を分けて数える。
よくある誤解
情報を多く出せば差は埋まる、と考えられがちだが、量を増やすほど読み手の負担も増える。買い手が困っているのは情報の不足だけでなく、どれを信じてよいか判断できないことでもある。分量より、確かめる手立てが添えられているかで差の埋まり方が変わる。
差があるのは売り手が有利な状態だ、と受け取られることもある。実際には、品質を見分けてもらえない市場では、良いものを作っている側ほど不利になる。手間をかけた分が価格に反映されず、安いものと同列に扱われる。差の解消は買い手だけの利益ではない。
よくある質問
情報を全部公開すれば不信は解消しますか?
多くの場合、それだけでは解消しない。買い手が判断に迷うのは情報の量が足りないからではなく、示された内容の真偽を自分で確かめる手立てを持たないからである。同じ一行でも、第三者が検証できる形で出されているか、外れたときに責任を問える約束として書かれているかで、買い手にとっての重みは変わる。開示の広さより、裏を取れる形になっているかが効く。
なぜブランドがあると安心されるのですか?
確かめきれない部分を、これまでの積み重ねが肩代わりしているからである。名前が知られている相手ほど、期待を裏切ったときに失うものが大きい。買い手はその損得を見込んで、確かめられない部分を任せる。名前は保証の代わりに置かれる目印になる。
価格が高いことは品質の証明になりますか?
手がかりにはなるが、証明にはならない。確かめる術がない場面では、価格が品質の代わりに読まれることがある。ただし裏づけのない高値は、使った後の評価で覆される。価格を目印として使うなら、それを支える材料を別に添える必要がある。