— 01 —制作の型──ビジュアルは最後に決める
コーポレートサイトの制作は、目的と主読者を一点に決めるところから始まる。「誰に、何を分かってもらい、どう動いてほしいか」を一文で言えるまで削る。採用を最優先にするのか、商談前の下調べに応えるのか。ここが曖昧なまま進むと、あとの判断がすべて多数決になり、総花的で誰にも刺さらないサイトになる。
目的が決まったら、情報設計に入る。どんなページが必要で、どういう順序と階層で並べるか。主読者が知りたい順にサイトマップを組み、各ページが答える問いを一つずつ書き出す。その骨格ができて初めてワイヤーフレームで導線と情報量を検証し、最後にビジュアルデザインで「らしさ」をまとわせる。
参考サイトの収集は、この最後の工程でいい。先に集めると、他社の目的に最適化された見た目を、自社の目的地も決めずに真似することになる。手順を逆にしないこと。それが、きれいで機能するサイトと、きれいなだけのサイトを分ける。
「参考サイト、まず集めますね」の一言をぐっと飲み込めるかどうか。正直、ここで我慢できる人はあまりいない。だからこそ差がつくところでもある。
— 02 —良し悪しの分かれ目──約束が定義されているか
きれいなのに機能しないサイトには、共通点がある。そのページが誰に何を約束するのかが決まっていないのだ。トップは美しい写真とアニメーションで整っているのに、読み終えても「で、この会社は何屋なのか」が残らない。情報の見栄えは整っていても、情報の設計が空洞になっている。
対して機能するサイトは、ページ単位で役割が明快だ。このページは初訪問の判断を助ける、このページは検討中の不安を消す、というように、読者の状態ごとに次の一歩が用意されている。デザインの巧拙より、この役割分担の有無が成果を分ける。
見た目は、約束を伝える手段であって約束そのものではない。フォントや余白の完成度を上げる前に、各ページの約束文を一行で書けるかを確かめる。書けないページは、デザインで取り繕っても機能しない。
— 03 —ブランドから逆算する──本店の看板は何を語るか
コーポレートサイトは、ブランドの本店だ。広告やSNSがどれだけ外で人を集めても、最後に訪れて判断を固める場所がここになる。だからトップの一文が語るべきは、何屋で、なぜ選ばれるのか──つまりブランドコアそのものだ。ここが決まっていないと、02で挙げた「約束の定義」も立てようがない。
問題は、コアが言語化されていない案件が多いことだ。そのときデザイナーが色やレイアウトの提案から入ると、判断の基準がないまま見た目の好みの応酬になる。ここで取れる動きは、手を動かす前に問いを持ち込むこと。「一言で言うと何をする会社か」「競合ではなく御社が選ばれる理由は」と問い、答えが揺れる箇所を可視化する。
この問いは越権ではなく、デザインを成立させる前提の確認だ。答えが出れば看板の言葉が決まり、決まらなければ、それ自体が先に整理すべき課題だと分かる。デザイナーが問いを持ち込めるかどうかが、上流に関与できるかの分かれ目になる。
— 04 —AIとの分業と、経営にどう効くか
実装やコーディング、素材の生成はAIで速くなり続けている。だからこそ、速くならない部分に価値が移る。誰に何を約束するサイトかという上流の定義は、AIが代わりに決めてくれない。ここを引き受けられることが、これからのデザイナーの単価の源泉になる。
経営の言葉に翻訳すると、コーポレートサイトは「営業が始まる前に、すでに選考が行われている場所」だ。担当者は商談前に必ずここを見て、会う価値があるかを判断している。見た目の刷新ではなく、選考基準に応える設計だと位置づけると、投資の意味が伝わる。
その前提となるブランドコアの整理から始めたいなら、ブランドとは何かを、サイトが手薄で成果が出ない構造的な理由はWebが弱い会社の共通点を、実装に一貫性を持たせる仕組みはデザイントークンの作り方を合わせて読んでほしい。
- 目的と主読者を一点に決め、情報設計→ワイヤー→ビジュアルの順で進める
- 各ページが誰に何を約束するかを一行で書けるかが成果を分ける
- トップの一文=何屋でなぜ選ばれるか。コアが無ければ問いを持ち込む