— 01 —充電という成熟領域に、まだ開拓の余地があるという立場
宣伝会議が「最新の充電体験をより多くの人へ 他社協業とAI活用で 市場の『伸びしろ』を切り拓く」と題した記事を掲載している。見出しが示しているのは三つの要素だ。第一に、目指しているのが製品の性能そのものではなく充電体験であること。第二に、それを広げる手段として自社単独ではなく他社との協業とAIの活用が挙げられていること。第三に、その先に市場の「伸びしろ」を見ていることである。
注目したいのは、同記事が充電というカテゴリーを飽和した市場としてではなく、まだ伸びしろの残る市場として位置づけている点だ。コモディティ化したと語られやすい領域を、体験の側から捉え直して描いている。
じつは、体験が途切れている場所って、社内では誰も担当していないから議題にも上がらないんですよね。だから空白のまま残る。書き出してみると、あっさり見つかる気がします。
— 02 —普及を他社に預けることと、ブランドが薄まることは別のことだ
体験を「より多くの人へ」届けようとすると、必ず自社の外に出ることになる。売り場も、組み合わされる相手のプロダクトも、自社が設計しきれない場所だ。ここで多くの企業が身構える。他社の文脈に載せた瞬間にブランドが薄まるのではないか、と。
だが薄まるのは、協業したからではない。何を譲り、何を譲らないかが決まっていないまま協業したからである。逆に言えば、譲れない一点さえ言語化されていれば、体験の届く範囲は広げるほど強くなる。相手の売り場に並んでも製品に組み込まれても、再現される体験の芯が同じであれば、接点が増えた分だけ理解は積み上がる。協業は、ブランドの一貫性を薄める行為ではなく、一貫性が本当にあるかを試す行為だと考えたほうが実態に近い。
AIの活用も同じ構造で読める。AIは体験を一人ひとりに合わせて動かすための道具だが、個別化を進めるほど「では、誰に対しても変えない部分はどこか」という問いが避けられなくなる。応答の速さや網羅性はAIが引き受けられる。引き受けられないのは、どう応じる会社でありたいかという基準のほうだ。個別化の精度を上げる作業と、変えない一点を決める作業は、片方だけでは完成しない。
— 03 —と、いうことで。
この記事を読んだあとの最初の一歩は、自社の体験がどこで途切れているかを一枚に書き出すことだ。認知から購入、開封、初回利用、困ったときの問い合わせ、買い替えまでを横一列に並べ、それぞれを自社が設計しているか、他社に委ねているか、誰も設計していないかで三色に塗り分ける。1時間あれば埋まる。
たいてい、色のついていない空白が真ん中あたりに残る。そこが伸びしろだ。次に決めるのは、その空白を自社で埋めるのか、協業で埋めるのかという選択である。協業で埋めると決めたなら、その場で「この一点だけは相手にも守ってもらう」という条件を一文で書く。書けるなら協業に進んでよい。書けないなら、まだ交渉のテーブルに着く段階ではない。
- 自社の体験が途切れている箇所を特定し、そこを伸びしろとして扱う
- 協業に入る前に「相手にも守ってもらう一点」を一文で決めておく
- AIで個別化を進めるほど、誰に対しても変えない基準を先に定める